体外受精を検討するにあたって、「自分の年齢でどのくらい妊娠できるのか」は、多くの方が最初に気になることのひとつではないでしょうか。
この記事では、日本産科婦人科学会(または、日産婦)の2023年全国データをもとに、年齢別の妊娠率・生産率を解説します。また、当院であるはらメディカルクリニックの実績についても詳しくご紹介します。なお、体外受精の『成功率』という言葉は、妊娠率・生産率など複数の指標を指して使われます。本記事では、この指標の違いや、何回目の移植で妊娠に至るのかという『回数』の見通しについても解説します。

体外受精の妊娠率を左右する「年齢」
体外受精の妊娠率に最も大きく影響するのは、女性の年齢です。
女性は生まれた時点で一生分の卵子を持っており、その数は年齢とともに減少し続けます。同時に、卵子の質も加齢によって低下するため、受精や着床に至りにくくなります。このことは体外受精においても同様で、治療法が同じであっても、年齢が高いほど妊娠率は下がり、流産率は上がります。
「治療を始めるタイミングが早いほど、より多くの選択肢がある」という点を、まず念頭に置いておくことが大切です。
年齢別体外受精妊娠率・生産率(日産婦データ)
日本産科婦人科学会の「2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」では、全国の体外受精・顕微授精のデータが年齢別に公開されています。胚移植あたりの、妊娠率と生産率は以下の通りです。
|
年齢 |
妊娠率 |
生産率 |
|---|---|---|
|
30歳まで |
52.0% |
41.4% |
|
31~33歳 |
49.2% |
38.6% |
|
34~36歳 |
46.0% |
34.6% |
|
37~39歳 |
39.7% |
27.4% |
|
40~42歳 |
29.3% |
17.0% |
|
43~49歳 |
15.2% |
7.1% |
出典:日本産科婦人科学会ARTデータブック2023年
「妊娠率」と「生産率」の違いに注目
「妊娠率」とは、一般的に超音波検査で胎嚢が確認された割合です。一方「生産率」は、妊娠後に赤ちゃんが無事に生まれた割合を指します。妊娠しても流産となる場合があるため、特に年齢が高い方は生産率にも注目することが大切です。
日本産科婦人科学会のデータによると、37歳から流産率は25%を超え、40歳を過ぎると急激に高まります(40歳35.6%、43歳48.5%)。妊娠率と生産率の差が大きくなる年齢帯であることを、ぜひ念頭に置いておいてください。
「成功率」「着床率」という言葉との違い
体外受精の「成功率」には、統一された定義がありません。
医療機関や資料によって、胚移植あたりの妊娠率を指す場合もあれば、生産率(出産に至った割合)を指す場合もあります。また、分母も「胚移植あたり」「採卵を含む治療周期あたり」などさまざまです。数値を比較するときは、「何を分母として、何を成功と数えているのか」を必ず確認するようにしてください。
「着床率」は、移植した胚が子宮内膜に着床した割合を指す指標で、妊娠率(胎嚢確認)よりも一段階手前の状態を数えたものです。着床しても胎嚢の確認に至らない場合があるため、同じ治療成績でも着床率は妊娠率より高い数値になる傾向があります。
当院の記事・妊娠実績ページでは、原則として「妊娠率=超音波検査で胎嚢が確認された割合」「生産率=赤ちゃんが無事に生まれた割合」という定義で統一しています。
年齢別の流産率について
妊娠率と生産率の差を生んでいるのが流産です。日本産科婦人科学会の2023年データでは、年齢別の流産率(妊娠あたり)は以下のように報告されています。
|
年齢 |
流産率(妊娠あたり) |
|---|---|
|
30歳まで |
17.5% |
|
31~33歳 |
18.9% |
|
34~36歳 |
22.0% |
|
37~39歳 |
28.0% |
|
40~42歳 |
38.9% |
|
43~49歳 |
49.9% |
※ 出典:日本産科婦人科学会ARTデータブック2023年
流産の多くは、胚(受精卵)の染色体の問題によって起こるものであり、治療の方法やご本人の行動が原因となるケースはごく一部です。年齢が上がるほど流産率が高くなるのは、卵子の加齢に伴い染色体の問題を持つ胚の割合が増えるためです。流産を経験された場合も、ご自身を責める必要はありません。
当院の累積妊娠率(2023〜2024年)
体外受精では、1回の胚移植で妊娠に至らない場合でも、2回、3回と治療を重ねることで妊娠する方が増えていきます。こうした「治療を継続した場合の妊娠に至る割合」を累積妊娠率といいます。
