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ERA検査とは?着床受容期を調べる検査

ERA検査(子宮内膜着床能検査)とは?対象者・流れ・費用・効果を解説

体外受精で良好な胚(受精卵)を移植したにもかかわらず妊娠に至らない場合、「なぜ着床しないのだろう」と悩まれる方も少なくありません。

着床しない原因はさまざまで、最も多いのは胚そのものの異常とされています。しかし、良好胚を移植しても着床しない場合には、子宮内膜側の要因が関係していることもあります。その一つが「着床受容期(着床の窓)」のずれです。

ERA(Endometrial Receptivity Analysis)検査は、一人ひとり異なる着床受容期を調べ、胚移植に適したタイミングを明らかにする検査です。 この記事では、ERA検査の仕組みや対象となる方、検査の流れ、検査で分かることについて詳しく解説します。

ERA検査とは

ERA検査とは

ERA(Endometrial Receptivity Analysis)検査とは、子宮内膜が胚を受け入れられる状態(着床受容期)になっているかを遺伝子レベルで調べる検査です。

通常、胚移植は着床しやすいとされる標準的な時期に行われます。しかし、このタイミングには個人差があり、人によっては標準より早かったり遅かったりすることがあります。

ERA検査では、子宮内膜の組織を採取し、着床に関係する248種類の遺伝子の発現を解析します。その結果から、その方にとって最適な胚移植のタイミングを推定します。
なお、ERA検査はスペインの検査会社「Igenomix(アイジェノミクス社)」で解析されます。

着床の窓(着床受容期)とは

着床の窓(Window of Implantation)とは、胚が子宮内膜に着床できる限られた期間のことです。

胚はいつでも子宮内膜に着床できるわけではありません。子宮内膜が十分に成熟し、胚を受け入れられる状態になった短い期間だけ着床が成立します。一般的には、排卵から5~6日後が着床受容期とされています。

子宮内膜は、エストロゲンによって厚くなった後、プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用を受けて着床に適した状態へ変化します。しかし、この変化のタイミングには個人差があり、着床受容期が標準より早く訪れる方もいれば、遅く訪れる方もいます。

そのため、標準的なスケジュールで胚移植を行っても、その方にとって最適なタイミングとは限りません。

ERA検査では、子宮内膜の組織を採取し、着床に関わる遺伝子の発現を解析することで、一人ひとりに適した着床受容期を調べます。

着床の窓とは

ERA検査の対象者

ERA検査は、すべての方に必要な検査ではありません。
一般的には、良好胚を複数回移植しても妊娠に至らない場合や、反復着床不全が疑われる場合に検討されます。

良好胚を移植しても着床しない方

体外受精では、形態評価の良い胚や染色体異常の可能性が低い胚を移植しても、着床しないことがあります。その原因としては、

  • 胚の染色体異常
  • 子宮内膜の状態
  • 子宮形態異常
  • 慢性子宮内膜炎
  • 着床受容期のずれ

などが考えられます。ERA検査は、このうち着床受容期のずれが原因かどうかを調べる検査です。

反復着床不全の方

反復着床不全とは、良好胚を複数回移植しても妊娠に至らない状態を指します。
着床不全の原因は一つではなく、胚側・子宮側のさまざまな要因が関与しています。そのため、ERA検査は単独で行うのではなく、他の検査結果や治療経過も踏まえ、医師が必要と判断した場合に実施を検討します。

ホルモン補充周期で胚移植を予定している方

ERA検査はホルモン補充周期で行う検査です。
検査では、プロゲステロン投与開始から何時間後に子宮内膜が着床受容期となるかを解析します。そのため、検査後の胚移植も同じホルモン補充周期で行う必要があります。

ERA検査が向かない方

ERA検査は、次のような方には適さない場合があります。

  • 自然周期での胚移植を希望している方
  • 初めての胚移植を予定している方
  • 他に優先して調べるべき着床不全の原因が考えられる方

ERA検査は、あくまでも着床不全の原因の一つである「着床受容期のずれ」を調べる検査です。そのため、すべての方に実施するわけではなく、これまでの治療経過や検査結果をもとに、医師と相談しながら検討することが大切です。

ERA検査の流れ

ERA検査の流れ

当院では、ERA検査の結果をできるだけ正確にするため、

  • ホルモン補充周期で実施
  • 初回プロゲステロン腟坐薬の使用時間を管理
  • 採取時間を厳密に設定

しています。また、検査結果で着床受容期のずれが確認された場合は、その結果に基づき、今後の胚移植日時を個別に調整します。

  1. 月経3日目までに受診する

ERA検査を希望する場合は、検査を実施したい周期の月経3日目までに診察を受け、「ERA検査を希望する」と医師へお伝えください。オンライン診療をご利用の場合は、お薬を翌日に受け取る必要があるため、月経2日目13時までに受診してください。

