
本ガイドラインは、2026年8月1日時点の法令等を踏まえ、子どもの利益を最優先に策定しています。ただし、特定生殖補助医療法が成立した場合は、法律が優先されるため、法律の施行までにガイドラインを見直します。

はじめに
0.はじめに
本ガイドラインは、当院が提供する提供精子による生殖補助医療について、その考え方、制度、治療の流れをご理解いただくために作成しています。
当院は、生殖医療で作られる家族のその先まで見据えた医療を目指しています。そのため、本ガイドラインでは、その考え方に基づいて定めた制度や治療の進め方についてご説明します。
提供精子による生殖補助医療を検討されているご夫婦には、本ガイドラインをご一読いただき、当院の考え方をご理解いただいたうえで、ご共感いただける場合に限り当院での治療をご選択いただければ幸いです。
1.提供精子による生殖補助医療とは
提供精子による生殖補助医療とは、夫が無精子症などの絶対的男性不妊である場合や、性別変更に伴い精子がない場合に、第三者から提供された精子を用いて子どもを授かるための治療です。
提供精子を用いた治療方法には、AIDとIVF-Dの2つがあります。
| AID | 提供精子による人工授精のこと |
| IVF-D | 提供精子による体外受精(顕微授精)のこと |
提供精子には、「非匿名」と「匿名」の2種類があります。当院は2026年8月より提供精子を完全非匿名化します。
| 非匿名 | 出生した子どもが成人後に希望した場合、当院仲介のもとで、連絡できる(メール・電話・手紙・直接会う)ドナーの提供精子 |
| 匿名 | 出生した子どもが成人後に希望しても、連絡できないドナーの提供精子 |
※ 匿名の提供精子を用いた治療はストック限りで終了します。
当院について
2.当院の提供精子による生殖補助医療について
3.当院の考え方
2.当院の提供精子による生殖補助医療について
①当院は、日本産科婦人科学会の提供精子における登録施設
②AID・IVF-D実施件数
- AID年間約450~550件 (AIDは1997年開始)
- IVF-D(採卵+胚移植)年間約200~250件 (IVF-Dは2022年開始)
※当院が実施する人工授精・体外受精全体のうち、AID・IVF-Dが占める割合は約7%
③ドナー精子の募集から治療までの一貫管理
当院で治療に使用するドナー精子は、すべて当院が募集・採用したドナーから提供されたもので、他の国内外の精子バンクは使用していません。募集から治療までを当院で一貫して行っています。
④提供精子の完全非匿名化
当院は、生まれた子どもの権利と福祉をより重視するため、非匿名提供精子のみを用いて生殖補助医療を行います。
(2026年8月より完全非匿名化。ただし、それ以前から匿名AIDを実施していた夫婦に限り、希望があればストックのある限り匿名AIDを継続できます。)
3.当院の考え方
①生まれる子どもの権利と福祉を最優先とする
提供精子による生殖補助医療には、「治療を受ける夫婦」「生まれる子ども」「ドナー」の三者が存在し、それぞれに大切な権利があります。しかし、三者すべての権利や希望を同時に満たすことはできません。当院では、自らの意思でこの治療を選択することができない「生まれる子ども」の権利と福祉を最優先に考えています。
②妊娠・出産で終わらない、生涯にわたる支援
当院では、提供精子による生殖補助医療を、妊娠・出産をもって終わる医療とは考えていません。この治療によって生まれた子どもが、自らの出自を前向きに受け止めながら成長し、ご家族が安心して歩んでいけるよう、生まれる前から生まれた後まで継続した支援を行っています。そのため、当院では告知支援を重要な医療の一つと考えています。

③ご夫婦とともに歩む医療
当院では、「生まれる子どもの権利と福祉を最優先にする」という視点を大切にしながら、ともに考え続けられるご夫婦を治療の対象としています。治療開始前には、提供精子による家族づくりワークシートを通して理解を深め、ご夫婦で子どもの権利と福祉について十分に考えながら告知計画書を作成していただきます。その内容を倫理委員会が審査し、当院の理念とご夫婦の考えが無理なく一致していると判断された場合に治療を提供しています。

子どもの出自を知る権利
4.子どもの出自を知る権利とは
5.子どもの出自を知る権利を支える仕組み
6.子どもと家族への切れ目のない支援
7.当院の限界とリスク
4.子どもの出自を知る権利とは

①子どもが、自分がどのようにして生まれたのかを知ること
②子どもが、自分の遺伝的ルーツ(精子ドナー)について知ること
出自を知る権利は、この2つがそろって初めて成り立ちます。そのため当院では、まず①を守るために、子どもへ告知したいと考える夫婦を治療の対象としています。そして②が可能な非匿名ドナーによる治療の仕組みを整えています。
5.子どもの出自を知る権利を支える仕組み
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①100年間の情報管理
子どもが将来、自分の出自を確認できるように、患者夫婦・生まれた子ども・ドナーの本人確認に必要な情報を、患者の初診日から100年間当院にて管理します。※7.当院の限界とリスク参照
②ドナー情報を知ることができる
子どもが幼少期から自分のルーツについて知ることができるよう、妊娠20週頃の夫婦に、ドナーの周辺情報(身長・体重・体の特徴・職業・血液型・趣味・特技・精子を提供した理由など)および3親等以内の病歴を開示します。これらは、夫婦が子どもの成長にあわせて、子ども自身のルーツを伝えていくための大切な情報です。

③同じドナーによる子ども(ドナーシブリング)同士のつながり
15歳以上となった子どもが希望した場合、同じドナーによる子ども同士がつながれる、HARA Donor Sibling Linkを2038年頃から予定しています。
同じドナーによる子どもは、海外ではDonor Siblings(ドナーシブリング)と呼ばれ、登録やつながりの機会を設ける仕組みがあります。自分と同じ遺伝的ルーツを持つ人との出会いは、子どもにとって大切な支えになると考えられています。
一方で、交流時点での子どもたちの出自の受け入れに大きな差が生じないよう、
- 幼少期から計画的に、繰り返し告知を受けていること
- 夫婦が絵本作成会に参加し、子どもが「ねえ、しってる?」の絵本を持っていること
- 3歳と6歳の発達・家族フォローを受けていること
などが要件となるため、まだ実施は先ですが現時点でご案内しています。

こちらは6-⑦の「子ども会」とは別の制度です。
④成人後にドナーと連絡ができる
- 非匿名の提供精子により生まれた子どもが18歳以上となり、ドナーとの連絡を希望した場合は、子ども本人から当院までお問い合わせください。
- 非匿名の提供精子により生まれた子どもは、心理カウンセリングを受けていただき、倫理委員会の承認を得たのち、ドナーとの連絡に関する契約を締結します。これは、ドナーの権利と安全を守るための手続きです。
- 連絡方法は、「メール・電話・手紙・直接会う」の4つがあり、子どもの希望をドナーへ伝えたうえで、協議により決定します。
- 初回を含む数回の連絡までは、子どもとドナーの双方が安心して交流できるよう、当院が仲介します。その後、双方の信頼関係が築かれた場合には、お互いの同意のもとで、直接交流していただきます。
- なお、当院がドナーと契約している連絡回数は「1回以上」です。そのため、子どもが成人した時点でのドナーの状況によっては、1回の連絡で終了する場合もあります。
- 当院は、可能な限り対面での交流につながるよう支援しますが、生まれた子どもと同様に、ドナーの人生や意思も尊重し、子どもとドナー双方が安心して交流できる環境づくりに努めます。

⑤近親婚の確認
当院の非匿名提供精子による生殖補助医療で生まれた子ども、ならびに精子提供者の周辺情報開示以降に匿名提供精子による生殖補助医療で生まれた子どもは、結婚を希望する相手が同一ドナーから生まれた子どもではないかどうかを、当院へ確認することができます。
6.子どもと家族への切れ目のない支援
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①初診前の勉強会
提供精子による生殖補助医療を検討しているご夫婦が、十分な情報を得たうえで、この治療を受けるかどうか、また当院を受診するかどうかを検討できるよう、初診前に対面参加による「はじめてのAID・IVF-D勉強会(約4時間)」を開催しています。この勉強会は、情報を得て夫婦で考え、納得したうえで治療を選択するための機会です。
②当院独自のプログラム
初診後、「提供精子による家族づくりワークシート」を通して、夫婦が子どもの利益や告知、出自を知る権利について深く考える期間を設けています。
自学習では、書籍や動画による学習(インプット)と、ワークシートへの記入(アウトプット)を繰り返します。知識を得るだけでなく、自分たちの考えを言葉にして整理することで理解が深まり、夫婦としての考え方やスタンスが少しずつ形成されていきます。
③告知計画書のお手伝い
夫婦が子どもへどのような言葉で告知していくかを一緒に考え、告知計画書を作成します。治療前は心理カウンセリング、SW(ソーシャルワーカー)面談などを通して、夫婦自身の言葉で子どもへ伝えたい内容を整理します。妊娠後は、子どものドナーの周辺情報を開示したうえで、その内容も踏まえながら告知計画書を更新し、子どもが生まれたらすぐに告知を始められるよう、実際に活用できる「告知のセリフ」として仕上げます。
④絵本作成会
子どもが生まれた時から自然に告知を始められるよう、妊娠中から参加できる「絵本作成会(来場またはオンライン)」を毎年開催しています。絵本には、子どもへのメッセージや、精子ドナーについて、ご夫婦の言葉でまとめます。内容は絵本作成会の中で検討し、その後、出産して子どもの名前が決まった後に入稿してください。市販の絵本のように製本してお渡しします。

