
体外受精は2022年4月から保険適用の対象です。ただし、治療開始時に女性が43歳未満であること、年齢に応じた回数の上限(6回または3回)という条件があります。※1
本記事では、体外受精・顕微授精の保険適用条件(年齢・回数とそのカウント方法)、混合診療の禁止と先進医療の例外、高額療養費制度の2026年8月改正、保険と自費の選択が生じるケースまで、2026年度時点の公的情報にもとづいて解説します。
体外受精の保険適用が30秒でわかる要約表
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項目 |
内容 |
|---|---|
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対象 |
治療開始時に女性が43歳未満(男性側の制限なし・事実婚も対象) |
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回数 |
40歳未満:6回まで/40歳以上43歳未満:3回まで(1子につき・胚移植ごとにカウント) |
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自己負担 |
原則3割 |
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高額療養費 |
対象(月ごとの自己負担に上限あり・2026年8月から上限額見直し) |
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先進医療 |
一部の技術のみ保険診療と併用可(先進医療部分は自費) |
体外受精は保険適用の対象(2022年4月~)

まずは保険適用の全体像(いつから・どの治療が対象か)を押さえ、そのうえで次章から年齢・回数などの具体的な条件を確認していきましょう。
2022年4月の診療報酬改定により、人工授精などの「一般不妊治療」と、体外受精・顕微授精などの「生殖補助医療」が公的医療保険の対象になりました。※1 これにより、条件を満たす場合の窓口負担は原則3割です。
生殖補助医療では、採卵から胚移植に至るまでの一連の基本的な診療(採卵、体外受精・顕微授精、胚培養、胚凍結保存、胚移植など)がすべて保険適用されます。※1 また、2024年6月にはAMH検査(卵巣予備能検査)が一般不妊治療の計画時にも保険で算定できるようになるなど、対象は段階的に見直されています。※2
不妊治療全体の保険適用範囲
タイミング法・人工授精(一般不妊治療)には年齢・回数の制限は原則ありません。一方、体外受精・顕微授精(生殖補助医療)には次章の年齢・回数条件があります。※1
体外受精の保険適用条件|何歳まで・何回まで?
体外受精・顕微授精が保険適用となるのは、治療開始時点で女性の年齢が43歳未満の場合です。保険で胚移植を受けられる回数には、年齢に応じて次の上限があります。※1
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治療開始時の女性の年齢 |
保険適用の回数上限 |
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40歳未満 |
1子につき最大6回まで |
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40歳以上43歳未満 |
1子につき最大3回まで |
回数のカウント方法:数えるのは「胚移植」の回数
回数は胚移植を1回行った時点で1回とカウントされます。採卵や受精、胚凍結は回数に含まれないため、移植できる胚が得られず移植に至らなかった周期は回数を消費しません。※1
年齢は「治療開始日」で判定される
年齢の判定は治療計画を作成した治療開始日が基準です。※1
【具体例】39歳で治療計画を作成して治療を開始 → 治療の途中で40歳の誕生日を迎えた → その治療は「40歳未満」の扱いのまま。回数上限も6回のまま変わりません。42歳で開始した治療単位も同様に、途中で43歳を迎えても継続できます(43歳以降に新しい治療計画を作成することはできません)。※1
出産すると回数はリセットされる
回数上限は「1子につき」定められています。出産(または妊娠12週以降の死産)を経て次の子どもを望む場合、回数はリセットされます。※1
そのほかの条件
- 年齢・回数の制限は女性側にのみ設けられており、男性側にはありません。※1
- 法律婚だけでなく事実婚のご夫婦も対象です(事実関係を確認できる書類の提出が必要です)。※1
混合診療の禁止と「先進医療」の例外
体外受精は採卵から胚移植までを一連の治療とみなすため、その過程で保険診療と自由診療を同時に行うこと(混合診療)は原則できません。保険診療の中に保険適用外の治療を組み込むと、原則としてその周期の治療全体が自費扱いになります。※1
先進医療とは|保険診療と併用できる「追加の技術」
