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子宮内膜スクラッチとは?不妊治療で行う目的、効果を解説

子宮内膜スクラッチ(子宮内膜擦過術)とは

子宮内膜スクラッチ(子宮内膜擦過術)とは、子宮内膜にあえて小さな刺激(軽い傷)を与えることで、着床しやすい子宮内環境を整えることを目的とした不妊治療の一つです。先進医療として位置づけられており、主に体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)における胚移植前に検討されることがあります。

良好な胚を移植しても妊娠に至らない場合、子宮内膜の状態が影響している可能性があり、そのようなケースに対する選択肢の一つとして用いられることがあります。

子宮内膜スクラッチの仕組み

子宮内膜スクラッチ(子宮内膜擦過術)の基本と仕組み

通常、受精卵(胚)は子宮内膜に着床することで妊娠が成立します。子宮内膜スクラッチは、この着床の成立に関わる子宮内の環境に着目し、意図的に子宮内膜に刺激を加えることで着床しやすい状態を目指す処置です。

子宮内膜に小さな傷がつくと、体はそれを修復しようとして、インターロイキンなどのサイトカインと呼ばれるたんぱく質を分泌します。これらは炎症や組織修復に関与する物質ですが、同時に胚の着床過程にも関わっていると考えられています。

そのため、子宮内膜スクラッチによってこうした物質の分泌が促されることで、胚が着床しやすい環境に近づく可能性があるとされています。

どのようなケースで検討されるか

子宮内膜スクラッチは、着床しやすい環境を整えることを目的として行われる処置であり、特に体外受精において複数回の胚移植を行っても妊娠に至らない場合(反復着床不全)に検討されることがあります。 一部の研究では、着床率や妊娠率の向上が示唆されていますが、結果にはばらつきがあり、すべての方に同様の効果が認められるわけではありません。そのため、治療の適応については、これまでの経過や検査結果を踏まえて医師と相談のうえ判断することが重要です。

子宮内膜スクラッチの方法

先端がやわらかい細い棒状の器具を子宮内に挿入し、子宮内膜の表面をやさしくこすることで、ごく小さな刺激を加えます。外来で短時間で行うことができる処置です。

処置の流れ

処置は以下のような流れで行われます。

  1. 超音波検査で子宮内膜の状態を確認
  2. 器具を子宮内に挿入
  3. 子宮内膜を軽く擦過(スクラッチ)
  4. 処置終了

処置自体はシンプルで、特別な麻酔を必要としないケースが一般的です。

子宮内膜スクラッチの手順

所要時間と痛みの目安

処置にかかる時間は5分程度と短時間で終了します。

子宮内膜をこする際に、チクッとした軽い痛みや違和感を感じることがありますが、多くの場合は我慢できる程度です。痛みの感じ方には個人差がありますが、強い痛みが続くことはほとんどありません。また、処置後に軽い出血がみられることがありますが、通常は数日以内に自然におさまります。

実施時期

子宮内膜スクラッチは、月経周期の中で適切なタイミングを選んで実施する処置です。一般的には、月経8日目頃から排卵の2日前までの期間に行います(※出血がある時期は避けます)

体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行う場合は、胚移植を予定している周期中またはその前に実施することが多く、子宮内膜の状態を整えたうえで胚移植を行います。

また、子宮内膜スクラッチの効果は一定期間持続すると考えられており、目安としては2~3ヶ月程度とされています。ただし、持続期間については明確なエビデンスがあるわけではなく、臨床経験に基づく目安となります。 なお、実施のタイミングは治療内容や患者さまの状態によって調整されるため、具体的な時期については診察時に医師とご相談ください。

実施条件

  • 感染症検査に異常がないこと
  • 月経開始から処置まで避妊が必要
  • 医師の診察で適応を判断すること

子宮内膜スクラッチの副作用・リスク

子宮内膜スクラッチは比較的短時間で行える処置ですが、体に刺激を加える医療行為であるため、いくつかの副作用やリスクが伴います。あらかじめ理解したうえで実施することが大切です。
処置中は、子宮内膜をこする際にチクッとした軽い痛みや違和感を感じることがあります。痛みの程度には個人差がありますが、多くの場合は我慢できる範囲とされています。

また、処置後には少量の出血がみられることがあります。出血は2~3日程度続くことがありますが、通常は自然におさまります。ただし、出血が長く続く場合や量が増えてくる場合は、念のため医療機関へご相談ください。

まれに、子宮内に器具を挿入することによって感染が起こる可能性があります。そのため、発熱や強い腹痛、異常な出血などの症状がみられた場合は、早めに受診することが重要です。

なお、出血が続いている場合には、人工授精や胚移植のスケジュールに影響が出ることがあります。治療計画についても含めて、事前に医師と十分に相談することが大切です。

予約方法

子宮内膜スクラッチは、診療予約システムよりご予約いただけます
予約項目名は【単純内膜スクラッチ】を選択してください。
同時に子宮鏡検査を行う場合は【子宮鏡検査(子宮鏡下内膜スクラッチ)】を選択してください。

まとめ

子宮内膜スクラッチ(子宮内膜擦過術)は、子宮内膜にあえて小さな刺激を与えることで、着床しやすい子宮内環境を整えることを目的とした不妊治療の一つです。先進医療として位置づけられており、特に体外受精において複数回の胚移植を行っても妊娠に至らない場合に検討されることがあります。

また、効果については個人差があり、すべての方に有効とは限らないため、これまでの治療経過や検査結果を踏まえて、医師と相談しながら適応を判断していきましょう。