この治療で生まれた人(子ども)が、生涯にわたり自分を表現するための一冊を持ち続けられるように、2026年8月以降にご卒業(妊娠による転院の日)の方から、絵本作成会への参加を必須とします。
絵本の作成は、「子ども会」および「HARA Donor Sibling Link」の参加要件の一つです。
⑤親子会 (希望者のみ)
提供精子による生殖補助医療で生まれた子どもと家族が安心して交流できる場として、毎年「親子会(来場のみ)」を開催しています。親子会では、同じ背景をもつ家族同士が交流することで、子育てや告知についての経験を共有することができます。また、先輩パパ・ママの体験を聞くことで、将来の告知や子育てについて具体的なイメージを持つことができます。
⑥3歳と6歳の発達・家族フォロー
子どもが3歳と6歳になった時点で、発達の確認とあわせて、告知の状況や家族関係、ご家族の困りごとなどを確認するフォローを実施します。このフォローは、子どもやご家族の状況に応じて必要な支援につなげることを目的としています。
3歳と6歳の発達・家族フォローは「子ども会」および「同一ドナー出生の子ども同士の交流会」の参加要件の一つです。
⑦子ども会 (希望者のみ)
当院では、15歳以上の子どもを対象に、希望者が参加できる子ども会を2038年頃から開催する予定です。子ども会では、同じ背景をもつ子ども同士が交流することで、「自分だけではない」と感じられる機会を大切にします。また、子ども同士だからこそ話せることを共有し、将来の自分について考えるきっかけとなる場です。
一方で、子ども会参加者の出自の受け入れに大きな差が生じないよう、
- 幼少期から計画的に、繰り返し告知を受けていること
- ご夫婦が絵本作成会に参加し、子どもが「ねえ、しってる?」の絵本を持っていること
- 3歳と6歳の発達・家族フォローを受けていること
などが要件になります。
こちらは5-③同じドナーによる子ども同士のつながりとは別です。
⑧カウンセリング (希望者のみ)
子どもが18歳になるまでは、治療中の方と同じ料金で、いつでも何度でも心理カウンセリングを受けることができます。対象は、ご夫婦だけでなく、妻のみ、夫のみ、子どものみ、家族全員など、ご希望に応じて利用できます。心理カウンセリングは、困りごとがある時だけでなく、子どもや家族が自分の気持ちを言葉にし、整理するための機会としても活用できます。70分の中で、前半を夫婦、後半を子どもが利用するなど、ご家族の状況にあわせて柔軟にご利用ください。
子どもが含まれるカウンセリングは来院ではなくオンラインをご利用ください
7.当院の限界とリスク
①100年間の情報管理における限界とリスク
当院は、この治療で生まれた子が成人後にドナーと連絡を取れるよう、夫婦・子ども・ドナーの情報を100年間保管することを前提に運営しています。そのため、情報は紙資料とデジタル情報の両方で管理し、紙資料は耐火金庫で保管、デジタル情報は院内サーバーとクラウドサーバーの双方で保管しています。また、情報へのアクセスは限られたスタッフのみとし、外部のセキュリティ専門業者の監督のもと、厳重に管理しています。
しかし、地震・火災・洪水などの自然災害、戦争、パンデミック、行政命令、通信障害、その他当院が合理的に制御できない不可抗力により、情報が失われる可能性を完全になくすことはできません。
②当院が閉院するリスク
当院は公的機関ではなく、一民間医療機関です。そのため、将来的に閉院する可能性を否定することはできません。万が一閉院した場合には、夫婦・子ども・ドナーの情報を引き継ぐことができない可能性があります。そのため、本来、このような100年間にわたる情報管理は、国などの公的機関が担うべき役割です。当院は一民間医療機関として、その責任を果たすため最大限の努力を行っていますが、制度上・運営上の限界があります。
③法律が制定・施行された場合の限界
現在報道されている内容で特定生殖補助医療法が成立した場合は、当院が現在実施している取り組みは継続できなくなり、子どもの出自を知る権利を支えるための仕組みは後退します。法律が制定されれば、その内容には法的拘束力が生じるため、当院は法律に従ってガイドラインを見直さなければなりません。
| 内容 | 当院のガイドライン | 特定生殖補助医療法案 |
|---|---|---|
| 未成年で知れるドナー情報 | ドナーの身長、体重、体の特徴、血液型、趣味特技、職業、精子を提供する理由、3親等以内の病歴 | なし |
| 成人すると知れるドナー情報 | 当院仲介のもと、子はドナーと連絡(メール・電話・手紙・会う)ができる | ドナーの身長・血液型・年齢など |
| 治療時のドナー精子の選定方法 | 夫婦から生まれる可能性のある子どもの血液型にあわせたドナー精子を選定 | なし |
| ドナーの国籍 | 日本国籍を有する者(理由は13の※1参照) | マイナンバーカードを持つ者。外国人の場合は在留期間が無期限の者 |
④当院の限界とリスクを踏まえた患者説明と同意取得の実際
①・②については、より安全な選択肢として、法整備が行われ、国の管理体制が整うまで治療を待ち、将来、国の管理のもとで治療を受けることを、説明会および書面の両方で説明しています。また、治療のたびに本内容に関する同意書を提出していただいています。
それでも、法整備や国の管理体制が整う前に、一民間医療機関である当院で治療を希望する夫婦には、これらのリスクをどのように理解し、なぜ当院での治療を選択するのかを、ご自身の言葉で書類に記載していただいています。これは、患者様と当院との間で、リスクに対する認識や理解に相違がないことを慎重に確認するためです。
③については、当院が非匿名の提供精子による治療を開始した2022年当時から、将来の法令等により、現行と同じ条件で治療を継続できなくなる可能性について説明し、その都度同意を得てきました。
提供精子の選定と考え方
8.ドナーを選ばない仕組み
9.子どもが夫と似ていないことへの不安について
10.提供精子の選定方法
11.きょうだいは同じドナーになりますか?
8.ドナーを選ばない仕組み
国内の提供精子による生殖補助医療では、夫婦がドナーを選択することも、医療機関が特定のドナーを選んで治療に使用することも認められていません。
その理由の一つ目は、生まれる子どもの最善の利益を守るためです。子どもは、親や医療機関の希望にあわせて選ばれる存在ではなく、一人の人格をもつ存在として尊重されるべきであると考えられています。この考え方は、養子縁組において子どもの最善の利益が最優先される考え方とも共通しています。
理由の二つ目は、優生思想につながることを防ぐためです。学歴や能力はもちろんのこと、「夫と似ている人」のような身体的特徴であっても、それを理由にドナーを選択できるようにすると、「望ましい人」と「望ましくない人」を社会が選別することにつながります。そのため、夫婦や医療機関が特定のドナーを選んで治療に使用することはできません。
9.子どもが夫と似ていないことへの不安について
- 治療を考え始めた頃は、「夫と似ている子どもがほしい」と感じたり、子どもが夫と似ていないことに不安を抱いたりするのは、ごく自然なことです。どうぞ、その気持ちを否定しないでください。
- 夫婦の配偶子によって生まれる子どもでも、遺伝の組み合わせは膨大であり、親やきょうだいとあまり似ていないことは珍しくありません。多くの家族は、それを問題とは感じていません。
- 大切なのは、「似ている子どもがほしい」という気持ちの背景に何があるのかをご夫婦で考えることです。不妊による悲しみ・喪失感・恥・不公平感・焦りは無精子症と確定した直後には当然あるもので、それが、現時点ではまだ十分に整理できていないことも少なくありません。
- 「夫と似ている子どもがほしい」という気持ちに蓋をするのではなく、なぜそう感じるのかを言葉にしながら、「私たちはどのような家族を築いていきたいのか」を話し合ってみてください。
- 夫婦にも血のつながりはありませんが、一つの家族です。では、子どもはご夫婦の中でどのような存在なのでしょうか。社会一般の価値観ではなく、ご夫婦自身の価値観で考えてみることが、この治療を受けるうえで大切な過程だと考えています。
- ご夫婦だけで話し合うことが難しい場合は、当院の心理カウンセリングをご利用ください。また、同じ立場の方と話したい場合は、勉強会で配布した資料に記載している当事者団体へご相談いただくこともできます。

