こんにちは。培養部です。
一段と暖かさも増し汗ばむ陽気が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回はSEET法についてお話しいたします。
不妊治療において、胚移植を成功に導くためには胚の着床能を上げ、子宮内膜の胚受容能を高め、さらには胚と子宮内膜を同期させての移植が必須条件となります。子宮内膜が着床の準備をするためには、胚と子宮内膜との間でシグナル交換(クロストーク)が必要であると考えられています。しかし、体外受精では、胚移植がなされて初めて胚と子宮内膜のクロストークがスタートするため子宮内膜の着床の準備が不十分であると考えられています。
この着床の準備を早期に開始させる方法として、二段階移植法が考案されました。二段階移植法は、まず初期胚を移植しクロストークを開始させた後に胚盤胞を移植することで着床率を高める方法です。しかし、二段階移植では多胎のリスクを回避することができません。そこで考案されたのがSEET法です。
胚は培養液中にさまざまな因子を放出しています。この培養液を凍結保存しておき、胚移植の2~3日前に子宮内に注入する方法が子宮内膜刺激胚移植法(Stimulation of Endometrium – Embryo Transfer:SEET法)です。SEET法を行うことにより子宮内膜を刺激し、着床の準備を促進させます。
しかしながら、どのような因子が子宮内膜を刺激し、着床を促進させるのか分かっていません。SEET法において、着床を促進する効果を得るためには、微量で十分な生理活性を有し、長期の凍結保存に耐え得る物質である必要があります。この条件を満たすもののひとつがリゾホスファチジン酸(LPA)です。このLPAはクロストークに重要な役割があるとの報告があります。また、LPAはCOX-2を活性化しプロスタグランジン産生が亢進されることから着床が促進されると考えられます。
当院では、受精卵が胚盤胞まで育った場合に移植1回分のみの培養液を凍結保存しております。凍結費用は11,000円(税別)で、保存期間は1年間です。この培養液を使用するSEET法(内膜刺激法)の実施料は17,137円(税別)です。胚盤胞を複数個凍結出来た場合、2回目以降の移植には一般培養液を使用する方法(簡易法)を行うこともできます。簡易法の場合、実施料は10,000円(税別)です。
SEET法は当院では多くの方が実施されています。採卵後の説明時に培養士がご希望をお聞きしますので、ぜひ相談してみてください。