先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術のうち、有効性・安全性の評価が進んでいるものの、まだ保険適用(保険収載)には至っていない技術のことです。※3
通常の自由診療と異なり、先進医療に位置づけられた技術に限って、混合診療の禁止の例外として保険診療と併用できます。つまり「保険の体外受精」をベースにしたまま、上乗せの技術として追加できるのが先進医療です。この場合、先進医療部分の費用は全額自己負担ですが、それ以外は保険診療のまま受けられます。※1
不妊治療における主な先進医療(2026年度時点)
- 子宮内膜刺激術(SEET法)
- タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
- 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
- ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
- 強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術(IMSI)
- 子宮内膜受容能検査(ERA/ERPeak)
- 子宮内細菌叢検査(EMMA・ALICE/子宮内フローラ検査)
- 二段階胚移植術
- 膜構造を用いた生理学的精子選択術(ZyMōt)
- 流死産検体を用いた遺伝子検査(流死産絨毛・胎児組織染色体分析検査(NGS法))
- 抗ネオセルフβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体検査
先進医療の対象技術・実施施設は随時見直されます。医療機関ごとに実施の届出をしている技術のみが先進医療として併用可能です。※4
当院の先進医療の費用は先進医療の費用ページを、制度の詳しい解説は関連記事「不妊治療における先進医療とは」をご覧ください。
不妊治療における先進医療とは?先進医療の基本的な内容や保険について詳しく解説
高額療養費制度|自己負担には月ごとの上限がある
所得によって金額は異なりますが、保険診療で支払う医療費には月ごとの自己負担の上限があります。上限を超えた分は、いくら治療費がかかっても自己負担にはなりません。
この仕組みが高額療養費制度です。保険診療で行う体外受精にも適用され、同じ月に支払った医療費の自己負担が所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。マイナ保険証を利用して限度額情報の提供に同意すれば、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。※5
2026年8月から自己負担上限額が段階的に見直されます
2026年度の医療保険制度改革により、高額療養費の月ごとの自己負担上限額は2026年8月診療分から段階的に引き上げられます(例:年収約370万~770万円の区分では月額上限が約8万円から約8.6万円へ)。一方で、12か月以内に3回以上上限に達した場合の「多数回該当」の金額は据え置かれ、新たに年単位の上限(年間上限)が設けられます。2027年8月には所得区分の細分化を含む第2段階の見直しが予定されています。※5
ご自身の上限額は所得区分や加入する保険組合によって異なるため、実際の金額は加入先の健康保険組合・協会けんぽ等でご確認ください。受診前に上限額を確認しておくと、自己負担額の見通しが立ち、治療の資金計画も立てやすくなります。
なお、東京都をはじめ多くの自治体には不妊治療に対する助成制度があります。制度の内容は「不妊治療の助成金制度(国・自治体)」で詳しく解説しています。
不妊治療の助成金制度とは?保険適用後も利用可能な助成制度について解説
保険と自費(自由診療)の選択が生じるケース
次のような場合には、保険診療と自由診療のどちらで治療を進めるかの選択が生じます。
- 年齢・回数の条件を満たさなくなった場合:43歳以上で治療を開始する場合や、回数上限に達した後の治療は自由診療(全額自己負担)になります。
- 保険診療では選択できない治療を希望する場合:着床前診断(PGT-A/PGT-SR)や、着床不全に対する一部の治療などは保険適用外です。これらを治療周期に組み込む場合は自由診療になります。
- 保険診療で凍結した胚の扱い:保険診療で得られた凍結胚は、保険適用外となった後も破棄せず自由診療で使用を継続できます。
いずれのケースも条件や適否は患者様の状況によって異なります。「自分は保険で受けられるのか」「残り回数はどう数えるのか」など、迷ったときは、まずご自身の治療が保険適用になるかどうかを受診時にご確認ください。その後の治療計画も資金計画も立てやすくなります。
まとめ
