Column

着床出血はいつ起こる?量・色・生理との違いと受診の目安

「着床出血」と呼ばれる出血は、妊娠初期にみられる性器出血の通称です。着床と出血の時期を調べた研究では、着床そのものが出血を引き起こすという仮説を支持する結果は得られなかったと報告されています。

また、妊娠初期の出血は約4人に1人にみられたという研究もあります。出血の有無や見た目だけで妊娠を判断することはできないため、適切な時期に検査で確認しましょう。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003、E3:Hasan R, et al. Obstet Gynecol. 2009)

※出血量が多い、強い腹痛やめまい・ふらつきがある場合は、妊娠検査を待たずに早急に受診してください。

着床出血とは

「着床出血」は着床が原因と確認された出血ではない

医療機関のウェブサイトなどでは、「受精卵が子宮内膜にもぐり込むとき、内膜が傷ついて出血する」と説明されることがあります。

しかし、妊娠初期の出血が実際に着床によって起きたものかどうかは、必ずしも明らかではありません。着床と出血の時期を調べた研究では、着床した日に出血するケースはまれで、着床そのものが出血を引き起こすという仮説を支持する結果は得られなかったと報告されています。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

ただし、これは一つの研究結果です。「着床出血」という名称だけで、出血の原因や妊娠の経過を判断することはできません。

研究では、着床の日に出血はほとんど起きていなかった

米国ノースカロライナ大学の疫学研究者、エミリー・W・ハーヴィルらは、妊娠を希望する女性の尿検査と毎日の記録をもとに、着床したと考えられる日と出血した日の関係を調べました。その結果、妊娠6週以降まで妊娠が継続した151人のうち、妊娠8週までに出血があったのは14人(9%)でした。

出血は生理予定日ごろにみられる傾向がありましたが、着床したと推定される日に起こることはまれでした。出血が確認されたのは14人であり、この研究だけで着床と出血の関係をすべて否定できるわけではありません。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

妊娠初期の出血はどのくらいの人に起こる?

妊娠初期の出血は、必ずしも珍しいことではありません。前述の151人を対象とした研究では9%でした。一方、米国ノースカロライナ大学で疫学を研究したリーム・ハサンらが妊婦4,510人について調べた研究では、27%に出血や点状出血がみられました。割合は研究対象や出血の調べ方などによって異なりますが、妊娠初期の出血が一定数の人に起こることがわかります。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003、E3:Hasan R, et al. Obstet Gynecol. 2009)

着床出血はいつ起こる?

自然妊娠の場合

妊娠が継続したケースを調べた研究では、着床を示す尿中hCGの最初の上昇は排卵後6〜12日に確認され、その84%が排卵後8〜10日でした。これは「着床の時期」に関するデータであり、「着床出血が排卵後8〜10日に起こる」という意味ではありません。一方、妊娠した151人の女性の記録を調べた別の研究では、出血は着床日よりも生理予定日ごろに多かったという報告もあります。(E2:Wilcox AJ, et al. N Engl J Med. 1999、E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

「性行為から何日後なら着床出血」と、日数だけで決めることはできません。妊娠初期の出血は一般に少量で、月経と間違えられにくいと評価した研究もあります。一方、生理予定日前後には出血する時期が重なることもあるため、出血の原因を症状だけで断定せず、妊娠の可能性がある場合は検査で確認しましょう。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

体外受精(胚移植)の場合

体外受精で胚移植を受けた場合も、判定日前後に出血することがあります。ただし、出血した日から着床日を逆算することはできず、出血の有無だけで妊娠判定もできません。

デンマークのスキーベ地域病院で不妊治療を研究するJ・M・ニールセンらは、ホルモン補充周期に凍結胚盤胞移植を受け、妊娠反応が陽性だった320人を調べました。そのうち妊娠8週までに出血した人は47%(149人)でした。これは特定の治療法で妊娠反応が陽性となった人を対象に、妊娠8週ごろに出血歴を質問して確認した結果であり、すべての胚移植患者に当てはまる割合ではありません。(E6:Nielsen JM, et al. Hum Reprod. 2023)

