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iPS細胞からの始原生殖細胞の作製【培養部より】

こんにちは。培養部です。
昼間はまだまだ日差しが厳しいですが、朝は少し涼しく感じられ、夏ももう折り返しですね。突然雨が降ったりと不安定な天候が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて本日は、ヒト人工多能性幹細胞、通称「iPS細胞」から、卵子や精子のもとになる「始原生殖細胞」を効率よく作製することに成功したというニュースについてお話ししたいと思います。
「始原生殖細胞」とは将来精子と卵子になる細胞で、胎児としてお母さんのお腹の中にいる時すでに形成されています。女性の場合、胎生5か月をピークとして600~700万個の卵母細胞があり、これが閉経に至るまで継続して減少します。その減少のメカニズムは現在のところ解明されていませんが、出生時には100~200万個となり、35歳では25000個にまで減少します。胎児の頃から存在する卵子は年齢と共に古くなっていき、その質は落ちてくため、卵質の低下は不妊症の原因の一つとされています。
また「iPS細胞」というものは、2007年に京都大学の山中伸弥教授によって作られました。ヒトの体細胞に特定の因子を導入することで、体の様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ細胞です。iPS細胞は、病気や怪我で失われてしまった体の組織・機能を患者様自身の細胞から再生させることができ、また新薬の開発への貢献など大きな医療進歩が期待される研究です。
そして今回の研究は、ヒトiPS細胞に特殊なタンパク質などを加えて培養し、「初期中胚葉」と呼ばれる細胞に変化させ、さらに別のタンパク質などを加えることにより、卵子と精子の根源にあたる「始原生殖細胞」へ発生させることに成功したのです。
今回、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞を作る手法が示されたことで、今後不妊症の原因や遺伝性疾患の解明に役立つことが期待されます。しかし人為的に生命の根源を作り出すということは様々な倫理的問題を含んでおり、より慎重な検討が必要です。しかし、今後この研究がさらに発展すれば、患者様自身のiPS細胞から卵子や精子を作製することができるようになり、無精子症などで不妊に悩む方々にとって大きな希望となる事でしょう。