  1. ホルモン補充周期で検査の準備をする

ホルモン補充周期とは、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモン剤を使用して子宮内膜を整える方法です。

ERA検査では、一人ひとりの着床受容期を正確に調べるため、ホルモン補充周期で検査を行います。
特に重要なのが、初めてプロゲステロン腟坐薬を使用した時刻です。
当院では、初回の腟坐薬を12:00~14:00の間に使用していただきます。使用した時刻(何時何分か)は検査結果の判定に関わる重要な情報となるため、必ず記録し、次回の来院時にお伝えください。

  1. 子宮内膜を採取する

検査当日は、朝にプロゲステロン腟坐薬を1個使用し、12時30分までにご来院ください。
問診や準備を行った後、13時00分~13時30分頃に子宮内膜の組織を採取します。

処置時間は約5分で、生理痛のような痛みを感じることがありますが、多くの場合は短時間で終了します。 採取した組織は、当院からスペインの検査機関へ送付され、着床受容期を解析します。

結果が分かるまで約3週間

検体を海外へ輸送するため、結果が出るまでの目安は約3週間です。
輸送状況などによっては、それ以上かかる場合もあります。 結果説明の受診前には、検査結果が届いているか事前にご確認いただくことをおすすめします。

ERA検査でわかること

ERA検査では、子宮内膜の遺伝子発現を解析し、検査を行った時点で子宮内膜が着床受容期(着床の窓)にあるかどうかを判定します。
検査結果は子宮内膜の成熟度に応じて判定され、結果に合わせて胚移植のタイミングや再検査の必要性を判断します。

結果 意味 治療方針
Pre-Receptive 2 days
(受容期前・追加検査推奨)
着床受容期までまだ時間があり、ずれが大きい状態です。 約48時間後に追加検査を行い、着床受容期を再確認します。
Pre-Receptive 1 day
(受容期前)
着床受容期まであと少しの状態です。 約24時間遅らせて胚移植を行います。
Receptive
(受容期)
子宮内膜が着床受容期にあります。 ERA検査を行ったタイミングと同じ条件・同じ時間で胚移植を行います。
Late Receptive
(受容期後期)
子宮内膜は受容期ですが、やや後半の状態です。 約12時間早めて胚移植を行います。
Post-Receptive
(受容期後・追加検査推奨)
着床受容期を過ぎており、ずれが大きい状態です。 約24時間早いタイミングで追加検査を行い、着床受容期を再確認します。
Pre-Receptive 1 day
(受容期前・要再検査)
着床受容期まであと少しですが、追加で確認が必要と判断された状態です。 約24時間後に追加検査を行い、最適な胚移植のタイミングを確認します。
INSUFFICIENT RNAなど 検体の状態により判定できませんでした。 子宮内膜組織の採取量不足や血液の混入などが考えられるため、医師の判断で再検査を行います。

実際の胚移植日や追加検査の実施時期は、検査結果や治療計画に応じて担当医が総合的に判断します。

再検査になるケース

約10%のケースでは一回の検査で着床の窓を特定するのが困難であり、タイミングをずらしての再検査が推奨されます。

また、ごくまれに検査に必要な量や質の子宮内膜組織を十分に採取できず、再度検査が必要になる場合もあります。

メリット・デメリット

ERA検査は、一人ひとりの着床受容期を調べ、より適切なタイミングで胚移植を行うための検査です。

一方で、すべての方に必要な検査ではなく、検査を受けることによる負担や注意点もあります。検査を検討する際は、メリットだけでなくデメリットについても理解したうえで、医師と相談することが大切です。

メリット

個別の着床受容期が分かる

ERA検査の最大のメリットは、一人ひとり異なる着床受容期を調べられることです。
標準的な胚移植のタイミングが、その方にとって最適とは限りません。ERA検査によって着床受容期が標準より早い、あるいは遅いことが分かれば、その結果に合わせて胚移植のタイミングを調整できます。

胚移植時期を個別に調整できる

ERA検査でReceptive(受容期)以外と判定された場合は、判定結果に応じてプロゲステロン投与開始からの時間や胚移植を行う時刻を調整します。一人ひとりの判定結果に合わせて胚移植のタイミングを最適化することで、着床しやすい環境を整えることを目指します。

デメリット

検査のみの周期になる

ERA検査を実施する周期は、子宮内膜の組織を採取するため、タイミング法・人工授精・体外受精・胚移植を同じ周期に行うことはできません。 そのため、治療期間が1周期延びることになります。

