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【重要】SEET法の新しい運用についてNo.164

6月15日配信No.163の続報です。

GM-CSFの供給不安定に伴い、SEET法の運用方法を次の通りとします。また、この機会に、SEET法について詳しく記載します。結論だけを読みたい場合は■5番をお読みください。

■1.SEET法とは?
SEET法は、胚盤胞移植の2~3日前に「SEET液」を子宮に注入する先進医療の治療法です。保険周期でも実施可能で、東京都などの先進医療助成金の対象となっています。

■2.SEET法の目的
SEET法の主な目的は、子宮内膜のクロストークを促進し、着床率を向上させることです。さらに、SEET液には着床後の胚の発育を促進する因子も含まれており、妊娠継続の確率も向上させることが期待されています。

■3.クロストークとは?
クロストークとは、胚(受精卵)と子宮内膜がお互いに会話する、という意味を持ちます。この会話は、胚と子宮内膜がサイトカイン、成長因子、細胞接着分子などの一連の化学物質を分泌しあうことで実現されます。体外受精では、自然妊娠とは違って胚が突然子宮内膜に移植されるため、クロストークの開始が遅れたり、クロストーク自体が起こりにくいという課題があります。SEET法は、このクロストークの開始を促進することが研究にて示されました。

参考論文 Goto, S., et al., Stimulation of endometrium embryo transfer (SEET): injection of embryo culture supernatant into the uterine cavity before blastocyst transfer can improve implantation and pregnancy rates. Fertil Steril, 2007. 88(5): p. 1339-43.

■4.SEET法の成績は?
当院では2019年にSEET法とそれに伴う妊娠結果について比較を実施しました。その結果、SEET法を用いた場合の妊娠率および妊娠継続率が、SEET法を用いなかった場合よりも6.1%高い(有意差あり)ことが明らかになりました。そのため、2020年より胚移植周期では原則としてSEET法を実施しています。

この比較では、当時用いられていた3種類のSEET法(①胚盤胞培養上清液群、②GM-CSF添加培養液群、③特殊な培養液群)とSEET法なし群の4群について検討され、その結果、①胚盤胞培養上清液が最も妊娠成績が良く、次いで②GM-CSF添加培養液でした。この比較の結果に基づき、当院では現在、①胚盤胞培養上清液と②GM-CSF添加培養液の2種類のSEET法を運用しています。

■5.新しいSEET法の運用
GM-CSFの供給不安定に伴い、6月19日(月)の採卵より、次の通り改定します。

(1) タイムラプスを使用する場合、1回の採卵で最大6本まで①胚盤胞培養上清液を凍結できます。ただし、凍結できる①胚盤胞培養上清液の本数は凍結した胚盤胞の数を超えて凍結することはできません。凍結する本数については、採卵当日に培養士と相談の上で決定します。①胚盤胞培養上清液は、②GM-CSF添加培養液に比べて妊娠成績が良いとされているため、妊娠率向上が期待されます。

(2) タイムラプスを使用しない場合、回収できる胚盤胞培養上清液の総量が少ないため、①胚盤胞培養上清液は1本しか凍結できません。したがって、一度の胚移植でしかSEET法を適用できません。それ以外の胚移植周期ではSEET法は適用しない方針とします。

(3) ①胚盤胞培養上清液の凍結料金は、これまでの1万円から5000円(税別)に改定します。1本あたり5000円のため、最大で6本凍結する場合は合計3万円となります。SEET法は先進医療の一部であるため、先進医療で行う場合は税抜料金5000円/1本、自費で行う場合は税込5,500円/1本となります。凍結する本数は、採卵日に培養士と相談の上で決定します。

(4) ②GM-CSF添加培養液については、その流通が不安定であることから、今後は自費周期のみでの適用とします。ただし、現在GM-CSFの在庫は無く、次回の納品後以降の再開となります。

(5) SEET法の適用は必須ではなく、患者様の希望によります。希望の有無については、胚移植周期の要望書にてご確認いたします。

■6.現時点の余剰胚に対するSEET法の適用
上記の新たなSEET法の運用は、6月19日(月)の採卵より適用されます。しかし、既に採卵を終えて余剰胚がある患者様については、②GM-CSF添加培養液の供給が不安定であるため、保険周期ではSEET法の適用は行えません。この現状はGM-CSFの流通からみて避けられないものとなっております。自費周期についてはGM-CSF添加培養液の使用を続ける方針ですが、前述の通り現在はGM-CSFの在庫が無い状態です。そのため、GM-CSFの次回納品後から再開を予定しております。

(2023年6月18日)

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