10.提供精子の選定方法
①当院の提供精子の選定方法
当院では、治療ごとに、「夫婦から生まれる可能性のある子どもの血液型」にあわせて提供精子を選定します。
②日本で夫と同じ血液型を選んできた理由
日本では長年、提供精子による治療の多くは秘密で行われてきました。そのため、子どもや第三者に知られにくいよう、ドナーと夫の血液型を一致させる方法がとられてきたと考えられています。
③医学的には血液型の選定は不要
提供精子による生殖補助医療では、ドナーの血液型を選ぶ医学的な必要はありません。血液型によって妊娠率や生まれてくる子どもの健康が変わることはなく、日本産科婦人科学会も、夫との血液型の一致を求めていません。また、出自を知る権利を保障している諸外国でも、ドナーの血液型を選ぶ習慣はありません。「将来、輸血が必要になった時に困るのでは」と心配される方もいますが、現在の輸血医療では、本人の血液型を確認したうえで安全な血液製剤を使用するため、家族の血液型が問題になることはありません。
④当院が「夫婦から生まれる可能性のある子どもの血液型」にあわせる理由
当院では、自ら子どもへ告知したいと考えるご夫婦のみを治療対象としているため、夫と同じ血液型であることに意味はないと考えています。一方で、子どもの血液型が夫婦から生まれる可能性のない血液型であった場合には、告知方針が一致していない第三者から憶測され、アウティングによって子どもが傷つくことは避けなければなりません。そのため当院では、「夫と同じ血液型」であることではなく、「夫婦から生まれる可能性のある子どもの血液型」を基準としています。
⑤具体的な選定システム
提供精子は、電子カルテに組み込まれた当院独自のシステムにより自動で選定されます。夫婦の血液型から生まれる可能性のある子どもの血液型を算定し、その条件を満たすドナーの中から、凍結胚を含めた出生児数が10人を超えないことや凍結順などの条件に基づき自動的に決定します。医療従事者が任意にドナーを選ぶことはありません。
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11.きょうだいは同じドナーになりますか?
本治療では、夫婦や医療機関がドナーを選ぶことはできないため、第二子を希望した際に、第一子と同じドナーを選ぶことはできません。ただし、IVF-Dでは1回の採卵・受精で複数の凍結胚が得られることが多く、それらの凍結胚にはすべて同じドナーの精子が使用されています。そのため、同じ採卵・受精で得られた凍結胚から第一子・第二子を出産した場合は、結果として同じドナーになります。一方、第二子治療において新たに採卵・受精を行う場合は、その都度、提供精子が自動的に選定されるため、第一子とは異なるドナーとなる可能性が高くなります。ただし、偶然同じドナーとなる可能性はあります。
当院のドナー
12.当院の精子バンクの運営体制
13.当院のドナー条件
14.ドナー登録から治療までの流れ
15.ドナーの採用率
16.ドナーの権利と情報保護
17.親族・知人が提供する精子を使用しない理由
12.当院の精子バンクの運営体制
- 当院で治療に使用する提供精子は、すべて当院が募集・採用したドナーから提供されたものです。他の国内外の精子バンクから提供精子を購入・使用することはありません。
- 提供精子の募集、採用、管理、治療への使用、出生後の情報管理までを当院で一貫して管理します。
- 当院の提供精子は、2022年からIVF-Dに限り非匿名の提供精子を使用し、2026年8月以降はすべて非匿名です。非匿名の場合は、生まれた子どもは18歳以降、当院所定の手続きを経ることで、当院仲介のもとで、ドナーと連絡ができます。
13.当院のドナー条件
| 年齢 | 20歳以上から40歳未満 |
|---|---|
| 国籍 | 日本国籍を有する者 (※1国籍の評価を目的としていません。下記参照。) |
| 身体条件 | 適正身長、適正体重であること |
| 学歴 | 専門学校・大学に在学中、または卒業していること (※2学歴や能力を評価するためではありません。下記参照。) |
| 喫煙歴 | 喫煙歴がある場合は、喫煙期間の合計が1年以内であり、過去3か月以内に喫煙していないこと |
| 犯罪歴 | 犯罪歴がなく、麻薬・覚醒剤などの使用歴がないこと |
| 精子検査 | WHO基準を満たす精液所見であること |
| 精子DNA | 精子DNA断片化率(DFI)が正常範囲であること |
| 感染症 | B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒、クラミジアがすべて陰性で、既往歴がないこと。また、これらを6か月ごとに継続して検査すること。過去6か月以内に刺青(アートメイクを含む)をしていないこと |
| 遺伝リスク | 50歳未満で病気により亡くなった3親等以内の血族が2名以下であること。本人および3親等以内の家族歴から、特定の遺伝性疾患、先天性疾患、指定難病が認められないこと。染色体検査で正常核型であり、転座などの構造異常が認められないこと |
| 倫理観 | 生命倫理を理解し、精子提供について自らの考えを持ち、社会的責任を果たせること |
| 精神面 | 精神疾患の既往がなく、心理検査(MMPI-3)で問題が認められないこと |
| その他 | 原則として、他の精子バンクで精子を凍結していないこと。ただし、他の精子バンクでの凍結が2バイアル以下の場合は可とする |
※1 理由:これは、生まれた子どものアイデンティティ形成への配慮によるものです。提供精子による治療で生まれた子どもは、「自分は何者なのか」「自分のルーツはどこにあるのか」と考えることがあります。当院では、そのような時期に、自分のルーツの一つである国籍については明確であることが、子どもの安心につながると考えています。そのため、当院で治療を受ける夫婦の大部分が日本国籍を有する者であることを踏まえ、ドナーについても日本国籍を有する者としています。これは、特定の国を優劣で判断したり、外国籍の方を排除したりする趣旨は一切なく、子どもの利益を最優先に検討した結果です。
※2 理由:これは、学歴や能力を評価するためではありません。第三者の提供精子による治療で生まれた子どもは、ドナーについて知ることのできる情報が限られています。そのため当院では、子どもが将来、自分の可能性や進学・就職などについて考える際の支えとなる情報を少しでも残したいと考えています。その一つとして、ドナーが「専門学校や大学等で学んだ経験がある」という事実を子どもへ伝えられるよう、この条件を設けています。子どもが将来、自分の進路や挑戦について考えたとき、その事実が前向きに挑戦する気持ちや、支えになればと考えています。これは、特定の属性を優遇・排除したり、人の価値を評価したりすることを目的としたものではありません。
14.ドナー登録から治療までの流れ
- 説明・質疑対応
- 各種検査(感染症検査、精液検査、染色体検査、心理検査など)
- 医師による面談
- ドナー本人が登録を希望した場合に契約書を提出
- 採用結果の通知
- ドナー本人の任意のタイミングで精子を提供し、凍結保存される
- 6か月以上凍結保存し、感染症の潜伏期間を経た後、ドナー本人が感染症検査を再度受ける
- 再検査が陰性であることを確認後、患者の治療に使用
15.ドナーの採用率
当院では、13章に記載したすべての条件を満たした方のみをドナーとして採用しています。多くの項目を総合的に確認するため、ドナー採用に至るのは応募者全体の約3割です(2022~2024年実績)。
16.ドナーの権利と情報保護
- ドナーは、登録後であっても、精子を提供するかどうかを自由な意思で決めることができます。
- 提供した精子は、治療に使用される前であれば、いつでも提供を取り消すことができます。
- 当院では、1人のドナーから生まれる子どもの人数を最大10人までとしています。
- 当院は、ドナーの氏名や住所など、個人を特定できる情報を、当院から生まれた子どもやその家族へ開示することはありません(9を除く)。
- 当院は、法律上の夫婦のみを対象として提供精子による生殖補助医療を実施しています。生まれた子どもの法律上の親子関係は治療を受けた夫婦との間に成立し、ドナーが親権、扶養義務、相続などの権利や義務を負うことはありません。
- ドナーに不利益が生じないよう、治療を実施するたびに夫婦双方から同意を取得するとともに、夫についてはeKYCによる本人確認を毎回実施しています。
- ドナーは、自分が提供した精子により子どもが生まれた場合、その事実について当院から連絡を受けることができます。ただし、生まれた子どもやその家族に関する情報を知ることはできません。
- 非匿名ドナーから生まれた子どもが18歳以上となり、連絡を希望した場合は、当院が仲介し、契約に基づき1回以上の連絡を行います。双方の信頼関係が築かれた場合は、お互いの同意のもとで交流を継続します。
- ドナーが、当院から実施する連絡に応じない場合、連絡が取れない場合、または死亡している場合は、契約に基づき、子どもに対してドナーの氏名、生年月日、精子提供時の住所(市区町村まで)を開示します(4の例外)。
- 近親婚を防止するため、ドナーとドナーの配偶者との間に生まれた子どもが結婚する際には、その結婚相手がドナーが提供した精子から生まれた子かどうかについて当院へ確認することができます。
17.親族・知人が提供する精子を使用しない理由
当院では現在、親族・きょうだい・知人など、提供者と被提供者が既知の関係にある精子提供による生殖補助医療は実施していません。既知提供では、家族関係の複雑化や提供の強要など、当事者や家族への心理的・社会的な影響が生じる可能性があります。また、生まれる子どもにとっても、出自に関する葛藤が深まる可能性があります。当院では、これらの課題に対応する十分な支援体制を整えていないため、現時点では実施していません。

