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慢性子宮内膜炎検査とは|EMMA ALICEとCD138

慢性子宮内膜炎と2つの検査

「良好な胚を移植しているのに妊娠しない」
「何度も胚移植をしているのに着床しない」

このような場合、多くは受精卵の染色体異常が原因と考えられますが、子宮内膜側に原因があるケースもあります。その一つとして知られているのが慢性子宮内膜炎です。

慢性子宮内膜炎は自覚症状がほとんどないことが多く、不妊治療を受けるまで気付かない方も少なくありません。反復着床不全や胚移植不成功との関連が報告されており、必要に応じて検査・治療を行うことで妊娠につながる可能性があります。

慢性子宮内膜炎とは?

慢性子宮内膜炎とは、子宮内膜に慢性的な炎症が続いている状態です。発熱や強い下腹部痛を伴う”急性”子宮内膜炎に対し、自覚症状がほとんどないまま経過することも少なくありません。
子宮内膜が細菌感染などによって慢性的な炎症が起こると、CD138陽性細胞(形質細胞)と呼ばれる免疫細胞が増加します。この状態を慢性子宮内膜炎と診断します。

近年では、この慢性子宮内膜炎が反復着床不全反復流産との関連があることが報告されており、不妊治療の分野でも注目されています。

妊娠への影響

妊娠するためには、質の良い胚だけでなく、子宮内膜が受精卵を受け入れやすい状態(着床しやすい状態)であることが重要です。慢性子宮内膜炎では、子宮内膜に炎症が続くことで、受精卵を受け入れるための環境が乱れると考えられています。

具体的には、

  • 子宮内の免疫バランスが変化し、受精卵を受け入れにくくなる
  • 着床に必要な遺伝子やサイトカイン(細胞同士が情報を伝え合う物質)の働きが変化し、着床しやすい時期(着床の窓)が乱れる
  • 子宮内フローラ(子宮内細菌叢)のバランスが崩れ、ラクトバチルス属(乳酸菌)が減少することがある
  • 子宮内膜が受精卵を受け入れるために変化する「脱落膜化(内膜がふかふかな状態に変化すること)」が十分に進まなくなる

など、さまざまな変化が複合的に起こることで、着床や妊娠に影響すると考えられています。

近年の研究では、反復着床不全、原因不明不妊、反復流産の患者さんでは慢性子宮内膜炎が認められる割合が比較的高く、抗菌薬などによる治療後に妊娠率や出生率が改善したとする報告があります。一方で、すべての研究で同じ結果が得られているわけではなく、慢性子宮内膜炎の診断基準や治療効果については現在も研究が続けられています。

正常な子宮内膜と炎症している子宮内膜

慢性子宮内膜炎検査にはEMMA・ALICEとCD138検査がある

慢性子宮内膜炎を調べる検査には、EMMA・ALICECD138検査があります。
どちらも慢性子宮内膜炎の診断に用いられますが、調べている内容が異なるため、それぞれ役割が異なります。

EMMA・ALICEとは

EMMA・ALICEは、子宮内膜を採取して遺伝子解析を行う検査です。

EMMA ALICE

子宮内フローラ(子宮内マイクロバイオーム)を調べる検査です。

子宮内にはさまざまな細菌が存在していますが、その中でもラクトバチルス属(乳酸菌)が多い環境は、妊娠に適した状態と考えられています。EMMA検査では、子宮内の細菌バランスを解析し、ラクトバチルスが十分に存在しているかなどを評価します。

慢性子宮内膜炎の原因となる細菌が存在するかを調べる検査です。
慢性子宮内膜炎に関与するとされる10種類の病原菌を解析し、原因菌を特定することで適切な抗菌薬治療につなげます。

CD138検査とは

CD138検査は、採取した子宮内膜を特殊な方法で染色し、炎症によって増加したCD138陽性細胞(形質細胞)の数を顕微鏡で確認する検査です。
形質細胞は通常の子宮内膜にはほとんど存在しませんが、慢性的な炎症があると増加するため、その数を確認することで慢性子宮内膜炎の有無を診断します。なお、当院では慢性子宮内膜炎の原因となる細菌感染経路で多い腟の細菌検査も同時に行います

CD138検査は炎症があるかどうかを調べる検査であり、どの細菌が原因なのかまでは分かりません。

EMMA・ALICEとCD138検査の違い

  EMMA・ALICE検査 CD138検査+腟内細菌検査
主な目的 子宮内の細菌環境や慢性子宮内膜炎の原因菌を調べる 慢性子宮内膜炎・腟内の細菌を調べる
検査方法 遺伝子解析 病理組織染色
分かること 原因菌、子宮内フローラ 炎症(形質細胞)の有無
原因菌の特定 ×
結果までの期間 約3週間 約2週間
診療区分 保険と併用可(先進医療) 自由診療のみ
EMMA ALICEとCD138の検査方法の違い

EMMA・ALICE、CD138検査の流れ

EMMA・ALICE検査とCD138検査は、どちらも子宮内膜の一部を採取して行います(CD138は腟内細菌検査も同時に行うため、腟の分泌物も一部採取します)。採取した検体を解析し、慢性子宮内膜炎の有無や子宮内の細菌環境を評価します。