一方、スイス・ベルン大学病院の産婦人科医、ヤンナ・パーペらは、スイスで過去に記録された凍結融解胚移植後の7,342例の妊娠データを分析しました。妊娠初期に出血した割合は、自然周期で3.5%、低刺激周期で4.3%、ホルモン補充周期で8.4%でした。

こちらは、過去の記録をもとに異なる移植方法を比較した研究です。ニールセンらの調査とは対象集団や出血の確認方法が異なるため、47%と8.4%を単純比較したり、個人の出血確率として受け取ったりはできません。(E7:Pape J, et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2022)

当院では、胚盤胞移植後は約10日、初期胚移植後は約13日を目安に採血による妊娠判定を行っています。これらは妊娠を判定するための検査日であって、「その日に着床出血が起きる」という意味ではありません。胚移植後の妊娠判定の詳しい説明は、当院の記事「着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説」をご覧ください。(E10:当院『着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説』)

自然妊娠と胚移植後の時期の比較

着床出血と生理の違い|量・色・期間の目安

着床出血の量・色・見た目

ハサンらが妊娠初期の出血の特徴を調べた別の研究では、出血を経験した人のうち「多量の出血」を報告した人は8%で、大半は点状出血または少量の出血でした。ここでいう点状出血は、拭いたときにだけ血がつく程度の状態です。一方、多量の出血は、通常の月経で最も量が多い日と同程度か、それを上回る出血として定義されています。(E4:Hasan R, et al. Ann Epidemiol. 2010)

同じ論文で出血を「人」ではなく「出血した回数(エピソード)」ごとに集計すると、色は茶色43.5%、ピンク色31.0%、赤色25.4%でした。また、1日で終わった出血エピソードは51.5%でした。これらは妊娠初期の出血を記録した結果であり、「茶色なら着床出血」「1日なら問題ない」という判定基準ではありません。(E4:Hasan R, et al. Ann Epidemiol. 2010)

妊娠初期の出血「量・色・期間」の目安

生理との違いは?見分けるときの注意点

妊娠初期の出血は、生理予定日ごろに起こることがあります。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

一方、ハーヴィルらの研究では、妊娠初期の出血は一般に少量で、月経と間違えられることは少ないという見解も示されています。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

ただし、出血の時期や見た目だけで妊娠しているかどうかを判断することはできません。妊娠の可能性がある場合は、適切な時期に妊娠検査を行うことが大切です。

比較する点

妊娠初期にみられる出血

月経(一般的な経過)

起こる時期

生理予定日と重なることがある

月経周期に伴って起こる

出血の量

点状・少量から多量まで幅がある

日によって変化する

色・期間

茶色・ピンク・赤色など。期間にも幅がある

色・日数には個人差がある

妊娠の判断

出血の見た目では判断できない

月経と思っても妊娠の可能性は残る

比較表は「こうなら必ず妊娠」「こうなら必ず生理」と決めるためのものではありません。出血の様子だけで原因を推測するよりも、生理予定日からの経過と妊娠検査の結果、必要に応じた診察で確認することが大切です。

着床出血がないのは異常?

出血がなくても異常ではありません。臨床妊娠151人を追った研究では出血を記録した人は9%で、別の大規模研究でも出血を経験しなかった人のほうが多数でした。「着床出血がないから妊娠していない」「出血があったから妊娠した」という判断はいずれもできません。妊娠しているかどうかは検査で確認しましょう。(E1:Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003、E3:Hasan R, et al. Obstet Gynecol. 2009)

着床出血と腹痛

妊娠初期の出血は、下腹部痛を伴う場合もあります。ハサンらが出血の回数ごとに調べた研究では、点状出血・少量出血の28%、多量出血の54%に痛みが伴っていました。この数字は、妊娠初期の出血と痛みの組み合わせを示すものであり、「着床したときに痛む割合」を示すものではありません。(E4:Hasan R, et al. Ann Epidemiol. 2010)

また、妊婦4,510人のデータを解析した研究では、点状出血や少量の出血は流産との明確な関連が認められなかった一方、多量の出血は流産との関連が強く、特に痛みを伴う場合にその関連が強くみられました。出血と痛みがあるからといって、必ず流産するという意味ではありません。(E3:Hasan R, et al. Obstet Gynecol. 2009)

着床出血があったら妊娠検査薬はいつ使う?

