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高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは?効果や費用、保険適用について

高濃度ヒアルロン酸含有培養液

体外受精では、良好な胚を移植しても妊娠に至らないことがあります。妊娠の成立には、胚の質だけでなく、胚が子宮内膜に着床しやすい環境が整っていることも重要です。 そのため、胚移植時には着床をサポートするさまざまな方法が用いられます。その一つが高濃度ヒアルロン酸含有培養液です。

高濃度ヒアルロン酸培養液は、胚移植時に使用する培養液を通常のものよりも高濃度のヒアルロン酸を含む培養液に変更する方法で、胚と子宮内膜の接着を助け、着床しやすい環境づくりを目的としています。

この記事では、高濃度ヒアルロン酸含有培養液の仕組みや期待できる効果、研究結果、当院での実施方法や費用について解説します。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは

高濃度ヒアルロン酸含有培養液の使い方

高濃度ヒアルロン酸含有培養液の使い方

高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは、胚移植の際に使用する培養液に、高濃度のヒアルロン酸を含ませた培養液です。

ヒアルロン酸は、皮膚や関節だけでなく、卵子を取り囲む卵丘細胞や子宮内膜にも存在する成分で、高い保水性と粘性を持っています。そのため、生殖医療の分野では、培養中や胚移植時に胚を保護する目的で広く利用されています。

胚移植では、移植直前に胚を高濃度ヒアルロン酸含有培養液へ一定時間浸してから子宮内へ戻します。患者様が受ける処置は通常の胚移植と変わらず、使用する培養液のみが変更されます。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液は、胚の質を改善するものではありません。胚が本来持つ力を発揮しやすい環境を整え、着床をサポートすることを目的として使用されます。

なお、高濃度ヒアルロン酸を含む胚移植用培養液として「EmbryoGlue(エンブリオグルー)」が広く知られていますが、これは製品名です。

着床をサポートする理由

高濃度ヒアルロン酸含有培養液が着床をサポートする仕組み

胚が着床するためには、胚と子宮内膜が互いに認識し、接着することが必要です。
ヒアルロン酸は、この過程で重要な役割を担うと考えられています。

ヒアルロン酸は、胚と子宮内膜の両方に存在するCD44(ヒアルロン酸受容体)と結合することで、胚と子宮内膜の相互作用を促し、着床初期の接着やシグナル伝達をサポートすると考えられています。

さらに、高い保水性と粘性により、培養中や胚移植時に胚を物理的・化学的ストレスから保護する働きも期待されています。

このように、高濃度ヒアルロン酸含有培養液には

  • 胚を保護する
  • 胚と子宮内膜の接着を助ける
  • 着床しやすい環境を整える

という複数の働きが期待されており、胚移植時の選択肢の一つとして多くの生殖補助医療施設で使用されています。なお、2022年度の診療報酬改定以降は、一定の条件を満たす場合に医師の判断のもと保険診療で使用できるようになりました

高濃度ヒアルロン酸含有培養液で期待できる効果

妊娠率・出生率の向上が期待される

高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用する目的は、胚移植時の環境を整え、着床をサポートすることです。現在の研究では、妊娠率や出生率の向上が期待できることが報告されています。

一方で、高濃度ヒアルロン酸含有培養液は胚そのものの質を改善するものではなく、妊娠を保証するものでもありません。

年齢や胚の質、子宮内膜の状態など、さまざまな要因が妊娠率に影響するため、高濃度ヒアルロン酸含有培養液はあくまでも胚移植時の選択肢の一つとして位置付けられています。

研究結果(Cochrane Review)

2020年に発表されたCochrane Database of Systematic Reviewsでは、26件のランダム化比較試験(6,704名)を解析した結果、高濃度ヒアルロン酸を含む胚移植用培養液を使用することで、出生率および臨床妊娠率が向上する可能性が示されました。

一方で、流産率については低下傾向がみられたものの、十分なエビデンスは得られていませんでした。

このように、高濃度ヒアルロン酸含有培養液には一定の効果が期待される一方で、すべての患者様で同じ効果が得られるわけではないことも分かっています。

当院の解析結果

はらメディカルクリニックでは、2023〜2024年に実施した1,764周期を解析しました。
その結果、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用した周期では、使用しなかった周期と比較して、

  • 妊娠率が25.7%向上
  • 流産率が55.4%低下

という結果が得られました。*

* 高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用した患者様について、使用前(非使用周期)と使用した周期の妊娠率・流産率を比較した結果です。

なお、この結果は当院で実施した後方視的解析によるものであり、患者背景などの影響を考慮する必要があります。しかし、当院の実臨床においても、高濃度ヒアルロン酸含有培養液が有効な選択肢となる可能性が示されました。

どのような方におすすめ?

適応となる方

当院では、次のような方に高濃度ヒアルロン酸含有培養液をご提案しています。

  • 胚移植で妊娠に至らなかったことがある方
  • 胚移植の着床率向上を期待したい方
  • 胚移植時のオプションを検討している方
  • 医師から使用を提案された方

保険診療では、過去に胚移植で妊娠不成功であるなど、医師が必要と判断した場合に算定できます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
  • 胚移植時の環境を整えられる
  • 胚と子宮内膜の接着をサポートできる
  • 処置内容は通常の胚移植と変わらない
  • 妊娠率や出生率の向上が期待できる
  • 妊娠を保証するものではない
  • 追加費用がかかる
  • すべての患者様に必要な治療ではない
  • 申し込み後のキャンセルは返金できない

費用・保険適用・申し込み方法

費用

診療区分 費用
保険診療 3,000円
自費診療 16,500円(税込)

保険適用では、過去の胚移植で妊娠不成功であるなど、医師が必要と判断した場合に算定できます。適応については、患者様の治療歴などを踏まえて医師が判断します。

申し込み方法

胚移植周期開始時に、要望書にて実施希望の有無をお伺いします。

キャンセルについて

使用する培養液は、お申し込み後に準備します。保存期間が非常に短いため、キャンセルされた場合は廃棄処分となり、返金はできませんのでご了承ください。

まとめ

高濃度ヒアルロン酸含有培養液は、胚と子宮内膜の接着をサポートし、着床しやすい環境を整えることを目的とした胚移植用培養液です。

2020年のCochrane Reviewでは、出生率や臨床妊娠率の向上が期待できる可能性が示されており、当院でも1,764周期の解析で妊娠率の向上と流産率の低下が認められました。

一方で、高濃度ヒアルロン酸含有培養液は妊娠を保証するものではなく、すべての患者様に必要な治療ではありません。年齢や治療歴、胚の状態などを総合的に判断したうえで選択することが大切です。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液についてご希望やご不明な点がありましたら、胚移植周期開始時に医師へお気軽にご相談ください。

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参考文献

Heymann D, Vidal L, Or Y, Shoham Z. Hyaluronic acid in embryo transfer media for assisted reproductive technologies. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020;9:CD007421.

監修医師

宮﨑 薫みやざき かおる

はらメディカルクリニック理事長・院長

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
  • 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

医師・スタッフ紹介

よくあるご質問

回答

いいえ。年齢や胚の状態、治療歴などによって適応は異なります。医師と相談のうえ、ご自身に適した方法を選択することが大切です。

回答

保険診療では、初回の胚移植に高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用することはできません。使用できるのは、生涯2回目以降の胚移植からです。
一方、自費診療では、ご希望に応じて初回の胚移植から使用することが可能です。

回答

当日のお申し込みはできません。事前準備が必要なため、遅くとも胚移植予定日の2日前までにお申し込みください。

回答

はい。新鮮胚移植・凍結胚移植のどちらでも使用できます。

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