検査を受けられる時期

子宮内膜を採取するため、子宮内膜が十分に厚くなる時期に検査を行います。
月経周期が28日の方では、月経11日目から25日目頃が検査可能な期間です。次周期に胚移植を予定している場合は、治療計画に影響しないよう、なるべく早い時期の検査をおすすめしています。

なお、検査結果が陽性だった場合は治療が必要になるため、次周期の胚移植は行えません。

検査方法

EMMA・ALICE検査、CD138検査ともに、診察台で子宮内膜の細胞を少量採取(CD138の場合は腟内細菌検査も同時に行うため腟の分泌物も採取)して行います。
処置時間は約5分です。採取した検体は、それぞれ異なる方法で解析されます。

  • EMMA・ALICE:遺伝子解析により子宮内の細菌環境や慢性子宮内膜炎の原因菌を調べます。
  • CD138検査:病理組織を特殊染色し、CD138陽性細胞(形質細胞)の有無を確認します。

痛みはある?

子宮内膜を採取する際には、多少の痛みや違和感を伴うことがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合は短時間で終了します。
採卵と同時に検査を行う場合は静脈麻酔下で実施するため、検査中の痛みを感じることはありません。

検査周期の注意点

慢性子宮内膜炎検査を行う周期には、いくつか注意点があります。

検査で陽性だった場合の治療

慢性子宮内膜炎が確認された場合は、炎症の改善のための治療を行います。 当院では、検査結果に応じて抗菌薬や腟サプリメント(乳酸菌製剤)を使用し、その後に再検査を行っています。

抗菌薬による治療

ALICE検査やCD138検査で慢性子宮内膜炎が確認された場合は、原則として、抗菌薬を内服します。

腟サプリメント(乳酸菌)の使用

慢性子宮内膜炎と診断された場合は、抗菌薬による治療後に10日間、腟サプリメント(乳酸菌製剤)を使用します。
また、EMMA検査でラクトバチルス属(乳酸菌)の割合が低いと評価された場合には、慢性子宮内膜炎の診断の有無にかかわらず、子宮内フローラの改善を目的として乳酸菌製剤の使用を検討します。

再検査について

治療後は、慢性子宮内膜炎が改善したことを確認するために再検査を行います。
再検査は、以下のいずれかのタイミングで実施します。

  • 抗菌薬終了後、1週間以上空けて検査可能時期に実施
  • 抗菌薬終了後、腟サプリメントを10日間使用してから実施

検査時期は月経周期に合わせて調整するため、医師の指示に従って予約してください。
胚移植・人工授精・タイミング法を実施するのは再検査で陰性となったことを確認してからです。

慢性子宮内膜炎の治療後に再検査を行う時期

検査の対象者と費用

対象者

当院では、次のような方に慢性子宮内膜炎検査をご案内しています。

  • 良好な胚を複数回移植しても妊娠に至らない方
  • 反復着床不全と考えられる方
  • 子宮内膜に原因がないか詳しく調べたい方

ERA検査より前に検討されることが多く、必要に応じて同時に実施する場合もあります。

費用

  保険診療 自由診療
EMMA ALICE(1回目) 68,500円(先進医療) 75,350円(税込)
EMMA ALICE(再検査) 33,600円(先進医療) 36,960円(税込)
ALICE(再検査) 24,800円(先進医療) 27,280円(税込)
CD138+腟炎検査 23,100円(税込)*再検査も同額

まとめ

慢性子宮内膜炎は、自覚症状がほとんどないまま経過することが多く、反復着床不全や胚移植不成功の原因の一つとして注目されています。慢性子宮内膜炎検査には、EMMA・ALICE検査CD138検査があり、それぞれ調べられる内容が異なります。

  • EMMA・ALICE検査:病原菌や子宮内フローラを調べる
  • CD138検査:慢性子宮内膜炎の有無を調べる

どちらの検査が適しているかは、患者様の治療歴や目的によって異なります。
「良好な胚を移植しているのに妊娠しない」「反復着床不全の原因を詳しく調べたい」という方は、一度医師にご相談ください。

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参考

監修医師

宮﨑 薫みやざき かおる

はらメディカルクリニック理事長・院長

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
  • 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。

医師・スタッフ紹介

よくあるご質問

回答

検査を受けることは可能ですが、基本的には良好な胚を複数回移植しても妊娠に至らない方(反復着床不全)などが対象となります。

必要性については医師と相談のうえ判断します。

回答

はい。採卵手術時に子宮内膜を採取することで、静脈麻酔下で痛みなく検査を受けることが可能です。

回答

検査結果が陰性で、かつ周期開始に間に合えば胚移植が可能です。
陽性だった場合は、抗菌薬などで治療を行い、改善を確認してから胚移植へ進みます。
なお、検査周期にはタイミング法・人工授精・胚移植は実施できません。

回答

ERA検査は子宮内膜が胚を受け入れるタイミング(着床の窓)を調べる検査です。
一方、EMMA・ALICE検査やCD138検査は慢性子宮内膜炎や子宮内環境を調べる検査です。

反復着床不全の原因を調べる検査ですが、評価している内容は異なります。