当院では、同一患者の治療経過を追跡し、母集団を固定して算出した累積妊娠率を公開しています。施設によっては回数ごとの妊娠数を単純に合算したデータが「累積妊娠率」として示されている場合もありますが、母集団の扱いが異なるため注意が必要です。
胚移植1~3回の累積妊娠率(対象:1,074人、PGT-A/SR除く)
|
年齢 |
1回目 |
2回目まで |
3回目まで |
|---|---|---|---|
|
30歳まで |
45.5% |
80.8% |
91.0% |
|
31〜33歳 |
54.1% |
80.1% |
92.6% |
|
34〜36歳 |
46.9% |
78.8% |
91.2% |
|
37〜39歳 |
40.1% |
64.4% |
83.4% |
|
40〜42歳 |
33.8% |
59.1% |
72.7% |
|
43歳以上 |
30.8% |
46.2% |
53.8% |
36歳までの胚移植3回までの累積妊娠率91%、37~39歳まで83%、40~42歳まで73%の実績です。
また、体外受精の卵巣刺激・採卵数・受精率・胚盤胞率・グレード別の妊娠率など、各プロセスの成績については、下記の妊娠実績(体外受精・顕微授精)ページでご確認いただけます。
体外受精は何回目で妊娠する?
「何回目で必ず妊娠する」と言い切れるものではなく、個人差が大きいのが実際のところです。そのうえで見通しをお伝えすると、【当院実績】はらメディカルクリニックの累積妊娠率(2023~2024年・対象1,074人・PGT-A/SR除く)では、42歳までの各年齢帯で、胚移植3回目までに約7~9割の方が妊娠しています。1回目で妊娠する方もいれば、2回目・3回目で妊娠に至る方も多く、「1回で妊娠しなかった=うまくいかない」ということではありません。
※上記は当院の実績値(全国平均ではありません)であり、妊娠を保証するものではありません。全国データは前掲の日本産科婦人科学会2023年の表をご覧ください。
多くの方は移植1~3回目で妊娠しています
累積妊娠率の表をあらためて見ると、どの年齢帯でも「1回目まで」より「2回目まで」、「2回目まで」より「3回目まで」の数値が大きく伸びています。これは、1回の移植で妊娠に至らなくても、回数を重ねることで妊娠される方が着実に増えていくことを意味します。
一方で、43歳以上では3回目までの累積妊娠率は53.8%と、若い年齢帯との差が大きくなります。回数を重ねれば必ず妊娠率が積み上がるわけではない点も、あわせて知っておいていただきたい事実です。
1回目の移植で妊娠する確率
当院の実績では、1回目の胚移植での妊娠率は年齢帯により30.8%(43歳以上)~54.1%(31~33歳)です。全国データ(胚移植あたり妊娠率15.2%~52.0%)と見比べても、「1回目で妊娠する方は一定数いるものの、半数以上の方は2回目以降に持ち越す」のが標準的な経過だとわかります。初回で妊娠に至らなかったとしても、決して珍しいことではありません。
回数を重ねても妊娠に至らないときは「見直し」のサイン
注意したいのは、同じ方法のまま回数だけを重ねても、妊娠の可能性が自動的に積み上がるとは限らないことです。良好な胚を複数回移植しても妊娠に至らない場合、その背景に着床側の要因などが隠れていることがあります。
そのような場合、当院では次のような見直しの選択肢をご提案しています。
- 卵巣刺激法や受精方法(体外受精/顕微授精)、培養方針の変更
- 着床不全の検査・治療(詳しくは着床不全のページへ)
- PGT-A・PGT-SR(着床前診断)の検討(詳しくはPGT-A・PGT-SRのページへ)
保険適用の回数制限(40歳未満6回・40~42歳3回)との関係
2022年4月から体外受精は公的保険の適用対象となっており、胚移植の回数には上限があります。治療開始時点の女性の年齢が40歳未満の場合は子ども1人につき6回まで、40歳以上43歳未満の場合は3回までです(※)。
前述の通り、多くの方が3回目までの移植で妊娠に至っていることを踏まえると、保険適用の範囲内でも複数回の挑戦を前提とした治療設計が可能です。ただし、40~42歳では上限が3回となるため、限られた回数をどう使うかの計画がより重要になります。費用や保険適用の詳細は、体外受精の費用に関する記事・ページをご覧ください。
※ 出典:厚生労働省「不妊治療に関する支援について」(保険適用の回数上限)。
妊娠率を考えるうえで知っておきたいこと
早期開始が選択肢を広げる
妊娠率は年齢とともに低下します。特に35歳以降はその傾向が顕著になるため、妊娠を希望する場合は早めに検査・相談を受けることが大切です。一般的に、35歳未満で1年間、35歳以上で6か月間妊娠しない場合は、不妊治療の専門機関に相談することが推奨されています。
タイミング法・人工授精を長く続けすぎない
