Treatment PGT-A・PGT-SR(着床前検査)

PGT-A・PGT-SRは、胚を子宮に移植する前に、その胚の染色体の数や構造に異常がないかを調べる着床前遺伝学的検査です。

体外受精では、受精卵が胚盤胞まで育ち、見た目のグレードが良くても、その胚の質に大きく関わる「染色体」が正常かどうかまでは分かりません。実際には、見た目のグレードが高い胚でも、染色体に異常があり妊娠しない、あるいは流産につながることがあります。体外受精がうまくいかない原因の多くは、この染色体異常によるものとされています。

PGT-A・PGT-SRのメリット

  • 正常な胚を選んで移植することで、妊娠までの時間短縮流産リスクの軽減が期待できる

PGT-A・PGT-SRのデメリット

  1. 保険適用外のため、採卵から胚移植まで体外受精全体が自由診療となり、費用負担が増加する
  2. PGT-A・PGT-SRを実施しても、正常な胚が見つからず移植できないことがある
  3. 検査のために胚の細胞を採取するため、胚への負担が生じる可能性がある

PGT-A・PGT-SRの限界:確定診断ではない

検査自体の精度は高いものの、「PGT-A・PGT-SRは確定診断ではない」のは次のようないくつかの限界があるためです。

限界①「検査している細胞」と「知りたい細胞」は異なる
検査している細胞は、将来赤ちゃんになる部分の細胞ではなく、胎盤になる部分の細胞です。そのため、検査結果が染色体正常であっても、赤ちゃんになる細胞も同じ状態とは限りません。

逆のケースもあります。検査結果が染色体異常であっても、赤ちゃんになる細胞が正常である可能性があります。その場合、本来は正常な胚であっても移植されないため、妊娠の機会を逃してしまう可能性があります。

限界②一部の細胞しか検査していない
検査では、胚の中の「将来胎盤になる部分」の細胞を5〜10個ほど採取して調べます。胚全体の細胞をすべて調べているわけではありません。そのため、もし別の場所の細胞を採取していた場合、異なる結果になる可能性を完全に否定することはできません。

限界③モザイク
胚の中には、染色体が正常な細胞と異常の細胞が混在していることがあります(モザイク)。その場合、採取した細胞の結果が胚全体の状態を完全には反映していない可能性があります。

PGT-A・PGT-SRは、上記のメリットの通り妊娠・出産の可能性を高める一つの方法ですが、デメリット検査の限界もあるため、すべての方に適しているわけではありません。当院では、患者様がご自身の状況に合わせて検討・判断できる流れをご用意しています。

PGT-A・PGT-SRの対象者

日本産科婦人科学会の見解に基づき、主に次の方を対象として実施されています。

PGT-Aの対象となる方

  • 35歳以上の女性(胚移植回数にかかわらず)
  • 34歳以下で、胚移植不成功が2回以上、または流産・死産が2回以上ある場合

PGT-SRの対象となる方

  • ご夫婦のいずれかに染色体構造異常(転座など)が確認されており、遺伝専門医が判断した場合

PGT-Aはどんな人に有効?

PGT-Aは、すべての方に同じ効果があるわけではなく、年齢や患者背景、治療歴によって有効性が異なります。
はらメディカルクリニックの院長ブログでは、海外の臨床研究やメタ解析などをもとに、PGT-Aがどのような方に有効と考えられているのかを解説しています。

  1. PGT-Aの適応と有効性
  2. 35歳以上のPGT-Aの意義
  3. 35歳未満のPGT-Aのメリット・デメリット
  4. PGT-Aのリスク
  5. 凍結胚へのPGT-A

正常胚が得られる確率

PGT-A・PGT-SRでは、胚盤胞の細胞を調べて、染色体の数や構造に異常のない「正常胚(euploid)」を確認します。日本産科婦人科学会が実施した研究※1では、2019年12月1日~2022年8月31日に登録された10,602周期・42,529個の胚盤胞を解析し、年齢ごとの正常胚の割合が報告されています。下の図は、その年齢別の結果です。

この研究では、正常胚の割合は年齢とともに低下することが明確に示されています。

  • 30歳前後:約30〜35%
  • 35歳前後:約25〜30%
  • 40歳前後:約15〜20%
  • 43歳以上:約10%前後

例えば、胚盤胞を10個検査に出した場合に正常胚(A胚)を得られる割合は、30歳前後は3-4個、35歳前後は2-3個、40歳前後は1-2個、43歳以上は1個がこの研究での平均になります。

