Column

2026年7月以前のAID・IVF-D「対象となる支援」について

第三者の提供する精子を凍結しているタンク

当院では、2026年8月1日からガイドライン第8版を施行し、AID・IVF-Dで生まれる子どもの出自を知る権利を支える仕組みと、子どもや家族への支援を充実させます。

一方、当院では1997年からAIDを実施しており、治療を受けた時期や使用した提供精子の種類により、ご利用いただける支援が異なります。これは、子どもの出自を知る権利を支える仕組みを段階的に整備してきたためです。

このページでは、2026年7月以前に実施したAID・IVF-Dで生まれたお子さまを育てているご家族を対象に、ご利用いただける支援についてご案内します。

提供精子は3種類あります

当院では、提供精子をドナーとの契約内容により3種類に分けています。

契約内容は、提供精子を凍結した時期のガイドラインによって異なります。そのため、同じ匿名の提供精子でも、ドナー周辺情報を開示できるものと、開示できないものがあります。それぞれの違いは次のとおりです。

提供精子の種類 精子凍結時期 周辺情報の開示※1 成人後の連絡※2
①匿名 1997~2021年 × ×
②匿名 2022~2026年6月 ×
③非匿名 2022年~

※1 妊娠20週頃の夫婦に開示する、ドナーの身長・体重・体の特徴・職業・血液型・趣味・特技・精子を提供した理由・3親等以内の病歴などの情報

※2 非匿名の提供精子により生まれた子どもが18歳以上となり希望した場合は、ドナーとメール・電話・手紙・直接会うのいずれかができること

使用した提供精子の種類を確認

AIDで使用する匿名提供精子は、2023年から2024年にかけて、ドナーの血液型ごとに「①匿名」から「②匿名」へ順次切り替えました。そのため、ご自身が使用した提供精子は、ドナーの血液型と治療時期から確認できます。なおIVF-Dは当初から「③非匿名」を使用しています。

ドナー血液型 ①から②に切り替えたAID実施日
B型、O型 2023年7月19日以降
AB型 2023年12月1日以降
A型 2024年1月8日以降

AID実施日から①・②のどちらか判断できない場合は、妊娠後面談を実施し、ドナー直筆の周辺情報表をお持ちかご確認ください。お持ちの方は「②匿名」の提供精子です。

3種類の提供精子ごとの対象となる仕組み

上記で確認した提供精子(①匿名・②匿名・③非匿名)ごとに、ご利用いただける支援は以下のとおりです。

支援の項目 ①匿名 ②匿名 ③非匿名
100年間の情報管理 △※1
告知計画書の作成支援 ×
ドナー周辺情報・病歴の開示 ×
HARA Donor Sibling Link ×
成人後のドナーとの連絡 × ×
近親婚の確認 △※1
絵本作成会
親子会
3歳6歳のフォロー △※2
子ども会 △※3
カウンセリング

ご注意

  • 本ガイドラインは、2026年8月1日時点の法令等を踏まえ、子どもの利益を最優先に策定しています。ただし、特定生殖補助医療法が成立した場合は、法律が優先されるため、法律の施行までにガイドラインを見直します。

※1 :100年間の情報管理料をお支払い済みの方が対象

※2 :2026年以降に満3歳となる方が対象

※3 :制度開始時期の関係から3歳と6歳のフォローを受けることができないご家族は、他の参加要件を満たしている場合には対象となる可能性があります。子どもへの影響などを検討したうえで後日決定します

なぜ利用できる支援が異なるのか?

利用できる支援に違いがあることについて、「なぜ自分の子どもは対象ではないのだろう」と感じられるご家族もいらっしゃると思います。

当院も、この違いがご家族にとって大きな意味を持つことを十分に理解しています。以下に、その理由をご説明します。

理由:ドナーとの契約

当院では、ドナーの採用にあたり、一人ひとりと契約を結びます。その契約内容は、採用した時期のガイドラインによって異なります。

契約時に同意を得ていない内容を、後からさかのぼって適用することはありません。これは、当院がドナーとの契約を守るための基本原則です。例えば、

  • ドナー周辺情報の開示
  • 成人後のドナーとの連絡
  • HARA Donor Sibling Link
  • 近親婚の確認

は、いずれも2022年以降に採用したドナーとの契約で同意を得ている内容です。それ以前に、その内容について説明や同意を得ていないドナーへ、後から適用することはできません。

理由:100年間の情報管理

夫婦・子ども・ドナーの情報を100年間管理することは、公的機関ではない一民間医療機関にとって容易なことではありません。当院では、2022年に情報管理体制や契約、システムを抜本的に整備し、100年間の情報管理を開始しました。

そのため、それ以前の情報を後から同じ仕組みに組み込むことは、安全な情報管理を保証できないため実施できません。

HARA Donor Sibling Link、近親婚の確認、3歳と6歳のフォローは、この100年間の情報管理を基盤とした仕組みです。そのため、情報管理体制が整う前に実施した治療へ適用することはできません。

理由:制度の変遷

当院は1997年からAIDを実施してきました。

その後、提供精子で生まれた方々の声や国内外の議論を受け、2022年に現在のガイドラインの基礎となる独自のガイドラインを施行し、子どもの出自を知る権利を重視した医療へと方針を大きく転換しました。

本来であれば国が担うべき情報管理や制度整備ですが、法制化が進まない中でも、当院はできることから一つずつ取り組み、現在の仕組みを整えてきました。そのため、利用できる仕組みには、治療を受けた時期や使用した提供精子による違いがあります。

「①匿名」の提供精子でお子さまを授かったご家族は、当時、日本ではその治療しか選択肢がありませんでした。当院としても、もっと早く現在のような制度を整えられなかったかという思いはあります。しかし、日本産科婦人科学会や社会の理解を得ながら、安全で継続可能な制度として実現するためには、時間が必要でした。

AIDで生まれた人が教えてくれたこと

AIDで生まれて成人した方が、当院の絵本作成会を見学されたことがあります。

その方が生まれた当時は、医療機関による告知支援はなく、多くの家族がこの治療を秘密にしていた時代でした。しかし、その方は幼少期から親から告知を受けて育ちました。

絵本作成会では、多くのご夫婦が子どものことを思いながら一生懸命に絵本を作り、医師・心理士・ソーシャルワーカー・先輩夫婦に相談しながら、「わが子だけの絵本」を完成させていました。その様子をご覧になったその方は、

この絵本は、生まれた人にとって、とても大きな存在になると思います。生まれた人みんなが持っていてほしいです。

と話してくださいました。さらに、当院が将来予定している子ども会については、

幼少期から告知を受け、いつでも見返せる絵本があれば、自分の存在やアイデンティティは自然に育っていくと思います。そうすると、この治療は特別なものではなくなり、『同じ治療で生まれた』という理由だけで子ども会に参加したいとは思わないかもしれません。

という率直な感想も聞かせてくださいました。このお話は、当院にとって大きな学びとなりました。

子ども会などの支援は、必要な方がいつでも利用できることが大切です。一方で、幼少期から親子で自然に告知を重ね、いつでも見返せる絵本があることは、生まれた子どもの安心感や自己理解を支える大きな力になるのだと、改めて感じています。

当院は、AID・IVF-Dで生まれるすべての子どもが、自分だけの絵本を持って成長してほしいと願っています。

絵本作成会にて作る絵本の役割を説明するイラスト

よくある質問

ガイドライン改定について、患者様からいただいたご質問をもとに、70件以上のFAQを掲載しています。内容は随時追加・更新していますのでぜひご覧ください。

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