
不妊治療をはじめるにあたって、「どの治療でどのくらい妊娠できるのか」は、多くの方が最初に知りたいことのひとつではないでしょうか。
この記事では、不妊治療の妊娠率を、治療法(タイミング法・人工授精・体外受精)と年齢の両軸からデータをもとに解説します。また、当院の実績についてもサマリーでご紹介します。
不妊治療の妊娠率を左右する「年齢」という要因
不妊治療の妊娠率に最も大きく影響するのは、女性の年齢です。
女性は生まれた時点で一生分の卵子を持っており、その数は年齢とともに減少し続けます。同時に、卵子の質も加齢によって低下するため、受精や着床に至りにくくなります。
文部科学省が保健教育本に掲載した「年齢と妊娠しやすさの関係」の引用元論文では、20〜24歳を基準(1.0)とすると、25歳~29歳では約0.9、30歳~34歳では約0.8、35歳~39歳では約0.6、40歳~44歳では約0.3と、年齢が上がるにつれ低下することが示されています。
出典:O’Connor KA, Holman DJ, Wood JW. Declining fecundity and ovarian ageing in natural fertility populations. Maturitas. 1998;30(2):127–136.
このことは、不妊治療においても同様です。治療法が同じであっても、年齢が高いほど妊娠率は下がり、流産率は上がります。「治療を始めるタイミングが早いほど、より多くの選択肢がある」という点を、まず念頭に置いておくことが大切です。
治療法別の妊娠率
不妊治療は、一般的な医療と異なり、検査で原因が特定できないことや、原因が分かっても直接治すことが難しい場合があります。そのため、妊娠に至る確率を高めることを目的に、「タイミング法」「人工授精」「体外受精」のいずれかを選択して開始します。

タイミング法の妊娠率
タイミング法は、排卵日を医学的に予測し、妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う方法です。自然妊娠にもっとも近く、身体的・経済的な負担が少ないため、不妊治療の最初のステップとして行われることが多い方法です。
タイミング法の妊娠率は、原因不明の不妊症の場合、1回の月経周期あたり約5~10%と言われています。原因不明不妊カップルを対象とした前向き研究では、自然妊娠による累積妊娠率は約6か月で45〜50%に達し、その後の増加のペースは緩やかになること(横ばい)が示されています。
出典: Brandes M, et al. Hum Reprod. 2011
当院のタイミング法の成績(2023〜2024年)
当院でタイミング法を行い妊娠に至った方では、妊娠までに要した平均周期数は2.0周期でした。タイミング法で妊娠した方の平均年齢は33.7歳でした。
なお、年齢が高い(特に38歳以上)・不妊期間が長い・男性側に精子の問題がある、といった場合は、タイミング法が向かないこともあります。向いているケース・向いていないケースはタイミング法のページを、当院のタイミング法の成績は妊娠実績ページをご覧ください。
人工授精の妊娠率
人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入する方法です。精子が卵子に出会う確率を高めることで、妊娠率の向上が期待できます。
1回あたりの妊娠率は、年齢や不妊原因によって異なりますが、5〜15%程度とされています。3〜6回行っても妊娠しない場合は、体外受精へのステップアップが推奨されています。
当院の人工授精の成績(2023〜2024年)
当院での人工授精の妊娠率は、37歳以下で1〜3回目17.9%・4〜6回目14.3%、38歳以上で1〜3回目10.8%・4〜6回目8.3%でした。妊娠までの平均周期数は2.7周期(最小1周期・最大23周期)で、妊娠例の平均年齢は33.2歳です。
人工授精が向いているケース・向いていないケースは人工授精のページを、当院の人工授精の成績は妊娠実績ページでご確認いただけます。
体外受精・顕微授精の妊娠率
体外受精は、採卵した卵子と精子を体外で受精させ、育てた受精卵(胚)を子宮に戻す方法です。顕微授精(ICSI)は体外受精の方法のひとつで、精子を直接卵子に注入します。どちらも「生殖補助医療(ART)」と呼ばれ、不妊治療の中で最も妊娠率が高い方法です。
日本全国の成績について、日本産科婦人科学会(以下、日産婦)の2023年のデータでは、胚移植1回あたりの妊娠率と生産率は以下の通りです。
| 年齢 | 妊娠率 | 生産率 |
|---|---|---|
| 27-30歳 | 51.9% | 41.4% |
| 31-33歳 | 49.2% | 38.6% |
| 34-36歳 | 46.0% | 34.6% |
| 37-39歳 | 39.7% | 27.4% |
| 40-42歳 | 29.3% | 17.0% |
| 43歳以上 | 15.0% | 7.1% |
出典:日本産科婦人科学会ARTデータブック2023年
なお、「妊娠率」と「生産率(赤ちゃんが無事に生まれた割合)」は異なります。妊娠に至っても流産となる場合があるため、特に年齢が高い場合は生産率にも注目することが大切です。日産婦のデータによると、37歳から流産率は25%を超え、40歳を過ぎると急激に高まる傾向があります(流産率:40歳35.6%、43歳48.5%)。妊娠率と生産率の差が大きくなります。
当院の体外受精の成績(2023〜2024年)
胚移植1回あたりの妊娠率は、胚のグレードによって異なります。グレードが4~6AA・BA・ABの胚盤胞1個移植の場合の妊娠率と生産率は以下の通りです。
| 年齢 | 妊娠率 | 生産率 |