また、上記の割合は「胚1つあたり」の結果です。
実際の治療では、1回の採卵で得られる胚盤胞の数は人によって異なり、少ない場合もあります。そのため、採卵を行っても正常胚が得られないことがあります。
採卵1回あたりで見ると、少なくとも1つ正常胚が得られた割合は約38%でした。言い換えると、約60%の採卵周期では正常胚が得られない可能性があります。

なお、この研究の対象者は、反復着床不全(RIF)が約67%、反復流産(RPL)が約28%、染色体構造異常(CR)が約5%でした。そのため、この結果は治療初期の方を対象としたものではなく、着床不全や流産を繰り返している方などを含む集団でのデータです。

正常胚の妊娠率・流産率

PGT-A・PGT-SRでは、染色体に異常のない「正常胚(euploid)」を選んで移植することができます。では、正常胚を移植した場合の妊娠率や流産率はどのくらいなのでしょうか。

日本産科婦人科学会の研究※1では、正常胚を1個移植した場合の妊娠率・流産率として、次のような成績が報告されています。

正常胚の妊娠率は約70%・流産率は約10%です。年齢別に見ても、正常胚を移植した場合の妊娠率は大きく低下せず、比較的安定していることが示されています。

一方で、モザイク胚(染色体が正常な細胞と異常の細胞が混在している胚)を移植した場合は、正常胚と比べて、妊娠率が低い・流産率が高いという傾向が報告されています。

日本産科婦人科学会の最新報告

日本産科婦人科学会が公表している最新の集計※2では、不妊症および不育症を対象として、2023年1月1日~2023年12月31日に実施されたPGT-A・PGT-SRの結果は次の通りでした。

PGT-A(検査胚数 15,545個)
正常胚の割合:約22%(年齢別データなし)
妊娠率:約56%
流産率:約17%
22週以降の分娩率:約44%

PGT-SR(検査胚数 1,205個)
正常胚の割合:約18%(年齢別データなし)
妊娠率:約66%
流産率:約10%
22週以降の分娩率:約59%

ここで示されている妊娠22週以降の分娩率は生産率に近い結果として参考になります。

引用元
※1 Iwasa T et al. Reprod Med Biol. 2023.Preimplantation genetic testing for aneuploidy and chromosomal structural rearrangement: A summary of a nationwide study by the Japan Society of Obstetrics and Gynecology.
※2 日本産科婦人科学会2023年不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査実施状況報告

PGT-A・PGT-SRの費用

当院では2社の検査機関を利用しており、検査範囲と費用が異なります。どちらを選択するかは、採卵日当日に胚培養士と相談して決定します。

検査機関①新鮮胚PGT-A/SR 77,000円/1個
検査機関②新鮮胚PGT-A/SR 99,000円/1個
検査機関②凍結胚PGT-A/SR 110,000円/1個

PGT-Aの体外受精と保険体外受精の費用比較

当院の2024年データ(35歳・AMH1以上)の平均値となる、採卵数15個・受精数9個・4BB以上良好胚数5個をもとに算出しています。

  PGT-A(自費) 保険診療
卵巣刺激・診察 約100,000円 約35,000円
採卵(15個) 228,800円 31,200円
受精IVF(9個) 74,800円 12,600円
培養(胚盤胞7個) 77,550円 35,700円
タイムラプス 27,500円 25,000円
PGT-A(5個) 385,000円 (7.7万×5個) なし
胚凍結(5個) 137,500円 (2.75万×5個) 21,000円
移植周期の薬・診察 約50,000円 約15,000円
凍結融解・胚移植 116,600円 39,000円
総額 約1,197,750円 約216,300円
  • 採卵数・胚盤胞数などのk数が少ない場合、費用もその分少なくなります。
  • PGT-Aは、「自費」または「検討中の先進医療」として助成を行っている自治体があります。また、自費の体外受精が給付対象となる民間の医療保険もあります。詳細は各自治体や保険会社へお問い合わせください。
  • 保険診療の総額は、高額療養費制度や先進医療助成金などを差し引く前の金額です。実際の自己負担額は、これより少なくなる場合があります。
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PGT-A・PGT-SRの流れ