体外受精は2022年4月から保険適用の対象となり、治療開始時に女性が43歳未満・年齢に応じた回数上限(6回/3回)という条件のもと、自己負担3割で受けられます。回数は胚移植ごとにカウントされ、出産によりリセットされます。保険診療と自由診療は原則併用できませんが、先進医療に限り併用が認められています。高額療養費制度は2026年8月から上限額が見直されるため、最新の条件は公的情報でご確認ください。 体外受精の治療の流れや当院の特徴は「体外受精・顕微授精」ページ、体外受精の全体像は総合解説記事、費用の目安やシミュレーションは費用解説記事をご覧ください。
体外受精とは? 仕組み・流れ・妊娠率・保険適用をわかりやすく解説
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■ 脚注(出典)
※1 こども家庭庁「不妊治療に関する取組」(保険適用の枠組み・条件)
※2 厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【医療技術】」(令和6年3月5日版)p.18(抗ミュラー管ホルモン〈AMH〉の検査目的の見直し)
※5 健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号・2026年5月29日成立、6月5日公布)
監修医師
宮﨑 薫みやざき かおる
はらメディカルクリニック理事長・院長
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医
- 日本生殖医学会認定 生殖医療専門医・指導医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
2004年慶應義塾大学医学部卒業、2013年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。2013年4月東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教 2014年4月慶應義塾大学産婦人科助教。2017年10月 USMLE(米国医師国家試験)Step1–3 合格。2017年10月ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授。2018年10月荻窪病院産婦人科勤務。2020年5月はらメディカルクリニック院長就任。2020年7月医療法人社団暁慶会理事長就任。
よくあるご質問
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回答
体外受精・顕微授精が保険適用となるのは、女性が治療開始時(初めての胚移植に向けた治療計画を作成した日)に43歳未満であることが条件です。
43歳になってから新たに治療を開始する場合は、自由診療となります。ただし、43歳未満で治療を開始していれば、治療中に43歳を迎えても、その治療計画の範囲内で保険適用を受けることができます。なお、年齢の条件は女性が対象で、男性の年齢は保険適用の条件には含まれません。
(出典:こども家庭庁「不妊症・不育症の情報サイト」) -
回答
保険適用の回数上限に達した後も、体外受精を続けることはできますが、それ以降の治療は自由診療となります。
保険適用となる胚移植の回数は、治療開始時に女性が40歳未満の場合はお子さま1人につき通算6回まで、40歳以上43歳未満の場合は通算3回までです。回数は胚移植を行った時点で数えられ、採卵や受精、胚の凍結は回数に含まれません。
なお、出産に至った場合は、次のお子さまを希望する際に回数が改めて数え直されます。
(出典:こども家庭庁「不妊症・不育症の情報サイト」)
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回答
はい。 保険適用の回数は患者さまごとに通算されるため、医療機関を変えても引き継がれます。
転院先で回数がリセットされることはありません。当院では、前医での保険適用回数を確認するため、保険診療で体外受精を継続して受けられる方は、初診時に紹介状の提出を必須としています。
(出典:こども家庭庁「不妊症・不育症の情報サイト」) -
回答
はい。 法律上の夫婦だけでなく、事実婚のカップルも保険適用の対象です。
当院では、事実婚であることを確認するため、初診時に以下の書類をご提出いただきます。- ご夫婦それぞれの保険証(マイナ保険証または資格確認書)
- ご夫婦それぞれの独身であることを証明できる公的書類の原本(発行から3か月以内、日本国籍の方は戸籍謄本。外国籍の方はお問い合わせください)
- ご夫婦それぞれの住民票(発行から3か月以内、同一住所であること)
- 初診日は必ずお二人でご来院ください。
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回答
原則できません。体外受精は採卵から胚移植までを一連の治療として扱うため、同じ治療の中で保険診療と自由診療(国が認めた先進医療を除く)を組み合わせると、混合診療にあたり治療全体が自費扱いになります。
ただし、年齢・回数の条件を満たさなくなった後に、保険診療のときに凍結した胚を自由診療の移植で使用することは可能です。