出血があった時点で妊娠しているかを確かめたい場合は、妊娠検査薬の使用時期を確認してください。当院では一般的な市販の妊娠検査薬について、生理予定日の1週間後以降を目安としています。早すぎる検査では、妊娠していてもhCGが十分に増えておらず、陰性になることがあります。(E10:当院『着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説』)

体外受精などでhCG注射を受けた場合は、注射の影響で検査結果が陽性になることがあります。当院の既存記事では、hCG注射後6日以内の採血で、注射の影響によってhCGの値が高く出る場合があると説明しています。治療中は検査結果だけで自己判断せず、治療施設が指定した日に妊娠判定を受けてください。血液検査や判定結果の詳細は「着床したかわかる方法」をご覧ください。(E10:当院『着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説』)

すぐに受診してほしい出血

妊娠の可能性がある時期に少量の出血がみられても、それだけで妊娠の有無は判断できません。市販の妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後以降の使用が目安です。(E10:当院『着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説』)

ただし、生理の多い日と同程度の出血がある、出血量が増えている、強い腹痛がある、めまい・ふらつきがあるなどの場合は、検査を待たずに早急に医療機関を受診してください。また、妊娠がすでに確認されている場合の出血についても医療機関への相談が必要です。(E9:MSDマニュアル プロフェッショナル版)

量が多い・強い痛みがある

妊婦4,510人の調査では、多量の出血があった人は、出血のなかった人と比べて流産のオッズが約3倍(オッズ比3.0)でした。特に痛みを伴う多量の出血で関連が強いことが報告されています。ただし、これは集団での関連を示す統計であり、個々の妊娠の結果を予測する数値ではありません。(E3:Hasan R, et al. Obstet Gynecol. 2009)

異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性

異所性妊娠(子宮外妊娠)は、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床する状態です。2010年の国内文献では、異所性妊娠は全妊娠の約1%、生殖補助医療後では4〜5%と報告されています。これは当時の報告値であり、治療法や患者背景によって頻度は異なります。(E8:明石祐史・斎藤豪. 臨床婦人科産科. 2010)

異所性妊娠では性器出血や腹痛がみられることがあり、出血の量が少なくても否定はできません。(E9:MSDマニュアル プロフェッショナル版)

妊娠の可能性があるときに下腹部の片側が強く痛む、痛みが突然強くなる、めまいや失神に近い症状が出る場合は、すぐに医療機関で診察を受けてください。(E9:MSDマニュアル プロフェッショナル版)

体外受精の判定前に出血があったら

胚移植後、妊娠判定の前に出血があっても、そのことだけで治療の結果は判断できません。判定日や受診の必要性については治療施設の案内に従ってください。

胚移植後に使用している黄体ホルモン製剤などは、出血があっても自己判断で中止せず、処方元の治療施設に確認してください。

まとめ・当院のご案内

・いわゆる「着床出血」は妊娠初期の出血を指す通称です。妊娠した151人の女性を追跡した研究では、着床そのものが出血を起こすという仮説を支持する結果が得られなかったという報告もあります。

・妊娠初期の出血には量・色・期間の幅があり、出血の有無や見た目だけで妊娠したかどうかを判断することはできません。

・胚移植後に出血した場合も、出血だけで妊娠の結果は判断できません。判定前の連絡方法と薬の扱いは、担当医の指示に従ってください。

着床したかを確認する方法やhCG血液検査の詳しい解説は、当院の「着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説」をご覧ください。また、体外受精・胚移植の流れは「当院の体外受精」で紹介しています。

出典一覧

E1 Harville EW, et al. Vaginal bleeding in very early pregnancy. Hum Reprod. 2003;18:1944–1947.