ホルモン補充周期での胚移植に限られる

ERA検査はホルモン補充周期で行う検査です。
検査結果を活かすためには、検査時と同じ条件で胚移植を行う必要があるため、検査後の胚移植もホルモン補充周期で実施します。自然周期での胚移植を希望される方には適さない場合があります。

結果が出るまで時間がかかる

採取した組織はスペインの検査機関へ送付されるため、結果が出るまで平均約3週間かかります。検査状況や輸送状況によっては、それ以上かかる場合もあります。

約10%は再検査が必要になる

ERA検査では、判定結果によっては、最適な着床受容期をより正確に特定するため、追加検査が推奨されることがあります。追加検査が必要となるのは全体の約10%とされています。
また、採取した子宮内膜組織の量や質が十分でない場合など、検査結果を正しく判定できなかった場合にも、再検査が必要になることがあります。

ERA検査で妊娠率は上がる?

ERA検査を検討される方が最も気になるのが、「妊娠率は本当に上がるのか」という点ではないでしょうか。
結論からいうと、反復着床不全など適応がある方には有用性が期待される一方で、すべての方で妊娠率が向上するとは限りません。

着床率が向上したという報告

ERA検査の開発元であるIgenomix社は、これまでの研究から、標準的な着床受容期と異なるタイミングを示す方が約3~4割いることを報告しています。また、反復着床不全の方を対象とした初期研究では、個々の着床受容期に合わせて胚移植を行うことで、着床率の改善が示されました。

このような結果から、着床受容期のずれが原因となっている方には、ERA検査が治療方針の決定に役立つ可能性が示されています。

すべての方に有効とは限らない

一方で、近年では複数の研究やランダム化比較試験(RCT)が報告されており、ERA検査をすべての方に実施しても妊娠率や生児獲得率が向上するとは限らないことも示されています。

着床しない原因は、胚の染色体異常や子宮内膜炎、子宮形態異常などさまざまであり、着床受容期のずれだけが原因ではありません。そのため、現在では反復着床不全など、適応を見極めたうえで実施することが重要と考えられています。

当院でも、これまでの治療経過や検査結果を総合的に判断し、ERA検査が適しているかどうかを医師と相談したうえでご案内しています。

ERA検査の費用

当院では、ERA検査を先進医療または自由診療で実施しています。ERA検査と同時にEMMA・ALICEも実施できます。

参考

Igenomix. ERA® Endometrial Receptivity Analysis(公式サイト)

Ruiz-Alonso M, Blesa D, Díaz-Gimeno P, et al.
The endometrial receptivity array for diagnosis and personalized embryo transfer as a treatment for patients with repeated implantation failure.
Fertility and Sterility. 2013;100(3):818-824.

Doyle N, Jahandideh S, Hill MJ, et al.
Effect of Timing by Endometrial Receptivity Testing vs Standard Timing of Frozen Embryo Transfer on Live Birth in Patients Undergoing In Vitro Fertilization: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022;328(21):2117-2125.

Cimadomo D, Craciunas L, Vermeulen N, et al.
ESHRE good practice recommendations on recurrent implantation failure.
Human Reproduction Open. 2023.

Hashimoto T, Koizumi M, Doshida M, et al.
Efficacy of the endometrial receptivity array for repeated implantation failure in Japan: A retrospective, two-centers study.
Reproductive Medicine and Biology. 2017;16(3):290-296.


監修医師

宮﨑 薫みやざき かおる

はらメディカルクリニック理事長・院長

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
  • 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

医師・スタッフ紹介

よくあるご質問

回答

子宮内膜を採取する際に、痛みを感じることがあります。採卵手術と同時に行えば静脈麻酔下のため痛みは感じにくいです。

回答

ERA検査は保険診療の対象ではありません。 先進医療または自由診療として実施します。

回答

通常は1回の検査で終了します。
ただし、約10%のケースでは一回の検査で着床の窓を特定するのが困難であり、タイミングをずらしての再検査が推奨されます。

回答

受容期と判定された場合は、標準的なホルモン補充周期での胚移植時期が、その方にとっても適切である可能性が高いと考えられます。

そのため、検査時と同じ条件・同じタイミングで胚移植を行います。

回答

ERA検査でReceptive(受容期)以外と判定された場合は、結果に応じて胚移植を行う日時を調整する、または追加検査(再検査)を行います。

患者さま一人ひとりの着床受容期に合わせて胚移植を行うことが、ERA検査の目的です。

回答

ERA検査は、妊娠を保証する検査ではありません。

着床しない原因は胚の状態や子宮の環境などさまざまであり、ERA検査で分かるのは「着床受容期のずれ」の有無です。そのため、ERA検査は反復着床不全など適応がある方に対して、治療方針を検討するための一つの選択肢として活用されています。