  1. 時期
    いつでも
    概要

    PGT-A・PGT-SRをするためには、必ず【日本産科婦人科学会作成の2本の動画】を視聴してください。内容は以下の通りです。

    動画①「不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・SR)」について
    動画②「PGT-Aの検査対象をなぜ限定しているのか」
    ※2025年10月より35歳以上の女性の実施要件が広がりました。この動画は旧基準に基づいていますが、学会が新基準(35歳以上は要件なし)版を作成中のため、 完成まではこちらを視聴してください。

     

  2. 時期
    月水木金9-18時・火土9-14時
    ※祝日不可
    概要

    ◆流産が2回以上ある場合
    これまでに(当院外治療や自然妊娠も含む)胎嚢確認後の流産が2回以上ある場合は、染色体検査が必要となり、保険適用で実施できます。

    ◆流産が0-1回の場合
    夫婦のどちらかが構造異常を有している場合があります。PGT-A・PGT-SRを検討する際は夫婦染色体検査の実施をおすすめします。夫婦染色体検査を行わない場合、検査はPGT-Aとなります。夫婦のどちらかに染色体の構造異常がある場合、PGT-Aではそれを見つけられない可能性があります。その点をご理解の上でご判断ください。

    【夫婦の染色体検査】

    • 費用:保険8,920円/人、自費33,000円/人
    • 夫婦ともに【注射・採血のみ】のご予約をお取りください。染色体検査は、月水木金900 1800/火土900 1400 しか行えませんので(祝日不可)ご注意下さい。
    • 染色体検査の結果は約3週間後に届きます。届き次第、来院のご案内をメールでお知らせします。
  3. 時期
    遺伝外来・遺伝カウンセリングがある日
    概要

    ◆夫婦染色体に構造異常がある場合

    夫婦の染色体検査にて、構造異常が認められた場合は、必ず「遺伝外来」をご予約ください。ご夫婦が、PGT-A・PGT-SRをする有効性や注意点についてご確認ください。

    遺伝外来の費用:3,300円(自費)相談時間30分以内

    ◆夫婦染色体に問題なし・検査していない場合

    CASE1:ご夫婦でPGT-Aの実施を決めた場合
    遺伝外来は必要ありませんので、診察にて医師にお知らせください。確認と同意書など書類のお渡しをします。

    CASE2:しっかり相談したい場合
    STEP1の動画を見たうえで、わからないことや、迷う場合は、「遺伝外来」や「遺伝カウンセリング」にて相談しましょう。ご夫婦がイメージしていることが、検査の実際に沿っているかどうか、デメリットについてもを具体的に確認してみましょう。

    • 費用:3,300円(自費)/相談時間30分以内
    • 遺伝カウンセリングは「認定遺伝カウンセラー」が、遺伝外来は 「遺伝専門医」が担当します。いずれも専門知識をもとに検討を支援しますので、日程の都合に合わせてお選びください。
  4. 時期
    月経2-3日目
    概要
    • PGT-A・PGT-SRを実施するための採卵周期を開始します。
    • 月経2-3日目にご来院ください。
    • 採血後、「採卵周期ご要望書」のPGT-A・PGT-SR欄にチェックを入れてご提出ください。
    • 採卵周期のスケジュールは、下部の関連ページをご覧ください。
  5. 時期
    採卵当日
    概要

    採卵当日は、採卵を終えて、麻酔から覚めた頃、胚培養士が皆様がお休みしているお部屋に伺い、PGT-A・PGT-SRについて次の内容を相談します。

    • PGT-A・PGT-SRを実施する胚盤胞のグレード
    • PGT-A・PGT-SRを実施する胚の数
    • 検査機関をどこにするか

    ほかに、通常の体外受精同様に、受精方法・培養日数などについても相談します。

  6. 時期
    検査から約3週間後
    概要

    PGT-A・PGT-SRの結果が当院に届きましたら、当院から患者様にメールにてご連絡します。検査の内容に応じて、結果の説明を行う外来は、「遺伝外来」と、「不妊外来」があります。

  7. 時期
    結果が出た後の月経周期
    概要

    PGT-A・PGT-SRを実施した胚を移植します。

    • 凍結融解胚移植の周期開始の予約をおとりください。
    • 移植方法が、自然・低刺激希望の方は、排卵の2~3日前までにご来院ください(わからない場合は月経10-12日目)。ホルモン補充・医師にお任せを希望の方は、月経3日目までにご来院ください。
    • 遺伝外来または不妊外来で決定した移植胚の順番に沿って移植します。
    • 胚移植周期のスケジュールは、下部の関連ページをご覧ください。