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D配信#19:日本産科婦人科学会のシンポジウム、法整備後の当院の治療について

【1】特定生殖補助医療法案のポイント
【2】本日の日本産科婦人科学会のシンポジウムの目的
【3】法整備後の当院の治療

法整備の必要性を国が把握して21年が過ぎようとしている今年、いよいよ、精子・卵子提供の医療に関する法律「特定生殖補助医療法」が制定される見込みです。

これまでは、法律がありませんでしたので、当院のように独自のガイドラインによる治療や、医療機関によっては海外精子バンクを使用した治療を行うなど、学会は認めていないグレーゾーンの治療が可能でしたが、法整備後は法律に定めていない治療を行うことは法律違反となり罰則の対象になりますので実施できません。「特定生殖補助医療法」は現時点ではどのような内容なのか、本日の日本産科婦人科学会のシンポジウムはなぜ開催されるのか、法整備後の当院の治療はどう変わるのかについてお知らせします。

【1】現時点での特定生殖補助医療法案のポイント
①夫婦・子ども・ドナーの情報は、国の機関である独立行政法人が100年保存する
②ドナーは精子を提供する時点では、匿名か非匿名かを決めない
③子どもが18歳以上になり、ドナーについて知りたいと思ったら、①の独立行政法人に連絡する。すると、独立行政法人はドナーに連絡し、「子どもがあなたの情報開示を求めていますが開示しますか?」と確認。ドナーはこの時点で自分の情報を開示するかどうかを決める。よって、出自を知れるかどうかは、子どもが18歳になるまでわからず、かつ、その時のドナーの気持ち次第となる
④医療供給体制が大きく変わる。現在のAID施設は、自分の施設で集めたドナー精子を自分の施設の治療に使っているが、法案は「精子を集める施設」と「治療を行う施設」を切り離すことになる。「治療を行う施設」はドナーの情報を一切持つことができない。

【2】本日の日本産科婦人科学会のシンポジウムの目的
本日、14時より、日本産科婦人科学会主催の「精子・卵子・胚の提供による生殖補助医療」シンポジウムが開催されます。これは当時者の声を国会議員に届けることで、現時点で問題が多い法案を当事者のための法案に変えていくことが目的です。

シンポジウムの前半は6名の指定演者が各15分講演します。院長の宮﨑は3番目に講演します。当院の主張は3点ありますが、最も重要なのは子どもの出自を知る権利の保障です。
シンポジウムは14時からはじまり、前半90分は指定演者の医師らです。後半は一般枠から選ばれた方の講演です。

講演の他に一般公募で募集した130通以上の意見書もシンポジウムの後国会議員に渡されます。

当院はこれまで複数の国会議員とお会いし精子提供の医療に関する要望を伝えてきました。「出自を知る権利を保障してほしい。」「無理ならせめて全てのドナーは精子提供者の周辺情報を開示してほしい。また、治療を開始する時点で匿名か非匿名かは明確にしてほしい。」と。しかし、法案の方向性が変わることはありませんでした。今回のシンポジウムは、法案を変えることができるかもれない最後のチャンスだと思っています。

▼シンポジウムは全ての方がWEBで視聴できます。事前申込なども不要です。本日1月15日14時開始です。以下のURLの「公開配信用URL」をクリックすると視聴できます。
https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=290

【3】法整備後の当院の治療
法律の内容がどのようであっても、法律の制定から施行までは猶予期間があります。猶予期間が1年なのか3年くらいあるのかなど詳細は法律制定の時に決まりますので現時点ではわかりません。いずれにしても猶予期間を使って、現在の治療を徐々に終結させ、代わりに法律に合わせた治療の準備を進めていくことになります。

法案について議論されているのは、「治療の対象者を事実婚・同姓カップル・選択的シングルマザーに広げるかどうか」ということと「出自を知る権利の保障」の2点です。それ以外は議論されていませんので、上記1の④は恐らくこの内容のまま法律になることが予想されます。

上記1の④が法律になると、精子提供の治療を行う施設は、精子ドナーの情報は全くわからなくなります。つまり、現在当院のIVF-Dで行っているような、妊娠後の夫婦への「精子提供者の周辺情報の開示・ドナーの病歴の開示」と「18歳以上になった子どもがドナーに接触できる」はいずれも不可能になります。

今は不安なことが多い法整備ですが、本来は、法律になることで夫婦・子ども・ドナーが守られる良い側面が大きいはずです。また、法整備されれば、保険適用や、各自治体の助成制度の対象になるなど経済的負担に対する支援を受けられる可能性が広がっていきます。また、認知度が上がり、社会の理解も広がっていくと思います。

法整備が当事者のために有効な内容になるよう願います。

(2023年1月15日)

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