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AIによる胚評価 iDAScore|先進医療(タイムラプス培養)での活用

iDAScore は、AIが胚の発育過程の画像を解析し、それぞれの胚について妊娠継続に至る可能性をスコアとして示す評価システムです。

体外受精では、「どの胚から移植するか」という判断が、妊娠までの時間や心身の負担に大きく関わります。保険診療の体外受精は移植回数に制限があるため、この判断はより重要になります。

また、当院では、お一人おひとりに合わせた卵巣刺激を行っているため、一度の採卵で良好な胚盤胞が複数得られることが多くあります。その結果、同じグレードの胚の中でどれを優先するか判断に迷うことも少なくありません

こうした場面で、胚ごとの妊娠継続の可能性を客観的に捉えるための指標として、iDAScore v2.0を導入しています。

iDAScoreとは?

iDAScore(アイダスコア)は、タイムラプス培養で得られる胚の発育過程の画像をAIが解析し、それぞれの胚が妊娠し継続する可能性を「1.0〜9.9」で示す評価指標です。
タイムラプス培養では、胚を取り出すことなく培養器内で連続的に観察でき、その発育の過程すべてが記録されます。iDAScoreはこのデータをもとに、胚ごとの違いを客観的に評価します。

従来のグレード(見た目)による評価に加えて、妊娠継続の可能性を踏まえた判断材料の一つとして活用されます。

従来の培養士評価(見た目)とiDAScoreの違い

従来は、胚培養士が発育の特定のタイミングをもとに、胚の見た目をガードナー分類(4ABなど)で評価します。
一方、iDAScoreは発育の過程全体をAIが一貫して解析するため、胚ごとの妊娠継続の可能性を客観的に捉えることができます。

それぞれに一長一短があるため、当院では両方の評価を組み合わせて総合的に判断しています。

iDAScoreの精度

当院では以前からAIによる胚評価に注目してきましたが、初期のモデルは信頼性の面で課題があると考え、導入を見送ってきました。
しかし、最新のiDAScore v2.0では学習データの拡充により、継続妊娠の予測精度の向上が論文で確認されています。

継続妊娠の予測精度(AUC)

iDAScoreの精度は、「AUC(Area Under the Curve)」というAIを含む予測モデルの性能評価に広く用いられている指標で評価されます。これは、スコアが高い胚ほど実際に妊娠継続に至る割合が高いかどうかを示すもので、1.0に近いほど予測精度が高いとされます。

iDAScore v2.0についても、国内の不妊治療施設における後方視的検証を行った論文(Ueno et al., Reprod Biomed Online, 2024)において、このAUCが一定の水準で示され、継続妊娠の予測における有効性が報告されています。

年齢区分 iDAScore v2.0 胚培養士の評価
35歳未満 0.706 0.655
35〜37歳 0.672 0.643
38〜40歳 0.671 0.656
41〜42歳 0.697 0.612
43歳以上 0.659 0.613

iDAScore v2.0は、胚培養士による見た目の評価(ガードナー分類)と比較して、継続妊娠の予測精度が高い傾向が示されています(※有意差 p<0.05 は35歳未満および41〜42歳で認められています)。

スコアと継続妊娠率の関係

iDAScoreのスコアは、数値が高いほど妊娠継続に至る可能性が高い傾向を示します。

下の図は、論文データをもとに、スコア帯ごとの継続妊娠率を年齢別に示したものです。いずれの年齢層においても、スコアが高い群ほど継続妊娠率が高くなる傾向が確認されています。

iDAScore v2.0のスコアと継続妊娠率の関係

iDAScoreの注意点

AIは有用な補助ツールですが、万能ではありません。iDAScoreは、過去のデータに基づいた「確率」の予測です。
そのため、スコアが低くても妊娠・出産に至ることはありますし、高いスコアでも、うまくいかない場合があります

また、精度評価に用いられるAUCの値や、スコアと継続妊娠率の関係は、施設や患者背景などの条件によって変わるため、数値そのものを一般化することはできません。

上記で示した論文の結果は、特定の研究条件下で得られたものであり、すべての患者さんにそのまま当てはまるものではありません。あくまで傾向として捉え、「どの胚から移植するか」を考える際の参考指標の一つとしてご理解ください。

費用・結果の確認

当院では、タイムラプス培養をお申込みの際にiDAScoreを付けるかどうかお選びいただけます。

①タイムラプス培養のみ

先進医療25,000円・自費27,500円
タイムラプス培養により、安定した環境で胚を培養し、良好な胚盤胞への発育を目指します。胚評価は、従来通り胚培養士が見た目(グレード)で行います。

②タイムラプス培養+iDAScore

先進医療35,000円・自費38,500円
タイムラプス培養により良好な胚盤胞への発育を目指すとともに、iDAScoreを用いて各胚の妊娠継続の可能性を評価します。胚評価は、胚培養士による見た目(グレード)とiDAScoreの両方で行います。

結果の確認方法

胚の培養状況や凍結胚のグレードは、ご希望の患者様にメールで随時お知らせしています。
また、胚評価の詳細は、培養・凍結完了以降の診察時にお渡しする「胚凍結保存リスト」にてご確認いただけます。
リストには、以下の項目が記載されます。
・iDAScore
・ガードナー分類
・総合評価(胚盤胞ランク)

よくある質問FAQ

Q. iDAScoreを使わないと妊娠率は下がりますか?
A.iDAScore自体は胚の培養や妊娠率そのものを高めるものではありません。妊娠継続の可能性を考えるための指標です。

Q. iDAScoreを使ったタイムラプス培養は先進医療ですか?
A. 当院では、iDAScoreを用いたタイムラプス培養を先進医療として実施しています。

Q. iDAScoreは必ずつけた方がいいですか?
A. 必須ではありません。妊娠継続の可能性を事前に知りたい方や、移植の順番を検討する指標が欲しい方にご検討いただいています。

Q. スコアが低い胚は移植しない方がいいですか?
A. そのようなことはありません。スコアが低くても妊娠・出産に至るケースはあります。最終的には他の要素とあわせて医師と相談しましょう。

Q. iDAScoreは、PGT-Aなどの着床前検査ですか?
A. いいえ、異なります。iDAScoreは胚の画像をAIが解析し、妊娠継続の可能性を評価する方法です。一方、PGT-Aは胚の細胞を採取して染色体を調べる検査です。

Q. KIDScoreとは何が違うのですか?
A. 当院ではこれまでKIDScoreという胚評価システムを使用してきました。KIDScoreは発育のタイミングなどをもとに記録データを解析する方法ですが、iDAScoreは胚の画像をAIが直接解析する評価法です。発育の過程全体をもとに評価できる点が特徴です。なお、iDAScore v2.0の導入に伴い、KIDScoreは終了しています。