
体外受精や顕微授精では、受精卵(胚)を数日間培養してから子宮へ戻します。この培養期間中の胚の発育をより詳しく観察できる方法が「タイムラプス培養」です。
タイムラプス培養は、胚を培養器から取り出すことなく連続的に観察できる技術で、現在では先進医療としても認められています。
「タイムラプス培養をすると妊娠率は上がるの?」「通常の培養との違いは?」「自分にも必要なの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。 この記事では、タイムラプス培養の仕組みやメリット・デメリット、妊娠率への影響、当院での取り組みについて解説します。
タイムラプス培養とは
従来の培養との違い
タイムラプス培養とは、専用の培養器に搭載されたカメラで胚を一定間隔ごとに撮影し、発育の様子を連続的に観察できるシステムです。
通常の培養では、胚の状態を確認するために培養器から胚を取り出して顕微鏡で観察します。一方、タイムラプス培養では胚を培養器から出すことなく観察できるため、より安定した環境で培養を続けることができます。


タイムラプス培養でわかること・メリット
胚へのストレスを減らせる
胚は温度や二酸化炭素濃度などの培養環境の変化に影響を受けます。
通常培養では観察のたびに培養器から胚を取り出しますが、タイムラプス培養では培養器内で観察が完結します。 そのため、環境変化による胚へのストレスを軽減できると考えられています。
胚の発育を詳しく観察できる
タイムラプス培養では、胚の発育を10分ごとなど短い間隔で記録できます。
通常の培養では観察時点の状態しか確認できませんが、タイムラプス培養では受精から胚盤胞までの過程を動画として確認できます。 具体的には以下のような情報を得ることができます。
- 前核の数や、出現・消失のタイミング
- 細胞分裂のスピード
- 分割のパターン
- 異常な分裂の有無
- 胚盤胞までの発育過程
胚の成長過程を連続的に確認できることは、タイムラプス培養の大きな特徴です。
胚評価の精度向上につながる
胚の評価では、見た目だけでなく発育の過程も重要な情報になります。
タイムラプス培養では、細胞分裂のタイミングや発育速度などの情報を記録できるため、より多くの情報をもとに胚を評価することが可能です。
当院では、タイムラプス培養で取得した胚の発育データを活用し、AIによる胚評価システム「iDAScore(アイダスコア)」を導入しています。
iDAScoreは、タイムラプス培養で記録された胚の発育過程の画像をAIが解析し、妊娠継続の可能性をスコアとして示す評価システムです。
従来の胚培養士による見た目の評価に加えて、AIによる客観的な評価を参考にすることで、移植する胚を選択する際の判断材料のひとつとして活用されています。

AIによる胚評価 iDAScore|先進医療(タイムラプス培養)での活用
タイムラプス培養にデメリットはある?
タイムラプス培養には多くのメリットがありますが、いくつか注意点もあります。
まず、通常培養とは別に追加費用が発生します。
また、タイムラプス培養を行ったからといって、必ずしも妊娠率が向上するわけではありません。患者さまの年齢や卵子・精子の状態、胚の質など、妊娠にはさまざまな要因が関係します。
さらに、タイムラプス培養で確認できるのは胚の発育速度や分割パターンです。
染色体異常の有無や遺伝的な異常を判定することはできません。 タイムラプス培養はあくまでも「胚の発育を詳しく観察するためのシステム」であり、万能な検査ではないことを理解しておきましょう。
タイムラプス培養はどんな方におすすめ?
タイムラプス培養は、次のような方におすすめです。
- 胚の発育をより詳しく評価したい方
- 良好胚の獲得を目指したい方
- 胚の成長過程を確認したい方
また、複数の胚が得られた場合には、発育状況を比較するための参考情報として活用できる場合があります。ご自身に適しているかどうかは、診察時に医師へご相談ください。
当院のタイムラプス培養
当院の実績
当院ではタイムラプス培養を導入しており、2017年〜2019年の実績では、従来培養と比較して胚盤胞到達率が11.8%向上しました。また、受精のタイミングを詳細に確認できるため、より精度の高い受精判定にも役立っています。
申込方法・期限
採卵日決定時のお会計までに申込書をご提出ください。
なお、タイムラプス培養は専用シャーレを事前に準備するため、お申し込み後のキャンセルにはキャンセル料が発生します。詳しくはスタッフへお尋ねください。
監修医師
中山 順樹なかやま なおき
はらメディカルクリニック培養室長
- 日本臨床エンブリオロジスト学会認定エンブリオロジスト
2007年明治大学農学部生命科学科卒業。2009年同大学大学院農学研究科修了。同年、山下湘南夢クリニック開院に伴い培養室長として入職し、培養室の立ち上げに従事。2015年よりはらメディカルクリニック勤務。2016年より培養室長。
よくあるご質問
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回答
タイムラプス培養は、受精卵を外に出さずに成長を見守れる培養方法です。受精卵への負担を抑えながら、成長の様子を詳しく確認できるため、妊娠の可能性が高い胚を選びやすくなり、妊娠率の向上が期待されます。
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回答
必ずしも全員に必要というわけではありません。
患者さまのご希望や治療方針によって適応が異なりますので、医師や培養士へご相談ください。 -
回答
いいえ。タイムラプス培養で確認できるのは胚の発育過程です。染色体異常や遺伝子異常の有無を判定することはできません。
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回答
胚の培養状況や凍結胚のグレードは、ご希望の患者様にメールで随時お知らせしています。
また、胚評価の詳細は、培養・凍結完了以降の診察時にお渡しする「胚凍結保存リスト」にてご確認いただけます。
リストには、以下の項目が記載されます。
・iDAScore
・ガードナー分類
・総合評価(胚盤胞ランク) -
回答
当院では、iDAScoreを用いたタイムラプス培養を先進医療として実施しています。
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回答
iDAScore自体は胚の培養や妊娠率そのものを高めるものではありません。妊娠継続の可能性を考えるための指標です。