治療を受けるための条件
18.夫婦の基本的条件
以下の夫婦の基本条件5つをすべて満たす場合が本治療の対象です。
夫婦の条件1.法律婚であること
法的に婚姻していることを、各国の公的機関が発行する、現在の法律上の夫婦関係を証明する公的書類(日本国籍の場合:戸籍謄本)により確認できる夫婦であること。婚姻届を受理した事実のみを証明する書類など、現在の法律上の夫婦関係を確認できない書類は、本要件を満たしません。外国籍の方を含む夫婦は、それぞれの本国が発行する、現在の法律上の夫婦関係を証明する公的書類をご提出いただきます。※事実婚、同性カップル、選択的シングルマザーについては対象ではありません。
(理由)妻が夫の同意を得て、夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子は、法律上、夫婦の嫡出子として扱われます。一方、事実婚、同性カップルおよび選択的シングルマザーは、日本法上、この制度の対象ではありません。そのため当院では、子どもの福祉およびドナーの権利を守るため、法律婚の夫婦を対象としています。
夫婦の条件2.年齢条件に合致していること
年齢の条件は以下のとおりです。夫婦のいずれかが年齢上限に達した時点で治療は終了します。
| 基準日 | 女性 | 男性 |
|---|---|---|
| 初診来院日 | 41歳まで | 47歳まで |
| 初回AID実施日 | 42歳まで | 48歳まで |
| 初回IVF-D採卵日 | ||
| 最終治療可能日 | 44歳まで | 50歳まで |
ただし、ガイドライン第5版改定時の移行措置として、2023年8月31日までに倫理委員会申請書類を当院へ提出済みまたは倫理委員会の承認を受けた夫婦については2026年12月31日まで男性の年齢制限を適用しません。
(理由)提供精子による生殖補助医療は、精子の提供を受けなければ子どもを授かれない場合に限って実施される治療であり、妻に加齢要因がないことが前提となります。また、特別養子縁組同様に、「子どもとの年齢差は40歳以下が望ましい」とされています。これは、出自について継続的に伝え、子どもの成長に寄り添える身体的・精神的な余力が求められるためです。
夫婦の条件3.日本法に基づく法的親子関係を確認できること
- 夫婦両方とも日本国籍の場合:子の出生から3か月以内に、子が記載された戸籍謄本を提出できること
- 夫婦の一方が日本国籍の場合:日本国籍を有する配偶者の戸籍に子が記載され、子の出生から3か月以内に戸籍謄本を提出できる場合は、本要件を満たします。
- 夫婦の双方が外国籍の場合:日本の戸籍により子と夫婦との法的親子関係を確認することができないため、本要件を満たしません。
(理由)国によっては、提供精子による治療で出生した子を治療を受けた夫婦の子とし、ドナーを法的父親としないことを法律で明確に定めている場合があります。一方、日本では、夫の同意を得た提供精子治療で出生した子を夫婦の嫡出子として扱う制度はありますが、ドナーを法的父親としないことを明確に定めた法律はありません。そのため当院では、出生後に子が治療を受けた法律婚の夫婦の子として日本の戸籍に記載されていることを確認することで、日本法に基づく法的親子関係を確認し、子とドナーとの法的親子関係をめぐる将来の紛争を予防しています。外国籍の夫婦については、本国法や居住国法が関係し、国ごとに制度や公的書類の意味が異なります。仮に日本より明確な制度がある国であっても、当院は一医療機関として、各国の法律、判例、行政実務、将来の国籍変更などによる影響まで確認することはできません。そのため当院では、国籍によって治療対象を区別するのではなく、日本法に基づいて法的親子関係を確認できることを条件としています。これは、法的に立場が弱くなり得るドナーを守り、子どもの出自を知る権利を可能な範囲で支え、将来の法的紛争を回避するためです。
夫婦の条件4.夫婦が一緒に生活し、一緒に子育てができる環境にあること
- 夫・妻それぞれについて、「住民票の住所」「実際に生活している住所」「当院カルテ登録住所」の3つが一致していること
- 夫婦が1年のうち8か月以上、同じ場所で生活していること。1年のうち4か月以上、夫婦が別々に生活している場合は、「夫婦生活・養育環境計
- 画書」をご提出いただきます。倫理委員会にて、妊娠後の夫婦の生活拠点や子どもの養育体制などを確認し、子どもの福祉に影響がないと判断した場合は治療を受けることができます。
(理由)本治療は、血縁がなくても、一緒に生活し、一緒に子育てをすることによって家族になっていくことが重要な家族形成の方法です。これは、養子縁組において、血縁ではなく養育を通じて家族を形成していく考え方とも共通しています。また、治療中だけでなく、妊娠後・出生後も本人確認や法的な確認が必要となる場合があります。そのため、夫婦・子ども・ドナーに関する情報を適切に管理するためには、住民票の住所、実際に生活している住所および当院カルテ登録住所が一致している必要があります。一方で、仕事や介護、転勤などにより、夫婦が別々に生活しなければならない事情が生じることもあります。そのため、そのような場合は妊娠後の生活拠点や子どもの養育体制などを個別に確認し、子どもの権利と福祉に影響がないかを倫理委員会で審査します。
夫婦の条件5.第三者の提供精子を受けなければ妊娠の可能性がない医学的理由があること
次の(1)~(3)は、本治療の対象として検討されます。
(1)無精子症の場合
次のいずれかに該当し、第三者の提供精子以外に妊娠の可能性がないと泌尿器科医が判断し、その医学的根拠が「提供精子による生殖補助医療 医療情報提供書」に記載されている場合、当院倫理委員会が対象となるかを審査します。
- TESEまたはMD-TESEを実施しても精子が回収されず、再度実施しても精子回収の可能性が極めて低いと泌尿器科医が判断する場合
- 精子形成障害の要因となる染色体異常、Y染色体微小欠失、抗がん剤治療後など、医学的所見からTESEまたはMD-TESEを実施しても精子回収の可能性が極めて低いと泌尿器科医が判断する場合
- その他、医学的根拠に基づき、第三者の提供精子以外に妊娠の可能性がないと泌尿器科医が判断する場合
(2)精子に受精能力が認められない場合
次のすべてを満たし、その医学的根拠が「提供精子による生殖補助医療 医療情報提供書」に記載されている場合、当院倫理委員会が対象となるかを審査します。
- 夫婦の配偶子による顕微授精を5回以上実施していること
- 直近5回の顕微授精のうち3回以上で卵子活性化処理を実施していること
- 卵子活性化処理を行っても受精・分割が認められないこと
- 妻側に原因がないことを産婦人科医が診断し、第三者の提供精子以外に妊娠の可能性がないことを泌尿器科医が判断し、その医学的根拠が「提供精子による生殖補助医療 医療情報提供書」に記載されていること
(3)戸籍上の性別を女性から男性へ変更した方(トランスジェンダー男性)
変更前の性別が記載されている戸籍謄本により確認し、本治療の対象となるかを当院倫理委員会が審査します。
(理由)第三者の提供精子による生殖補助医療は、本治療以外の方法では妊娠の可能性がない場合に限って実施される治療です。日本産科婦人科学会は、女性側に明らかな不妊原因がない、または治療可能であることを前提としたうえで、無精子症を対象とし、他の治療法で妊娠可能な症例に安易に本治療を実施すべきではないとしています。そのため当院では、第三者の提供精子以外に妊娠の可能性がないことを医学的に確認できる場合のみ本治療の対象としています。
19.治療実施の条件
以下の治療の条件4つすべて満たす場合が本治療の対象です。
実施の条件1.当院の倫理委員会にて提供精子による生殖補助医療を実施する承認を得られた夫婦
(理由)当院では、提供精子による生殖補助医療を実施するかどうかは、法律上・医学上の条件を満たしていることだけでは判断しません。第三者の提供精子による生殖補助医療は、治療を受ける夫婦だけでなく、生まれてくる子どもやドナーにも長期にわたり影響を及ぼす医療です。そのため、当院は子どもの利益を最優先に考え、夫婦の理解や準備状況、告知への考え方、家族として子どもを迎える体制などを総合的に確認したうえで、倫理委員会が実施の可否を審査しています。
実施の条件2.夫は、最新の情報に更新された運転免許証またはマイナンバーカードを有し、AID実施時およびIVF-D胚移植時に、実施日前日の日本時間20時頃から実施日当日の9時までの間に送信されるメールから、eKYC(オンライン本人確認)を実施できること
※ 夫が海外に滞在している場合も、海外からeKYCを実施できる可能性はあります。ただし、メーカーによる海外での動作保証はありません。正常に本人確認が完了しなかった場合は、治療を実施することはできません。
(理由)提供精子による生殖補助医療は、夫の同意を得て実施された場合にのみ、出生した子が法律上、夫婦の嫡出子として扱われる制度のもとで行われます。一方で、同意書が偽造されるなどして、夫の同意なく治療が実施された場合には、ドナーと子どもとの法的親子関係が生じる可能性があり、子どもやドナーの権利に重大な影響を及ぼすおそれがあります。一方で夫に毎回ご来院いただく負担を軽減するために、来院ではなく、オンラインによる確認を行っています。

実施の条件3.女性は治療開始時および治療期間中を通じてBMI30未満であること
(理由)女性のBMIを30未満とするのは、妊娠中および産後の母体合併症や周産期リスクを低減し、母体と子どもの安全を確保するためです。この基準は、第三者の提供精子による生殖補助医療に限らず、当院で実施する不妊治療全般に共通する基準です。
実施の条件4.夫婦は、既往歴および治療中に新たに判明した疾患について、速やかに当院へ申告すること。夫の既往歴や治療開始後に生じた疾患についても同様
(理由)妻については治療方針や妊娠・出産への影響を適切に判断するため、夫については第三者の提供精子による生殖補助医療において、生まれてくる子どもの利益を最優先に考え、その後の養育環境に影響を及ぼす可能性がある健康状態についても把握するためです。
子どもの福祉の条件
20.子どもの福祉に関する条件
21.トランス男性とシス女性の追加条件
20.子どもの福祉に関する条件

この4つの条件については、初診後、当院独自のプログラムの中で、夫婦で一つずつ学び、
考え、話し合いながら取り組んでいただきます。
福祉の条件1.無精子症または性別違和を受容している夫婦であること
- 無精子症または性別違和により、夫の精子による子どもを授かれないという現実に伴う怒り、悲しみ、喪失感、恥、不公平感、焦りなどの感情について、夫婦それぞれが自分の気持ちを十分に言葉として表出し、その感情を整理する過程を経験し終えていること
- 現在は、無精子症または性別違和について、夫婦がお互いに現実として受け入れ、自然に話し合える状態であること
(理由)第三者の提供精子による生殖補助医療では、無精子症や性別違和により、夫の精子による子どもを授かれないという現実を受け止めていることが、ご夫婦自身の心を守るためだけでなく、生まれてくる子どもやドナーの権利を守るためにも重要な前提です。受容とは、悲しみや怒りなどの感情がないことではなく、その感情を認め、言葉にしながら整理した先にあります。受容が十分でないまま治療を開始すると、長い年月を経て夫婦や子どもに影響を及ぼすことがあるため、子どもの福祉を守るための条件としています。

不妊の受容は、夫婦だけで抱え込む必要はありません。「心理カウンセリング」は当院受診前から利用可能で、対面とオンラインがあります。また、同じ立場の方が集まる当事者団体へ相談する方法もあります。AID・IVF-D勉強会の配布資料をご確認ください。
福祉の条件2.第三者の提供精子によって子どもを授かり、家族になることを肯定的に受容している夫婦であること
- 第三者の精子が妻の体に入り、その精子と妻の卵子が受精して子どもができることについて、最初は嫌悪感、抵抗感、戸惑いなどを抱くことは自然なことです。そのうえで、自分は何に対してその感情を抱いているのかを夫婦で言葉にし、その気持ちを十分に整理していること。
- 当院のドナー採用基準や管理体制についてガイドラインを読み理解したうえで、「ドナーの精子によって子どもを授かりたい」と夫婦で納得できていること。
- 「他に方法がないから仕方なく選んだ治療」ではなく、「夫婦で何周も話し合った結果、この方法で子どもを迎えたい」と心から思えていること。
- 「ドナーが少しでも夫に似ていてほしい」という気持ちが十分に整理されていること。※9.子どもが夫と似ていないことへの不安についてを参照
- ドナーは、子どもにとって自分のルーツであり、子どもが知る権利のある大切な存在であると考え、子どもから聞かれるのを待つのではなく、まだ言葉がわからない幼少期のうちから自分たちの言葉で伝えていきたいと思えていること。
- 「本当は夫(自分)の精子で子どもを授かりたかった」という気持ちを否定することなく、それでも子どもの福祉を最優先に考えてこの治療を選択し、将来「第三者の提供精子によって家族になれてよかった」と思える家族を築いていきたいと考えていること。
(理由)本治療は、夫婦が知らない男性の提供精子によって子どもを授かり、家族になることを肯定的に受容していることが、子どもの福祉を守るための重要な前提です。「仕方なく選んだ治療」「子どもができれば無精子のことは考えなくて済む」という思いで家族を形成すると、その気持ちは日常の言葉や態度に表れ、子どもの出自に向き合うことができず、ドナーや子どもの出自について話すことが家族の中でタブーとなる可能性があります。