|---|---|---|
| 30歳まで | 52.9% | 42.5% |
| 31-33歳 | 56.5% | 47.3% |
| 34-36歳 | 53.8% | 42.2% |
| 37-39歳 | 44.2% | 30.2% |
| 40-42歳 | 29.8% | 18.4% |
| 43歳以上 | 15.5% | 10.3% |
体外受精の年齢・胚グレード別の詳しい妊娠率は、体外受精 妊娠率のページをご覧ください。治療の流れや費用については体外受精・顕微授精のページをご覧ください。
当院(はらメディカルクリニック)の累積妊娠率
体外受精では、1回の胚移植で妊娠に至らない場合でも、2回、3回と治療を重ねることで妊娠する方が増えていきます。
このように、同じ患者様が治療を継続した場合にどの程度妊娠に至るかを示した指標を「累積妊娠率」といいます。
胚移植3回までの累積妊娠率(2023〜2024年)
当院では、同一患者の治療経過を追跡し、母集団を固定した累積妊娠率を算出・公開しています。
なお、施設によっては、回数ごとの妊娠数を単純に合算したデータが「累積妊娠率」として示されている場合もありますが、母集団の扱いが異なるため、単純な比較には注意が必要です。
|
年齢 |
1回目 | 2回目まで | 3回目まで |
|---|---|---|---|
| 30歳まで | 45.50% | 80.80% | 91.00% |
| 31〜33歳 | 54.10% | 80.10% | 92.60% |
| 34〜36歳 | 46.90% | 78.80% | 91.20% |
| 37〜39歳 | 40.10% | 64.40% | 83.40% |
| 40〜42歳 | 33.80% | 59.10% | 72.70% |
| 43歳以上 | 30.80% | 46.20% | 53.80% |
| 対象:1,074人(PGT-A/SRを除く) | |||
36歳まで3回以内の累積妊娠率91%、39歳まで83%、42歳まで73%という実績となっています。
妊娠率を高めるために知っておきたいこと
治療の早期開始が重要
前述のとおり、妊娠率は年齢とともに低下します。特に35歳以降はその傾向が顕著になるため、妊娠を希望する場合は早めに検査・相談を受けることが大切です。
目安として、35歳未満で1年間妊娠しない場合、35歳以上で6か月間妊娠しない場合は、不妊治療の専門機関に相談することが推奨されています。
タイミング法・人工授精を長く続けすぎない
当院が1,471名に実施した妊娠患者様へのアンケートでは、「タイミング法・人工授精を長く続けすぎた」という声が最も多く寄せられました。
これらの治療は、排卵や卵子・精子の状態に加えて、「卵管の機能」が重要になります。卵管が通っているかは確認できますが、機能については検査ができず、機能に問題がある場合は、同じ治療を繰り返しても妊娠は至りません。
アンケートでは、「体外受精に進んでからも一定の時間がかかるため、早く進めばよかった」という意見も多く見られました。
体外受精は選択の積み重ね
体外受精では、卵巣刺激の方法をはじめ、受精方法、培養日数、胚移植の管理方法、先進医療の有無など、さまざまな選択があります。
これらの選択によって、妊娠率や妊娠までの時間、費用は大きく変わります。
当院では、毎月無料の体外受精説明会を開催しており、「なぜこの治療を行うのか」「選択によって何が変わるのか」まで詳しくお伝えしています。
説明会にご夫婦で参加し、それぞれのプロセスを正しく理解した上で、「何を選ぶか」「何を選ばないか」を話し合い、医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
生活習慣と妊娠率
女性の場合、卵子は新しく作られることがないため、生活習慣の改善だけで妊娠に直結するケースは多くありません。
ただし、以下のような要因は妊娠に影響する可能性があるため、整えておくことが大切です。
- 喫煙(禁煙外来への相談)
- 過度な痩せ・肥満(適正BMIの維持)
- 強いストレス、慢性的な睡眠不足
男性の場合、精子は日々作られているため、生活習慣の影響を受けやすい特徴があり、逆に言うと改善できる可能性も高まります。 精子検査で気になる点がある場合は、生活習慣の見直しを行いましょう。
- 喫煙(禁煙外来への相談)
- 肥満(適正BMIの維持)
- 運動不足
- 射精回数が少ない(週1回程度の射精を目安に)
- 長時間の入浴やサウナ(精子は熱に弱い)
また、当院では男性不妊外来(泌尿器科)も行っています。精巣の超音波検査を含めた詳細な検査に加え、薬物療法や手術、サプリメントによる生活指導なども行っていますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
不妊治療の妊娠率は、治療法と年齢によって大きく異なります。タイミング法・人工授精は1回あたり5〜15%程度ですが、体外受精では年齢によって異なるものの、複数回の移植を重ねることで多くの方が妊娠に至っています。
当院では、胚移植3回目までの累積妊娠率は、36歳までは91%以上、37~39歳は83%、40-42歳は73%という実績のもと、一人ひとりの状況に合わせた治療を提供しています。まずは体外受精説明会に参加し、治療の流れや実績について詳しくご確認ください。
監修医師
宮﨑 薫みやざき かおる
はらメディカルクリニック理事長・院長
- 医学博士
- 日本参加婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
- 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。