当院が妊娠患者様に実施したアンケート(1,471名)では、「タイミング法・人工授精を長く続けすぎた」という声が最も多く寄せられました。
タイミング法や人工授精では、卵管の「機能」が重要になりますが、この機能は検査では確認できません。機能に問題がある場合は、同じ治療を繰り返しても妊娠に至らないことがあります。「体外受精に進んでからも一定の時間がかかるため、早く進めばよかった」という声も多く見られました。
体外受精は選択の積み重ね
体外受精では、卵巣刺激の方法をはじめ、受精方法・培養日数・胚移植の管理方法・先進医療の有無など、さまざまな選択があります。これらの選択によって、妊娠率や妊娠までの期間、費用は大きく変わります。
当院では毎月無料の体外受精説明会(オンライン参加・アーカイブ視聴も可)を開催しており、「なぜこの治療を行うのか」「選択によって何が変わるのか」まで詳しくお伝えしています。
体外受精説明会(来場・オンライン・アーカイブ)生活習慣について
女性の場合、卵子は新しく作られることがないため、生活習慣の改善だけで妊娠に直結するケースは多くありません。ただし、過度な痩せ・肥満(適正BMIの維持)、喫煙、慢性的な睡眠不足やストレスは妊娠に影響する可能性があるため、整えておくことが大切です。
男性の場合、精子は日々作られているため、生活習慣の影響を受けやすい特徴があります。精子検査で気になる点がある場合は、肥満・喫煙・運動不足・長時間の入浴やサウナ(精子は熱に弱い)・射精頻度(週1回程度が目安)などを見直してみましょう。当院では男性不妊外来(泌尿器科)も行っており、超音波検査を含めた詳細な検査や薬物療法なども対応しています。
まとめ
体外受精の妊娠率は年齢によって大きく異なり、複数回の移植を重ねることで多くの方が妊娠に至っています。当院では、胚移植3回目までの累積妊娠率は36歳まで91%以上、37〜39歳83%、40〜42歳73%という実績のもと、一人ひとりの状況に合わせた治療を提供しています。
治療の流れや詳細な選択肢については、体外受精・顕微授精のページでご確認いただけます。費用については体外受精・顕微授精の費用ページをご参照ください。まずは無料の体外受精説明会に参加し、治療の流れや実績について詳しくご確認いただくことをお勧めします。
体外受精とは? 仕組み・流れ・妊娠率・保険適用をわかりやすく解説
体外受精説明会(来場・オンライン・アーカイブ)監修医師
宮﨑 薫みやざき かおる
はらメディカルクリニック理事長・院長
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
- 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。
よくあるご質問
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回答
当院では、体外受精の成績について、卵巣刺激から採卵・受精・培養・胚移植まで、各プロセスごとに公開しています。妊娠率の詳細はこちらをご覧ください。
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回答
原因不明のカップルの場合、タイミング法の妊娠率は5~10%程度と言われています。
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回答
人工授精の妊娠率は、年齢や不妊原因により異なりますが、1回あたりは高くありません。平均して約3回で妊娠するケースが多く、結果が出ない場合は体外受精を検討します。詳しくは、妊娠実績の人工授精をご確認ください。
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回答
人工授精は、1回あたりの妊娠率がそれほど高くないため、複数回行うことで妊娠の可能性を高めていく治療です。一般的には3~6回程度を目安に行います。一方で、人工授精で妊娠した方の平均は2~3回程度です。そのため、妊娠を急いでいる場合には、3回程度を目安に、結果や年齢、不妊の原因などを踏まえて体外受精へのステップアップを検討することもあります。治療回数の目安は、ご夫婦のご希望や状況によっても異なるため、医師と相談しながら進めていくことが大切です。
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回答
必ず妊娠率が上がるとは限りません。先進医療の有効性は、年齢や治療経過などにより個人差があります。当院における先進医療の実施周期と非実施周期の妊娠率の違いについては、「要望書」や資料でご案内していますので、参考にしてください。