福祉の条件3.出自を知ることは子どもの基本的な権利であり、それを守るためには、子どもが生まれてすぐから始める「子どものための安全な告知」が重要であると自ら考えている夫婦
- この治療を選択したのは夫婦であり、子どもではありません。子どもにとって、第三者の提供精子によって生まれたという事実は、自分という存在の根底にある大切な出自です。だからこそ、その出自を知ることは子どもの基本的な権利であると考えている夫婦であること。
- 当院は、「子どものための安全な告知」を目指しています。これは、子どもが生まれてすぐから、愛情を伝える親子のコミュニケーションの中で繰り返し告知を行い、子ども自身が成長にあわせて自然に出自を理解し、アイデンティティを形成していくことを目指すものです。子どもが言葉を理解できる年齢まで告知をせず、その時がきたら理解させるという告知方法とは異なることを理解し、子どものための安全な告知を実践したいと考えていること。
- 子どもが3~4歳頃には出自について一定の理解を持ち、6歳頃までには提供精子によって生まれたことを自然に理解できることを目安として、子どもの成長にあわせて告知を進めていきたいと考えていること。※定型発達ではない子どもの場合は、この限りではありません。
(理由)子どもが言葉を理解できるようになるまで待ってから告知をすると、その頃には子どもは「親とは血がつながっているもの」という固定概念を自然に身につけている可能性があります。その後に「父親とは血がつながっていない」と伝えることは、それまで当たり前だと思っていた家族の形が否定される体験となり、子どもに大きな衝撃を与えることがあります。当院は、子どもが固定概念を持つ前に、我が家だけの当たり前を知って育ってほしいと考えています。そのため、告知とは子どもに理解させることではなく、愛情を伝える親子のコミュニケーションの中にあると考えています

福祉の条件4.子どもが安心して出自を受け入れられる生育環境を整えている夫婦であること
- 子どもが「自分は隠される存在」「自分の存在が否定されている」と感じることがないように、身近な家族には子どもの出自をオープンにできる生育環境を整えることができる夫婦であること。
- 子どもにとって身近な家族(最低限、夫婦双方の両親)が、「夫婦が第三者の提供精子によって子どもを授かること」と「子どもが生まれてすぐから告知をしながら育てること」のの2点について理解・同意し、応援してもらえることを口頭で確認していること。

親にどう話せばよいかわからない方へ
- 初診日にお渡しする「提供精子による家族づくりワークシート」に沿って、「福祉の条件1」から順番に夫婦で学び、考え、話し合っていくことで、ご夫婦の考えが整理され、自分たちの言葉で伝えられるようになっていきます。そのタイミングで親へお話しすることをおすすめしています。
- 心理カウンセリングでは、親への伝え方を一緒に考えたり、実際に話す練習をしたりすることもできます。
- 夫婦にとって身近で大切な家族に、第三者の提供精子によって子どもを持つことや、生まれてすぐから告知しながら育てることへの理解を求めることは、ご夫婦にとって最初の告知の実践でもあります。その経験は、子どもが生まれた後に告知しながら育てていくための大切な第一歩になります。
- 親に話したものの理解を得られなかった場合や、事情により身近な家族の理解や同意が得られない場合は、そのことが告知をしない理由や、告知を先延ばしにする理由とならない方法を夫婦で話し合い、倫理委員会前カウンセリングで臨床心理士へお伝えください。
21.トランス男性とシス女性の追加条件
トランスジェンダー男性とシスジェンダー女性のご夫婦(以下、当該夫婦)については、前述の「20.子どもの福祉に関する条件」に加え、本項に定める条件も適用されます。
①治療を実施する医療機関として、当院が配慮すべき子どもの出自を知る権利は、「提供精子による出自」の部分です。そのため、提供精子で生まれたことを告知することは当然必要なことだと考える夫婦を治療の対象とします。
②なぜ夫に精子がないのかについては、がんなどの病気、事故、先天的な要因、トランスジェンダーなど、様々な理由があります。これは夫本人の物語であり、「誰に話すか」「話さないか」「いつ話すか」を決める権利は夫自身にあります。
提供精子による出自について、子どものための安全な告知ができていれば、子どもが後から夫の事情を知った場合でも、子どものアイデンティティが崩壊するという事態にまで至る可能性は低いと考えています。なお、どの家族にもそれぞれの事情があり、その事情について子どもにどこまで知る権利があるのかを、当院は判断する立場にありません。
③子どもは、なぜ父親に精子がないのかを知りたがるかもしれません。また、物心がついてから知ることで衝撃を受けるかもしれません。このような可能性が少なからずあることを踏まえ、当院は、夫本人が子どもに安全にカミングアウトできる支援が重要と考えています。ただし、当院がカミングアウトを強制することは決してありません。
④夫がトランスジェンダーであることについて、当面の間、子どもにカミングアウトしない場合は、それを子どもに知られることを避けるために、提供精子について「子どもに告知しない」、あるいは、「告知を先送りする」ことにならないような告知計画を具体的に考えてください。
⑤入浴やプールの着替えなど、日常生活の中で、父親の外性器の形について子どもが疑問を持つ可能性があります。そのような場面では子どもに対してどのように対応するのか、夫婦は具体的な方法の検討が必要です。
⑥子どもへのカミングアウトをしない場合、または将来的にカミングアウトを行う場合、その期間における父親と子どもの触れ合いにおいて、真実を知られることへの不安から子どもとの関係が疎遠にならないよう、夫婦の具体的な行動指針の検討が必要です。
子育てをしているトランスジェンダー男性とシス女性のご夫婦から、子どもにトランスジェンダーであることを知られずに子育てすることは不可能に近いという体験談を伺っています。「言わなければ知られない」「子どもは気付かないだろう」という考えは、実際には楽観的かもしれません。
⑦将来、子どもへカミングアウトする場合の伝え方について、カウンセリングにて確認し支援します。
子育てをしているトランスジェンダー男性とシス女性のご夫婦から、子どもにトランスジェンダーであることを知られずに子育てすることは不可能に近いという体験談を伺っています。「言わなければ知られない」「子どもは気付かないだろう」という考えは、実際には楽観的かもしれません。
当院では1997年より提供精子による生殖補助医療を行ってきましたが、当該夫婦への治療提供を開始したのは2022年1月からです。この時点では、トランス男性とシス女性を対象とした生殖補助医療に関する国内の先行研究がなかったため、まずは診療実績を積み重ねたうえで、2024年より方針の策定に着手しました。
同年末にはパブリックコメントを実施しました。トランス男性、トランス男性の妻を含む当事者の方々から、貴重なご意見や経験が寄せられています。これから治療を始めるご夫婦にとっても非常に参考になる内容です。ぜひこちらの「4.改定案へのご意見の集計と公表」をご覧ください。