E2 Wilcox AJ, et al. Time of implantation of the conceptus and loss of pregnancy. N Engl J Med. 1999;340:1796–1799.

E3 Hasan R, et al. Association between first-trimester vaginal bleeding and miscarriage. Obstet Gynecol. 2009;114:860–867.

E4 Hasan R, et al. Patterns and predictors of vaginal bleeding in the first trimester of pregnancy. Ann Epidemiol. 2010;20:524–531.

E5 Hasan R. Vaginal bleeding in early pregnancy: patterns, predictors, and association with miscarriage. UNC博士論文(公開要旨). 2009.

E6 Nielsen JM, et al. Early pregnancy bleeding after assisted reproductive technology: a systematic review and secondary data analysis from 320 patients undergoing hormone replacement therapy frozen embryo transfer. Hum Reprod. 2023;38:2373–2381.

E7 Pape J, et al. Early pregnancy complications after frozen-thawed embryo transfer in different cycle regimens. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2022;279:102–106.

E8 明石祐史・斎藤豪「1.腹腔鏡下手術の実際」臨床婦人科産科. 2010;64(7):1071–1075.

E9 MSDマニュアル プロフェッショナル版「妊娠初期における性器出血」(日本語版2024年3月更新)

E10 はらメディカルクリニック「着床したかわかる方法」

よくあるご質問

回答

着床を示す尿中hCGの上昇は排卵後6〜12日(多くは8〜10日)に確認されたとの研究がありますが、これは出血が起こる日数を示すものではありません。妊娠した151人の女性の記録を調べた別の研究では、妊娠初期の出血は生理予定日ごろにみられる傾向が報告されています。「排卵・性行為から何日後の出血なら着床出血」とは判断できません。(Wilcox AJ, et al. N Engl J Med. 1999;Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

回答

出血の色や量、時期だけで、その原因を確実に判断することはできません。妊娠の可能性がある場合は、生理予定日の1週間後以降を目安に市販の妊娠検査薬などで確認しましょう。『着床したかわかる方法|症状・サイン・正確な確認方法を解説』)

回答

妊娠初期の出血は、1日でおさまる場合もあれば、数日間続いたり、いったん止まって再び出血したりする場合もあります。トイレに行くたびに出血するかどうかだけでは、原因を判断できません。(Hasan R, et al. Ann Epidemiol. 2010)

回答

妊娠初期には、トイレで拭いたときに気づく程度の少量の出血がみられることがあります。ただし、出血量には個人差があり、ティッシュにつく程度だからといって、着床による出血とは判断できません。(Hasan R, et al. Ann Epidemiol. 2010)

回答

妊娠のごく初期に出血したからといって、それが着床を原因とするとは限りません。妊娠した151人の女性の記録を調べた研究では、両者が一致する傾向は確認されなかったという報告もあります。ただし、出血の原因を研究だけで一律に判定できるわけではありません。出血だけで妊娠の有無や経過を判断せず、必要な時期に検査を受けてください。(Harville EW, et al. Hum Reprod. 2003)

回答

「出産を経験した人ほど着床出血が起こりやすい」と断定できる根拠は確認されていません。一方、リーム・ハサンが米国ノースカロライナ大学でまとめた博士論文の公開要旨では、出産経験がないことが妊娠初期の出血に関係する要因の一つとして挙げられています。ただし、着床そのものが引き起こした出血だけを調べた研究ではありません。博士論文の要旨に基づく結果であり、一般化には注意が必要です。(Hasan R. 博士論文公開要旨. 2009)

監修医師

宮﨑 薫みやざき かおる

はらメディカルクリニック理事長・院長

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
  • 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

医師・スタッフ紹介