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着床不全外来でどんな事がわかるの?【培養部より】

こんにちは。
今回のコラムは培養部が担当させていただきます。
患者様から良く聞かれる質問として、「着床不全とはどういったものか?」、「着床不全外来の時の検査結果からどのようなことがわかるの?」というものがあります。今回のコラムでは、着床不全外来時の検査結果からどのようなことがわかるのかを少しだけご紹介していきたいと思います。
着床不全とは、形態的、機能的に良好な胚を数回移植しても妊娠が成立しない状態のことを指します。その原因を探るために、外来時に様々な検査を行っていきます。実際に検査でどのような事を行うかといいますと、当院では1次スクリーニングとして、感染症検査、免疫学的検査、血液凝固系検査、代謝検査をセットとして21700円でご案内しています。また子宮の形態を診るために子宮鏡や子宮卵管造影のほか甲状腺機能検査、内分泌検査も行っています。2次スクリーニングとしてはナチュラルキラー細胞の活性や1次スクリーニングでは行わない抗リン脂質抗体の測定、フィブリノーゲンやアンチトロンビン等の血液の固まりやすさを調べる検査または染色体の異常を探るための検査などがあります。
全ての項目について詳しく書いてしまうとかなりの長文となってしまいますので、一次スクリーニング各種検査項目と子宮鏡、子宮卵管造影からどのような事がわかるのかについてご紹介致します。
感染症の検査ではクラミジアの抗原をもっているかどうかを測定します。この検査によってクラミジアに感染しているかどうかがわかります。なぜクラミジア感染と着床不全とに関連があるのかといいますと、クラミジアに感染し、子宮や卵管内に炎症が起こってしまうと腹腔内に癒着が生じてしまい、それが卵子排卵時のピックアップや受精卵の着床を妨げる要因となり得るからです。この検査が陽性であった場合には、抗生剤や抗菌薬の投与を行います。またご主人にも感染が疑われますので、カップル同時に治療にあたります。薬で菌は無くなっても、癒着は残ったままなので、自然妊娠や人工授精での妊娠を希望される方は子宮卵管造影(HSG)検査を実施される事をお勧め致します。
免疫学的検査では抗カルジオリピン抗体のIgGとIgM、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI複合体抗体(抗CL・βGPI抗体)、ループスアンチコアグラント、抗フォスファチジルエタノールアミン抗体(抗PE抗体)の5種類の抗リン脂質抗体を測定します。抗リン脂質抗体は、リン脂質に対する自己抗体です。通常、抗体は外部から異物が侵入した際の防衛手段として産生されますが、この自己抗体が産生されると、自己の組織を異物と認識して、自分自身の組織を攻撃してしまいます。
抗リン脂質抗体が産生されると自己の細胞や組織を攻撃してしまい、血栓(血管内に出来る血の塊)が生じます。もし胎盤に血栓が生じると血液循環が阻害されてしまい、胚への酸素や栄養の供給が阻害されてしまうため、習慣流産や不育症の原因となります。
また免疫学的検査の一環として行われる抗核抗体も自己抗体の一種で、自分の細胞内にある核をターゲットとする自己抗体です。この検査は膠原病かどうかのスクリーニングとして行われます。
血液凝固系の検査としてはAPTT、PT、凝固第Ⅻ因子、プロテインS活性およびプロテインC活性を測定します。これらの検査では主に血液の凝固能の強さ(血液の固まりやすさ)がわかります。血が固まりやい傾向にあると胎盤を介した血液循環に影響を与えますので、先にお話ししたように胚へ酸素や栄養素の運搬がうまくいかなくなってしまいます。血が固まりやすい方の治療法としては、低用量アスピリンやカプロシンの抗血栓作用(血液を固まりにくくさせる作用)を利用して、治療を行っていきます。
代謝検査としてはHbA1cの測定を行います。Hb1ACは一般的には糖尿病かどうかをみる検査項目ですが、不妊の患者様向けに測定する際は、多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)かどうかのスクリーニングとして行われます。
子宮形態の検査としては、子宮鏡検査、子宮卵管造影があります。子宮鏡では、ポリープや筋腫の有無もしくは子宮内部に形態異常がないかがわかります。もし子宮鏡で内膜ポリープなどの異常が発見された場合は、後日、日帰り手術になります。また子宮卵管造影では造影剤を子宮内に入れ、レントゲンで見ることにより子宮の形状に奇形などの異常がないかや卵管が詰まっていないかなどを調べることができます。
 当院ではこのように着床不全の原因を探るために様々な検査をおこなっています。移植胚のグレードが良いのになかなか妊娠反応の出ない方、反復して流産を経験されている方は着床不全外来を受けてみてはいかがでしょうか?