治療の流れ
22.勉強会から倫理委員会の審査までの流れ
23.倫理委員会承認後の治療の流れ
24.妊娠・出産後の流れ
25.第二子(第三子※)の治療再開について
22.勉強会から倫理委員会の審査までの流れ(手順1から7)
以下の順番で、1つずつ完了させて進めてください。
手順1.AID・IVF-D勉強会に参加する
- 当院ホームページのご案内からPeatixのサイトに遷移し、勉強会を申し込む
- 治療を希望する場合は、「提供精子における生殖補助医療の初診登録」を行う
- 初診登録後に自動配信されるメールを確認し、必要書類を準備する
- 必要書類を当院へ郵送にて提出する
手順2.初診予約をとる
必要書類の提出後、当院より初診登録時のメールアドレス宛に初診予約のご案内をお送りします。ご案内に従って初診予約をお取りください
手順3.初診に夫婦一緒に来院する (所要時間3時間程度)
- 持ち物:婚姻関係申告書、夫婦それぞれのマイナ保険証、夫婦双方の心理カウンセリング同意書、お持ちの場合は国内の他院で過去1年以内に実施した検査結果(施設名・検査日・氏名の記載あり)
- 初診日に実施すること:ご説明、医師の問診、検査、提供精子による家族づくりワークシートのお渡し
手順4.提供精子による家族づくりワークシートに取り組む (夫婦での自学習)
- 「提供精子による家族づくりワークシート」が完成したら、「提供精子による生殖補助医療の同意書」と一緒に当院へ郵送にて提出する
- 倫理委員会申請前カウンセリングを予約する
カウンセリングは予約が混み合います。ワークシートの完成が見えてきた時点で、事前に予約することができます。ただし、ワークシートはカウンセリング実施日の3日前までに当院必着です
手順5.倫理委員会申請前カウンセリングを完了する (対面またはオンライン)
- 夫婦の状況に応じて、カウンセリングは1回で完了する場合もあれば、2回以上必要となる場合もあります。「カウンセリングの完了」は臨床心理士からお伝えします。
- 本カウンセリングの内容は、臨床心理士が報告書としてまとめ、倫理委員会へ提出します
手順6.非匿名AID・IVF-D説明会に夫婦で参加する (オンライン・所要時間2時間30分程度)
- 倫理委員会申請前カウンセリングが完了したら、非匿名AID・IVF-D説明会を予約する
- 説明会に参加し、治療を進める場合は、非匿名AID・IVF-D希望者リストへ登録する
- 登録後に自動配信されるメールを確認し、審査書類を準備する
- 説明会でご案内するスケジュールに沿って、審査書類を提出し、SW(ソーシャルワーカー)面談を受ける
- 告知計画書を提出する
手順7.当院にて倫理委員会の審査を行う
- 6-⑤告知計画書の提出後、21日以内に倫理委員会を開催します
- 審査結果は、メールまたは文書でお知らせします。承認された場合は治療を開始できます。非承認の場合は、当院での提供精子による生殖補助医療は開始できません
(1)有効期限
- 1.勉強会~3.初診来院までの有効期限は2年間です。過ぎた場合は、勉強会から改めてご参加ください
- 3.初診来院~5.倫理委員会申請前 カウンセリング完了までの有効期限は2年間です。過ぎた場合は、勉強会から改めてご参加ください
- 6.非匿名AID・IVF-D説明会~7.倫理委員会申請までは説明会でご案内するスケジュールの期限に沿って進めてください。期限を過ぎた場合は、非匿名AID・IVF-D説明会から改めてご参加ください
(2)実施日・予約方法
- 1.AID・IVF-D勉強会は、原則、偶数月の第三木曜日に開催します。ホームページからご予約ください
- 4-②倫理委員会申請目カウンセリングは、アプリの「心理カウンセリング」→「倫理委員会申請前カウンセリング」を予約
- 6.非匿名AID・IVF-D説明会は、原則、偶数月の第一土曜日に開催します。アプリからご予約ください
(3)所要期間の目安
- 手順1~4は、ご夫婦のペースで進めていただけます。
- 手順6~7は、平均2~3か月かかります。
23.倫理委員会承認後の治療の流れ(手順8から9)
手順8.非匿名AID・IVF-D前個別説明を完了する (来院のみ・培養士が対応)
非匿名ドナー精子の使用契約を行うため、倫理委員会の承認通知から3か月以内に、ご夫婦でご来院ください。また、人工授精や体外受精に関するご質問は、この機会に培養士へご相談いただけます
持ち物
- IVF-Dで、卵巣刺激開始からLHサージまでを他の医療機関で実施する場合は「IVF-D他院実施希望申請書」をお持ちください
- AIDで、排卵日特定などを他院で実施する場合は「AID他院実施希望申請書」をお持ちください
実施する医療機関あての紹介状を作成します
手順9.非匿名AID・IVF-Dを開始する
治療スケジュールは、倫理委員会の承認通知メールに記載しています。内容をご確認のうえ、ご希望の治療・検査をご予約ください。
(1)有効期限
- 8.非匿名AID・IVF-D前個別説明~9.非匿名AID・IVF-Dを開始するの有効期限は3か月です。事前に手続きをせずに期限が過ぎた場合、治療は終了します。27.IVF-D3か月ルールをご確認ください。AIDは個別説明~AID開始のみ3か月以内の期限があります。
- 9.非匿名AID・IVF-Dを開始以降は、AID・IVF-D開始後、出産以外の理由により、連続して2年以上治療を休止した場合は、勉強会から改めてご参加ください
(理由)治療が連続して2年以上休止した場合、その間にガイドラインや治療内容が変更されている可能性があります。また、本治療では、子どもの福祉を最優先に考え続けることが重要です。そのため当院では、勉強会から改めてご参加いただき、最新の情報と夫婦の考え方を更新していただいています。
(2)実施日・予約方法
(3)非匿名AID・IVF-Dについて
8.非匿名AID・IVF-D前個別説明は、アプリの「相談」→非匿名AID・IVF-D前個別説明(培養士)を予約
(4)匿名AIDを実施しているご夫婦へ
2026年7月31日までに匿名AIDについて倫理委員会の承認を受けている夫婦は、匿名提供精子のストックがある限り、2026年8月以降も匿名AIDを継続できます。
①非匿名AID・IVF-Dへ移行する場合:非匿名AID・IVF-Dをご希望の場合は、「非匿名AID・IVF-D説明会」にご参加ください。その後の流れは、「22.勉強会から倫理委員会審査までの流れ」の手順6以降と同様です。なお、非匿名AID・IVF-D説明会に参加し、非匿名AID・IVF-D希望者リストへ登録してから、倫理委員会の審査結果が通知されるまでの間も、匿名AIDを実施することができます。
②上記①の移行期間中に匿名AIDで妊娠した場合
- 非匿名AID・IVF-D前審査を最後まで完了する
審査の最終段階である「非匿名AID・IVF-D前個別説明(培養士)」まで完了した場合は、妊娠中に限り、3か月ルールの有効期限を1年間延長します。そのため、万が一、流産・死産となった場合でも、速やかに非匿名AID・IVF-Dへ進むことができます。一方、無事に出産された場合は、次の治療まで1年以上空くため、承認を受けていても有効期限が切れます。その場合は、改めて、非匿名AID・IVF-D説明会への参加および倫理委員会の審査が必要となります。 - 非匿名AID・IVF-D前審査を途中で終わりにする
妊娠が判明した時点で、ご夫婦の希望によりIVF-D前審査を終了することもできます。
24.妊娠・出産後の流れ(手順10から16)
子どもの福祉に直結する大事な手順です。
手順10.妊娠。当院を卒業し分娩施設へ転院する
当院を卒業する日に「ご卒業の方へ」というご案内をお渡ししますので、内容に沿って進めてください
- 妊娠13週頃までに、指定の動画をご夫婦で視聴し、指定フォームへ入力してください
- フォームに入力いただいた希望日をもとに、当院で妊娠後SW面談の日程を調整し、ご連絡します
- 妊娠20週頃までに、妊娠後SW面談を実施します
手順11.妊娠20週頃までに、妊娠後SW(ソーシャルワーカー)面談を完了する (オンライン1時間)
妊娠後SW面談の内容
- 子どものドナー周辺情報とドナーの3親等以内の病歴を開示します
- ドナー情報を踏まえ、子どもへの告知内容をより具体的に考えるお手伝いをします
- 妊娠中や出産後の告知に関する不安や心配ごとについてもご相談いただけます
手順12.当院から郵送するドナー情報をデジタルデータとして保管する
- 妊娠後SW面談の実施から1か月以内に、面談で口頭開示した「精子提供者の周辺情報」と「3親等以内の病歴」の書類を郵送します
- 資料は、ドナー本人が記入した直筆書類のコピーです。この治療で生まれた子どもにとって、ドナー本人に直接つながるものは限られているため、ドナーの筆跡は、ドナーを身近に感じられる大切な情報の一つです
- コピーは長期間の保管により薄くなり、筆跡が判読しづらくなる可能性があります。そのため、お手元に届きましたら、できるだけ早い時期にコンビニなどの複合機を使用して、高解像度のスキャンデータを作成し、大切に保管してください
手順13.出産・流産・死産・中絶から1か月以内にホームページ上の専用フォームにて報告する
当院ホームページの「お問い合わせ」の「お問い合わせ一覧」の中にある、【出産・流産報告】フォームよりご報告ください。本治療の実施結果は、日本産科婦人科学会への報告が義務付けられています
- 出産された場合は、生後28日の状態まで確認してからのご入力となるため、生後29日目以降から1か月以内にフォームに入力してください
- ご流産・死産・中絶の場合は、1か月以内の入力をお願いします
手順14.出産から3か月以内に戸籍謄本を提出する
- 子どもの誕生日から3か月以内(当院必着)に、子どもが記載された戸籍謄本を、配達記録が残る方法で当院へお送りください
- この戸籍謄本は、日本法に基づく法的親子関係を確認し、子どもとドナー双方の権利を守るために必要な書類です。※18.夫婦の条件3参照
- なお、提出期限を1日でも過ぎた場合は、患者様と当院との契約、およびドナーと当院との契約に違反することとなります。非匿名の提供精子をご使用の場合は、ドナーの権利を保護するため、当該ドナーは匿名提供へ切り替えます
手順15.絵本作成会に参加する
年1回、来場とオンラインのハイブリッド開催です。開催時期は決まり次第メール配信とホームページにてお知らせします。※6-④絵本作成会参照
手順16.3歳と6歳の発達・家族フォローのための調査票を提出する
子どもが3歳になる年と6歳になる年の2回、日本で広く使用されている発達評価法を用いて、子どもの発達に関する調査を行います。
- 対象となる夫婦は、当院が指定するフォームへ入力してください。入力内容を確認したうえで、当院から必要な調査書類をご自宅へ郵送します。書類が届きましたら、指定された期日までにご提出ください。
- この調査では、子どもの発達に加えて、子どもへの告知の状況、家族関係、ご家族の困りごとなども確認します。※6.⑥3歳と6歳の発達・家族フォロー参照
(理由)この調査は、提供精子による生殖補助医療の安全性を継続的に確認するために行います。提供精子により生まれた子どもの発達を確認し、夫の配偶子により生まれた子どもとの比較を含めて検討する必要があるためです。また、告知の状況や家族関係を確認することで、子どもと家族に必要な支援につなげるとともに、本治療に関する調査にも役立てます。
そのほか、ご希望により参加できること
- 親子会(年1回、来場での開催)。開催時期は決まり次第メール配信とホームページでお知らせします
- 心理カウンセリング(いつでも・対面またはオンライン)
25.第二子(第三子※)の治療再開について
①次の子どもの治療を再開するための条件
- 前回の出産から1年以上経過していること:当院では、不妊治療に要する期間も考慮し、前回のご出産から次の子どもの妊娠を目的としたAIDまたはIVF-D胚移植まで、1年以上の間隔をあけていただいています。WHOでは、母体の回復と次の妊娠・出産の安全性を考慮し、出産から次の妊娠まで24か月程度あけることを推奨しています。
- 授乳を終えていること:授乳中は、不妊治療で使用する一部の薬剤を使用できません。また、授乳中に分泌される「プロラクチン」というホルモンは、排卵に必要なホルモン(GnRHやLH)の分泌を抑えるため、治療に影響することがあります。そのため、断乳または卒乳を終えてから治療を再開します。
- 月経が再開し、2周期以上経過していること:治療を安全に再開するためには、ホルモン分泌が安定していることを確認する必要があります。その目安として、月経が再開し、2周期以上経過していることを条件としています。なお、授乳を終えて2か月以上経過しても月経が再開しない場合は、状態を確認するため診察をご予約ください。
- ガイドラインが順守されている状態であること
当院のAID・IVF-Dによって生まれる子どもの人数は夫婦につき2人までですが、子どもが未就学のうちに亡くなった場合は、その子は治療可能な子どもの上限には含めませんので第三子以降の治療が可能な場合があります。
②出産後の治療再開において最初にすること
当院へ電話する
出産後にAID・IVF-Dの治療を再開する場合は、必ずお電話にてご連絡ください。
- 妊娠から出産後までの手続きが、ガイドラインに沿って行われているかを確認します
- 治療再開に必要な書類や、ご来院についてご案内します
治療再開時にご提出いただく書類
- 3か月以内に発行された戸籍謄本と、3か月以内に発行された世帯全員の住民票
③治療再開のための面談・カウンセリングについて
第7版までは、治療再開時に「AID・IVF-D治療再開面談」を一律に実施していましたが、8版改定では、治療再開のお電話をいただいた際に、ご夫婦の状況に応じて個別にご案内します。そのため、面談や心理カウンセリングを実施する場合と、実施しない場合があります。
また、倫理委員会での審査が必要と判断された場合は、倫理委員会申請費用が必要となり、審査結果が出るまで21日間かかります。
④死産の場合(妊娠22週以降)
心身ともに落ち着かれ、治療の再開を希望される場合は、以下の流れでお進みください。
- 分娩施設と連携している精神科などでグリーフケアを受けてください。提携先がない場合は、お住まいの自治体の不妊・不育専門相談センターへお問い合わせください。
- 分娩施設の医師と、精神科医の両方が治療再開可能と判断した場合は、「分娩施設の医師が発行する不妊治療再開許可が記載された診療情報提供書と、精神科医が発行する不妊治療再開許可が記載された診療情報提供書の両方を当院へお送りください。」「当院ホームページの「お問い合わせ」→「お問い合わせ一覧」→「通院中の方」→「出産・流産報告(当院で妊娠された方用)」よりご報告ください。」
- その後、当院の心理カウンセリングをご予約ください。ご夫婦の状況を確認し、治療再開について個別にご案内します。

