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SEET法とは?着床率向上が期待される理由と方法

SEET法とは

体外受精(IVF)において、良好な胚を移植しているにもかかわらず、妊娠に至らないケースがあります。その原因のひとつとして考えられているのが、受精卵と子宮内膜の相互作用が十分に起こらないことです。
着床は、単に胚の質や子宮内膜の厚さだけで決まるものではなく、両者がタイミングよく“反応し合うこと”によって成立すると考えられています。近年の研究では、着床の準備段階において、受精卵から放出されるシグナル(胚因子)が重要な役割を果たし、それを受けて子宮内膜が着床に適した状態へと変化することが分かってきました。

しかし、通常の胚盤胞移植では、この胚からのシグナルが子宮内膜に十分に伝わるタイミングが限られるため、着床の準備が整わないまま移植が行われてしまう可能性があります。

SEET法(シート法)は、こうした課題に対して考えられた方法です。
胚移植の数日前に、胚を培養した際の培養液を子宮内に注入することで、胚由来のシグナルをあらかじめ子宮内膜に届け、着床に向けた環境づくりを行います。

現在、SEET法は、保険診療の胚移植と併用可能な「先進医療」として認められています。

SEET法とは胚を培養した際の培養液(SEET液)を移植の2,3日前に子宮内に注入し、着床しやすい環境を整える方法です。

SEET法の効果と適応

SEET法は、胚移植に先立って子宮内膜の環境を整えることで、着床しやすい状態をつくることを目的とした治療法です。胚培養液に含まれる胚由来因子(シグナル)によって子宮内膜が刺激されることで、着床に適した状態(受容性の高い状態)へ変化すると考えられています。

アメリカ生殖医学会(ASRM)のFertility and Sterilityに掲載された比較研究では、SEET法を実施した群において、通常の胚盤胞移植群と比較して、妊娠率および着床率が有意に高かったことが報告されています。同論文では、胚移植あたりの妊娠率は87.0%(対照群48.0%)、胚あたりの着床率は71.9%(対照群37.8%)でした。*1

ただし、これらの結果はすべての症例に当てはまるものではなく、年齢や胚の状態、子宮内膜の条件などによって個人差があります。

SEET法が検討されるケース

SEET法は、以下のような方に対して検討されることがあります。

  • 良好な胚を移植しても妊娠に至らない
  • 着床率を高めたい
  • 二段階移植を検討している。*2


*1 参考文献 Nakayama T, et al. Stimulation of endometrium embryo transfer (SEET). Fertility and Sterility. 2007.

*2 SEET法は二段階胚移植と同様の原理(成長した受精卵の因子を利用)を用いています。

方法・費用・注意点

実施時期 SEET法は、凍結融解胚盤胞移植の2~3日前に実施します。
方法(痛み・流れ)

胚盤胞まで培養した際の培養液を、移植用の細いカテーテルを用いて子宮内へ注入します。
処置方法は人工授精と似ており、強い痛みを伴うことはほとんどありません。

注入後は、通常通りお過ごしいただけます。

費用 先進医療:25,000円
自由診療:27,500円(税込)
〈内訳〉胚盤胞培養液凍結費用:5,000円(税抜)、注入費用:20,000円(税抜)
副作用・リスク SEET法は比較的負担の少ない治療ですが、以下のような症状やリスクが生じる可能性があります。
  • カテーテル挿入時の出血
  • 数日程度の少量出血
  • 感染症
注意点
  • 1回の採卵で、最大6回分の胚移植に使用できる培養液を凍結保存することが可能です。
  • 胚培養液の凍結保存期間は1年間です。継続凍結保存はできませんのでご了承ください。

まとめ

SEET法は、胚移植に先立って胚培養液を子宮内へ注入し、子宮内膜を着床しやすい状態へ整えることを目的とした治療法です。

着床には、胚の質だけでなく、胚と子宮内膜のタイミングの合った相互作用が重要と考えられており、SEET法はその環境づくりをサポートする方法のひとつとして行われています。比
較研究では、SEET法を実施した群で着床率・妊娠率の向上が報告されており、特に良好胚を移植しても妊娠に至らない方や、着床不全が疑われる方に対して検討されることがあります。

一方で、すべての方に同じ効果が得られるわけではなく、年齢や胚の状態、子宮内膜の状態などによって適応は異なります。

当院では、これまでの治療経過や移植歴を踏まえながら、患者様お一人おひとりに合わせた治療をご提案しています。SEET法について気になることがある方は、診察時にご相談ください。

また、当院ではSEET法をはじめとしたオプション治療や、体外受精の治療方針についてご説明する「体外受精説明会」を開催しています。治療の全体像を知りたい方は、ぜひご参加ください。

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監修医師

宮﨑 薫みやざき かおる

はらメディカルクリニック理事長・院長

  • 医学博士
  • 日本参加婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
  • 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

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