2026年8月から、高額療養費制度が見直されます。

体外受精や顕微授精などの保険診療を受けている方の中には、「自己負担額は増えるの?」「不妊治療でも年間上限は使えるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回の見直しでは、月ごとの自己負担上限額の引き上げに加え、新たに「年間上限」が導入されます。この記事では、高額療養費制度の見直し内容と、現時点で想定される不妊治療への影響についてまとめました。
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、1か月の医療費が高額になった場合に、自己負担額が一定の上限までに抑えられる制度です。
体外受精や顕微授精などの保険診療も対象となるため、多くの患者さんが利用している制度です。マイナ保険証を利用している場合は、原則として窓口で自動的に反映されます。
ただし、実際の自己負担額は、加入している健康保険によって異なる場合があります。
健康保険組合によっては、「付加給付制度」により医療費の一部が追加で補助されることがあります。この場合、高額療養費制度が見直されても実際の自己負担額への影響は受けにくいと思われます。
高額療養費制度の見直しはなぜ行われる?
高額療養費制度は、多くの方が安心して医療を受けられるよう設けられている制度です。一方で、高齢化や医療技術の進歩により医療費は年々増加しています。
今回の見直しは、制度を将来にわたって維持していくことを目的として行われるものです。そのため、自己負担上限額の引き上げとあわせて、長期間にわたり治療が必要な方への配慮として年間上限も新設されることになりました。
2026年8月改正で何が変わる?
今回の見直しでは、大きく2つの変更があります。
① 月ごとの自己負担上限額が引き上げられる
所得区分がこれまでより細分化され、自己負担上限額が2026年8月以降、段階的に引き上げられます。最大で38%引き上げられる区分もあり、多くの方で、これまでより自己負担額が増える見込みです。

② 年間上限が新設される
今回の改正では、新たに「年間上限」が導入されます。
これは、1年間で支払った医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超過分が後から払い戻される仕組みです。長期間にわたり治療が必要な方への配慮として導入されます。
不妊治療で年間上限に達するのか?
年間上限は、高額療養費制度の対象となる保険診療に対して導入される制度です。そのため、保険適用で行う不妊治療も対象となりえます。
では、実際に年間上限に達するのでしょうか。
結論からいうと、一般的な治療内容では年間上限に達しないケースが多いと考えられます。
年収約370万~770万円の方が、1年の間に採卵2回、胚移植6回を実施した場合を例に考えてみます。
・採卵周期:約9万円 × 2回 = 約18万円
・胚移植周期:約5万円 × 6回 = 約30万円
→合計は約48万円※1となります。
年収約370万~770万円の方の年間上限額は53万円※2とされており、この例では年間上限の対象にはなりません。
一方で、採卵を3回以上繰り返し、1年間の多くの月で採卵または胚移植を行うようなケースでは、年間上限の対象となり、負担軽減につながる可能性があります。
※1 費用は当院の一般的な治療例をもとにした概算です。実際の自己負担額は、治療内容や使用する薬剤、保険適用の範囲などによって異なります。
※2 引用元:厚生労働省:高額療養費の年間上限の新設
自己負担増と東京都の助成拡大
高額療養費制度の見直しにより、多くの方で自己負担額が増える見込みです。
一方で、東京都では2026年度から体外受精の助成事業が拡充されています。
以前は先進医療のみが助成対象でしたが、2026年度からは保険診療による体外受精の自己負担額も対象に加わりました。
「保険診療の体外受精+先進医療」の自己負担額に対し、1回の治療につき最大15万円を、保険適用の移植回数(原則)に応じて助成を受けることができます。
また、民間の医療保険に加入している方は、体外受精が給付金の対象となる場合があります。ご加入中の保険の保障内容を、この機会に確認してみましょう。
なお、不妊治療開始後は、新たな医療保険への加入が難しくなったり、保障内容に条件が付いたりする場合があります。将来的に不妊治療を選択肢として考えている方は、民間保険について夫婦で話しておくのもよいかもしれません。
まとめ
2026年8月から、高額療養費制度が見直されます。
主な変更点は、
・月ごとの自己負担上限額の引き上げ
・年間上限の新設
の2つです。不妊治療も年間上限の対象となりますが、一般的な治療内容では年間上限に達しないケースが多いと考えられます。一方で、採卵や胚移植を繰り返し、1年間を通じて治療が継続する場合には、年間上限による負担軽減を受けられる可能性があります。
また、加入している健康保険組合に付加給付制度がある場合は、実際の自己負担額への影響が小さい場合があります。
東京都では2026年度から不妊治療費助成事業が拡充されているため、お住まいの自治体の助成制度や、ご加入中の医療保険の保障内容もあわせて確認しておくとよいでしょう。