AID・IVF-Dについて
26.AID・IVF-Dの概要
27.3か月ルール
28.IVF-Dの胚の管理
29.治療できる子どもの人数(上限2人)
26.AID・IVF-Dの概要
①治療
AIDとは、提供精子による人工授精のことです。IVF-Dとは、提供精子による体外受精のことです。
②AIDとIVF-Dの選択
不妊治療は月経周期ごとに実施します。各周期で、AIDまたはIVF-Dのいずれかをご夫婦で選択してください。ただし、IVF-Dで得られた凍結胚がある間は、その胚をすべて移植するまでAIDを実施することはできません。
(胚をすべて移植するまでAIDを実施できない理由)1回のIVF-Dの採卵で得られた胚は、すべて同一ドナーの精子から作成されています。その間にAIDを実施すると、異なるドナーの精子を使用することとなり、ドナー管理が複雑になります。また、AIDで妊娠した場合は、IVF-Dで作成した凍結胚が3か月ルールの期限を超え、移植できずに破棄となる可能性があります。以上の2つの状況が発生しないために、当院では、IVF-Dで得られた凍結胚をすべて移植するまではAIDを実施しない運用としています。
③治療の対象者
18.夫婦の基本条件、19.治療実施の条件、20.子どもの福祉に関する条件をすべて満たし、当院倫理委員会の承認を受けた夫婦が対象です。なお該当する場合は、21.トランス男性とシス女性の追加条件もあります。
④提供精子
13.当院のドナー条件を満たした提供精子を使用します。
⑤提供精子の選定方法
10.提供精子の選定方法のとおり、治療ごとに、「夫婦から生まれる可能性のある子どもの血液型」にあわせて提供精子を選定します。※11.きょうだいは同じドナーになりますか?参照
⑥治療同意書の注意点
- 当院へ通院中の方には、当院スタッフより同意書をお渡しします。
- 他の医療機関へ通院中の方は、必要な同意書をホームページの「通院中の方」より印刷してご使用ください。
- 同意書をお忘れの場合や、記載漏れ・記載誤りなどの不備がある場合は、当日の治療は実施できません。また、それまでにかかった費用の返金もありませんので、十分にご注意ください。
⑦同意書類
| AID | 非配偶者人工授精(AID)に関する同意書、非匿名提供精子使用における同意書、提供精子による生殖補助医療の同意書 |
| IVF-D | IVF-Dの同意書、顕微授精の同意書、胚凍結及び凍結保存の同意書、非匿名提供精子使用における同意書、提供精子による生殖補助医療の同意書 |
⑧夫のオンライン本人確認(eKYC)
⑨妊娠確認
| AID | 実施日から20日以内に「AID報告フォーム」へ結果を入力してください。 |
| IVF-D | 胚移植から約9日後に、血液検査による妊娠判定を行います。 |
⑩費用
ホームページの「費用」→「費用一覧」→「無精子症・FtM(AID・IVF-D)の費用」よりご確認ください。
27.3か月ルール
①以下の各手続き・治療は、起算日から3か月以内に、期限欄に記載された次の治療または手続きを実施してください。
| 起算日 | 3か月以内に実施する治療・手続き |
|---|---|
| 倫理委員会承認の通知日 | IVF-D前個別説明日 |
| IVF-D前個別説明日 | 初回採卵周期開始日 |
| 採卵日 | 初回胚移植周期開始日 |
| 前の胚移植が不成功で凍結胚がある場合:前回の胚移植日 | 次回胚移植周期開始日 |
3か月以内に次の治療または手続きへ進まない場合は、治療の継続および凍結胚の保管・更新はできません。3か月ルールに違反した場合は、その時点で治療を継続することはできません。また、それまでにお支払いいただいた費用の返金はありません。
②3か月ルールを設けている理由
ドナーから生まれる子どもの人数を厳密に管理しながら、より多くの夫婦へ公平に提供精子を割り当てるため
当院では、1人のドナーから生まれる子どもの人数を最大10人までと定めています。 そのため、1組の夫婦が2人の子どもを出産することを想定し、さらに一卵性双生児が生まれる可能性も考慮して、1人のドナーにつき、最初は4組の夫婦へ提供精子を割り当てています。 この4組の夫婦の治療が終了するまでは、当該ドナーの提供精子に十分なストックが残っていても、新たな夫婦へ割り当てることはできません。 そのため、必要以上に治療期間が長くなると、提供精子が残っているにもかかわらず、新たな夫婦へ提供精子を割り当てることができず、IVF-Dを開始できない夫婦が生じます。 このような状況を防ぎ、限りある提供精子を有効に活用しながら、より多くの夫婦へ公平に治療機会を提供するため、本ルールを設けています。
③3か月を超えても問題がない場合
- 子宮内膜症、子宮外妊娠後の回復待ちなど、不妊治療に関わる疾患については、当院で治療経過を把握しているため、その治療に3か月以上要した場合でも問題ありません。
- 当院が把握していない病気などの理由で3か月以上治療を休止する場合は、おかかりの医療機関で診断書または治療経過報告書を発行していただき、3か月を経過する前に診察(オンライン診療を含む)を受け、医師へお申し出ください。その後は、1か月ごとにお電話で状況をご連絡いただきます。なお、妻が入院などにより受診できない場合は、夫のみの受診でも構いません。
- 医学的理由以外で3か月を超え、6か月以内の休止を希望する場合は、3か月の期限内に、夫婦一緒に診察を受け、「IVF-D3か月ルール延長申請書」を医師へご提出ください。オンライン診療の場合は、診療日までに必着で当院へお送りください。医師が休止を認めた場合は、①の起算日から最長6か月(6か月後の同日まで)、生涯1回に限り休止することができます。6か月後の同日までに次の治療周期へ進んでください。なお、休止期間中に年齢上限へ達した場合は、その時点で治療は終了します。
28.IVF-Dの胚の管理
①IVF-Dの採卵と胚移植の順序
IVF-Dは、採卵で得られた胚をすべて移植した後に、次の採卵を行います。そのため、胚移植を行わずに採卵だけを複数回続け、凍結胚を貯めておくことはできません。
(理由)IVF-D3か月ルールの理由と同様に、精子提供者ごとの出生児数を適切に管理するため、受精から胚移植までの期間を必要以上に長くしないようにしています。
②IVF-Dで得られた胚の他施設への移送禁止
当院のIVF-D採卵で得られた胚を他の施設へ移送することはできません。
(理由)IVF-Dは、当院が独自のガイドラインのもとで、ドナーの登録から治療、妊娠後のフォローまで一元管理することを前提に実施しています。ドナーも、この体制を理解し安心したうえで提供しています。
③胚の凍結保存
- IVF-D採卵で得られた胚は、治療に使用する胚以外を余剰胚として凍結保存することができます。凍結保存を継続する場合は、1年ごとに更新手続きが必要です。
- 当院の提供精子による生殖補助医療では、生まれる子どもの人数は2人までとしています。ただし、生まれた子どもが未就学のうちに亡くなった場合は、その子は治療可能な子どもの上限には含めません。そのため、万が一に備え、子ども2人の出産後も、ご夫婦の希望により凍結胚の保存を継続することができます。
29.治療できる子どもの人数(上限2人)
①当院のAID・IVF-Dによって生まれる子どもの人数は、1組の夫婦につき合計2人までとします。
ただし、生まれた子どもが未就学のうちに亡くなった場合は、その子は治療可能な子どもの上限には含めませんので第三子以降の治療が可能な場合があります。
(子の数を2人までとする理由)本来、ご夫婦が何人の子どもを持つかは、ご夫婦が自由に決めることであり、当院もこのように制限をかける事は本意ではありません。 一方、第三者の提供精子による生殖補助医療では、1人のドナーから生まれる子どもの人数を10人までに管理する責任があります。多胎妊娠となる可能性もあるため、この人数を厳密に管理することは容易ではありません。当院では、AID・IVF-Dを年間約700件実施しているため、多数のドナー・治療中のご夫婦・長期間保存される凍結胚・そして出生した子どもを相互に関連付けながら、長期間にわたり管理する必要があります。この管理を安全かつ確実に行い、あわせて一人でも多くのご夫婦へ治療の機会を提供するとともに、1人のドナーから生まれる子どもの人数を適切に管理するため、当院では、ご夫婦の希望をできる限り尊重しながらも、当院で治療できる子どもの人数を1組の夫婦につき2人までとしています。
②他院で生まれた子どもがいる場合
既に他院の提供精子による生殖補助医療で生まれた子どもがいる場合、その人数は当院の上限には含めません。当院の治療において2人までとします。
③第一子が匿名ドナーの場合の例外(上限1人)
ただし、第一子が他院の匿名ドナーによって生まれた場合は、当院の非匿名AID・IVF-Dで生まれる子どもの人数は1人までとします。
(理由)非匿名ドナーで生まれた子どもは、将来、匿名ドナーで生まれた子どもよりも多くのドナー情報を知ることができ、ドナーと連絡がとれます。そのため、きょうだいの中で非匿名ドナーによって生まれた子どもの人数が多くなると、匿名ドナーによって生まれた子どもは、自分だけが知ることのできる情報や権利が少ないことを、より強く意識する可能性があります。当院では、このような状況をできるだけ避けるため、第一子が匿名ドナーによって生まれた場合は、非匿名AID・IVF-Dによって生まれる子どもは1人までとしています。
カウンセリング・面談
30.臨床心理士のカウンセリング
31.SW(ソーシャルワーカー)の面談
30.臨床心理士のカウンセリング
臨床心理士は、治療への不安や迷い、夫婦関係、家族形成など、心理的な側面を支援します。また、倫理委員会の審査に必要なカウンセリングも担当します。
①カウンセリングの種類
- 心理カウンセリング:不妊の受容、第三者の提供精子の受け入れ、親への伝え方など、この治療特有の課題についてご相談いただけます。また、治療への不安や迷い、夫婦間の対話など、一人ひとりの気持ちに寄り添いながら支援します。治療前・治療中・治療後・子育て中など、あらゆる段階でご利用いただけます。対象は夫婦だけでなく、ご家族や、生まれた子どもも含まれます。
- 倫理委員会申請前カウンセリング:「提供精子による家族づくりプログラム」を修了し、ワークシート提出後に実施するカウンセリングです。一般的な心理カウンセリングとは異なり、精子提供による家族形成について、ご夫婦の考えや準備状況を確認します。内容は記録され、倫理委員会の審査資料となります。実施回数は、ご夫婦の状況により異なります。※ご相談を目的としたカウンセリングは、「①心理カウンセリング」をご予約ください。②倫理委員会申請前カウンセリングは、倫理委員会での審査を前提としたカウンセリングです。
- 倫理委員会申請前フォローアップ面談:倫理委員会申請前SW面談の結果、追加の支援が必要と判断された場合に実施します。心理的な支援が必要な場合は臨床心理士が面談を行い、必要に応じてソーシャルワーカーと連携しながら継続的に支援します。
- 妊娠後面談:妊娠・卒業後に実施する面談です。面談では、子どものドナーについて周辺情報と3親等以内の病歴を開示します。ドナー情報を踏まえ、子どもへの告知内容をより具体的に考えるお手伝いをします。また、妊娠中や出産後の告知に関する不安や心配ごとについてもご相談いただけます。
②守秘義務と倫理委員会への報告
すべてのカウンセリングや面談に守秘義務があります。ただし、2.倫理委員会申請前カウンセリングと、3.倫理委員会申請前フォローアップ面談は、内容が倫理委員会に提出され、審査の対象になります。
31.SW(ソーシャルワーカー)の面談
①面談の種類
- 倫理委員会申請前SW面談:非匿名AID・IVF-D説明会への参加と、審査書類の提出後に実施します。ソーシャルワーカーは、子どもの権利と福祉の視点から、ご夫婦の家族形成や養育環境について確認し、必要な助言を行います。
- 妊娠後SW面談:妊娠・卒業後に実施する面談です。面談では、子どものドナーについて周辺情報と3親等以内の病歴を開示します。ドナー情報を踏まえ、子どもへの告知内容をより具体的に考えるお手伝いをします。また、妊娠中や出産後の告知に関する不安や心配ごとについてもご相談いただけます。
②守秘義務と倫理委員会への報告
すべての面談に守秘義務があります。ただし、1.倫理委員会申請前SW面談は、内容が倫理委員会に提出され、審査の対象になります。
倫理委員会
32.倫理委員会の役割と考え
33.倫理委員会の審査を行う理由
34.審査の結果について
32.倫理委員会の役割と考え
①役割
第三者の提供精子による生殖補助医療では、生まれてくる子どもの権利と福祉を最優先に考え、夫婦が治療を受けることが適切かどうかを倫理委員会が審査します。倫理委員会は、施設運営から独立した委員会であり、日本産科婦人科学会は、提供精子による生殖補助医療を実施する施設に倫理委員会の設置を義務付けています。
当院の倫理委員会は、医療者だけではなく、生命科学、法律、看護、当事者、一般市民など、それぞれ異なる立場の委員で構成され、生まれてくる子どもの権利と福祉を多角的な視点から審査しています。
②倫理委員会が大切にしている考え方
倫理委員会は、次の考え方に基づいて審査を行います。
- 生まれてくる子どもの利益と福祉を最優先に考えること
- 人を専ら生殖の手段として扱わないこと
- 安全性に十分配慮すること
- 優生思想を排除すること
- 商業主義を排除すること
- 人間の尊厳を守ること
③医療法人社団暁慶会 はらメディカルクリニック倫理委員会
| 役割 | 氏名 | 所属・立場 |
|---|---|---|
| 施設長 | 宮﨑薫 | はらメディカルクリニック理事長/医師 |
| 倫理委員 | 齋藤益子 | 関西国際大学保健医療学部看護学科教授/看護師 |
| 倫理委員 | 東哲徳 | 東京産婦人科医会元常務理事/医師 |
| 倫理委員 | 大岩直子 | さくら共同法律事務所/弁護士 |
| 倫理委員 | 大橋正和 | 荻窪病院/日本生殖医学会評議員 |
| 倫理委員 | 永森咲希 | 一般社団法人MoLive代表理事/不妊治療経験者 |
| 倫理委員 | 松峯寿美 | 東峯婦人クリニック 院長/日本思春期学会理事 |
33.倫理委員会の審査を行う理由
国内の第三者の提供精子による生殖補助医療には長い歴史があります。この治療で生まれたことを特別なこととは感じずに生活している人もいれば、自分の出自に苦しみ続けている人もいます。
当院は、その方々の話を聞く中で、苦しみの背景には、子どものための適切な告知が行われてこなかったことが共通していると考えるようになりました。そして、それは親だけの責任ではなく、治療だけを提供し、告知や家族形成まで支援してこなかった医療機関にも責任があると考えています。
その反省から当院は、生まれてくる子どもの権利と福祉を最優先とした本ガイドラインと「提供精子による家族づくりプログラム」を作成しました。しかし、プログラムを提供するだけでは十分ではありません。夫婦がその内容を理解し、子どものための家族づくりを実践できる状態にあることを確認してから治療を開始することが、同じ歴史を繰り返さないための当院の責任であると考えています。
子どもを持つことは、すべての夫婦にとって大切な権利です。その中で、審査により治療を提供できる夫婦と提供できない夫婦が生じることは、当院にとっても精神的負担が大きく、経営的にも決して合理的な方法ではありません。
それでも当院は、告知されないまま大人になった人たちの苦しみや、この治療の歴史からわかってきたことに目を背けることなく、子どもの権利と福祉を守る責任として、倫理委員会による審査を実施しています。
34.審査の結果について
- 審査プロセスの最後となる「告知計画書」の提出から21日以内に、メールまたは文書にて審査結果を通知します。
- 審査結果は「承認」または「非承認」のいずれかです。
- 承認となった場合は、当院の提供精子による生殖補助医療を開始できます。
- 非承認となった場合は、当院で提供精子による生殖補助医療を受けることはできません。また、非承認の理由の開示、および再審査は実施しません。
(非承認の理由を説明せず、再審査を行わない理由) 非承認となる理由は、本ガイドライン「20.子どもの福祉に関する条件」に基づき、生まれてくる子どもの利益と福祉についての考え方が、当院とご夫婦との間で一致しなかったためです。 しかし、この治療には一つの正解があるわけではありません。当院の考え方だけが正しいとも考えていません。そのため、ご夫婦の考え方を否定したり、当院の考え方に合わせるよう求めたりすることは適切ではないと考えています。 仮に非承認の理由を説明し、再審査を認めた場合、ご夫婦が本来の考え方ではなく、当院に合わせるために努力してしまう可能性があります。その結果、ご夫婦の本来の価値観とは異なる状態で治療が進み、子どものための告知ができなかったり、家族形成に影響を及ぼすおそれがあります。 そのため当院では、非承認の理由について説明は行わず、再審査も実施していません。 ご夫婦の本来の価値観を大切にしながら家族づくりができる医療機関を選択していただくことが、結果として生まれてくる子どもにとって最も望ましいと考えているためです。
必要書類
当院ホームページのメニューから、「通院中の方」→目次「AID・IVF-D関連」に掲載しています。

よくある質問
患者様からいただいたご質問をもとに、70件以上のFAQを掲載しています。内容は随時追加・更新していますのでぜひご覧ください。
ガイドライン改定の【よくある質問】FAQ ガイドライン8版改定に関するご質問フォーム付録:改定履歴
第1版 2022年3月7日施行
- 公的な管理運営機関の設置に伴い、当院の対応に関する記載を更新
- 年齢制限の設定理由を追記
- 倫理委員会の審査結果に関する「理由不通知」の記載を削除
- IVF-D実施における体外受精説明会の参加要件を削除
第2版 2022年4月27日施行
- ガイドライン13ページ「3項」の誤記を修正
第3版 2022年7月14日施行
- 海外精子バンクに関する記載を削除し、当院精子バンクのみを使用する方針へ変更
第4版 2022年8月18日施行
- 第一子がAIDで出生した場合、第二子としてIVF-Dを実施できる人数を1人までとする条件を追加
第5版 2023年10月1日施行【ガイドライン違反を受けた大幅改定】
- ガイドライン違反を受け、子どもの権利と福祉を最優先とする観点から制度全体を見直し、大幅改定を実施詳細は解説動画をご参照ください。https://vimeo.com/866242103?share=copy
第6版 2024年4月1日施行
- カウンセリング書類の提出期限を変更
- eKYC(オンライン本人確認)の説明を追加
- IVF-D「3か月ルール」の説明を追加
第7版 2025年6月1日施行
- 男性の年齢上限を47歳・48歳・50歳へ変更
- トランス男性とシス女性夫婦に関する方針を追加
- IVF-D開始条件を変更(AID実施要件を撤廃)
- SW(ソーシャルワーカー)面談を追加
- 未就学児で亡くなった子どもは治療可能な子どもの人数に含めないことを明記
第8版 2026年8月1日施行
- 提供精子を完全非匿名化(匿名AIDはストック限り継続)
- IVF-Dの実施条件を変更(AID実施要件を撤廃)
- 非匿名AIDの費用を新設
- HARA Donor Sibling Linkを追加
- 子ども会を追加
- 3歳・6歳の発達・家族フォローを追加
- 絵本作成会への参加を必須化
- 提供精子の選定方法を変更
- IVF-Dに6か月休止制度を追加
- 各取り組みの有効期限を明文化
- 夫婦の生活環境に関する治療条件を追加
- 100年間の情報管理費用を見直し
- 非匿名提供精子の説明をわかりやすく変更
- 治療再開面談の一律実施を廃止
- 凍結精子の融解同意書を廃止